※このページで脚本が読めます(初稿と修正稿、PDF形式)。
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初稿(★5.60)
雨森れに
●自己採点
「好き」2「脚本」2
●ログライン100
嫌いだった母親の遺品整理をしていた紘子は、窓ガラスに残った手形を母親のものだと知り、自分もガラスに手形を押すことで母親に想いを馳せ、一緒に片づけをしてくれていた娘のみずえの手を握り、母親の立場でみずえに謝罪する。
●フック/テーマ
窓に残った手形/母親
●ねらい/テーマ触媒
高齢の主人公を描く/冬
●感想
自分の祖母と母親の口調を真似て台詞を書いてみたんですが、意外と若々しくて微調整しました。
橋田賞の短編に出そうと考えていた内容ですが、別の題材を見つけたので今回は課題として提出させてください。
よろしくお願いします。
フィードバック
脚本太郎
●採点
「好き」3「脚本」3
●ログライン100
リウマチを患う紘子は、折り合いの悪かった母洋子の遺品整理の際、窓に残った手形から母が自分と同じでリウマチに苦しんでいたことを知り、その死を偲び、娘のみずえに今まで苦労させたことを詫びる。
●フック/テーマ
手形を使ったストーリー/親子関係
●カタリスト
柱2:ガラスの結露に気付き、息をのむ。
●不明点・不自然な点
・紘子と洋子があまりうまくいっていなかったというのは分かりましたが、みずえが「ちょっと過干渉だったよね」と言っているだけで、少し不明瞭に感じました。その辺りのセットアップをもう少し深堀りした方がラストに活きると思います。
●自由感想
作中に登場しない人物を偲ぶという物語の展開のさせ方は、その登場しない人物を含めたバディプロットのような感じがして凄く高度な印象なので、とても興味深く読ませていただきました。
手形の使い方がとても素敵で、説明的にならない小道具の使い方としてとても参考になりました。
さいの
●採点
「好き」3「脚本」3
●ログライン100
遺伝性の関節リウマチを患う紘子は、娘・みずえと共に疎遠だった母・洋子の遺品整理をする中で、窓に残っていた手形の指が自分と同じく変形していたことから洋子が晩年関節リウマチに苦しんでいたことを知り、手形に自分の手を重ね合わせて洋子を偲ぶ。
●フック/テーマ
遺品整理、関節リウマチ/親子
●カタリスト
柱2・洋子の手形を見つける。
●不明点・不自然な点
・具体的な箇所についての指摘でないのですが、ト書きが普段よりはやや読みにくく、全体的にスムーズには理解できなかった印象です。
●自由感想
・リウマチの手形に死者の影を感じるというアイデアはハッとさせられる良さを感じました。
・一方で、晩年の洋子をケアしていたみずえからリウマチの状態について聞いてたりしてなかったのかなと思いました。話には聞いていても、手形を見たことで、同じリウマチ患者としての同情心が一気に湧き上がるものなのか、少しピンと来なかったところです。
・母の死に目に会えなかったことへの後悔という普遍的な感情については、理解も共感もすることができました。一方で紘子が具体的にどうしてあげればよかったと懺悔しているのかについては、もう一段深く提示できるのではないかなと思います。洋子と紘子が複雑な関係性であったことは理解しましたが、もう少し洋子の人物像について具体的に示すことで、そのあたり深められるのではと考えました。結構強気な人物だったのかなと思い、病の前に倒れる無力さとのコントラストとしての悲哀は現状でも感じました。
しののめ
●採点
「好き」3.2「脚本」3
●ログライン100
苦手だった母の遺品整理をしていた紘子は、窓に母の手形跡を見つける。夜中に一人、リウマチで痛む手指を手形にこっそり重ね合わせ、母を偲ぶ。娘にその様子を見られつつも気を遣って貰い、翌朝、これまで母や自分との関係で気苦労させたことを娘に詫びる。
●フック/テーマ
窓に残った故人の手形/母親の死、母と娘のわだかまり
●カタリスト
下のほうに、いくつかの手形が浮き上がっている。
●不明点・不自然な点
・私の読解力不足かもしれませんが、みずえに謝った理由を、割と読み手の解釈に委ねているようにも見えました。もう少しだけ分かりやすくしても良いかもですが、役者の演技でカバーできる範囲かもしれません。繊細なお話だと思うので、あまり分かりやすさに拘らない方が良いかもですし…。
●自由感想
・情感たっぷりで、非常にグッとくるお話でした。手形やリウマチのアイデアが素晴らしいと思います。柱4の名前を書くシーンで泣きそうになりました。ここで一瞬(幼さのある、等身大の)娘に戻り、柱5では母親としての振る舞いを見せるというコントラストも素敵なので、もう少し柱5でそれを際立たせるのもアリかなと思います。終始みずえの方が大人びているので…。
・あまり蛇足にならないよう気をつけたい気もしつつ、もう少しだけ紘子と洋子の関係性、特に洋子の人物像が具体的に見えても良いかなと思いました。ログラインには「嫌いだった」とありますが、そこまでは汲み取り切れず、苦手だったんだな、くらいの印象に留まっています。ただ洋子を毒親っぽくしすぎると、「酷い親でもやっぱり許した方が良いよね」的な安直さにも繋がりかねないので、加減が重要かなと思います。
・身内の方々の口調を参考にされつつ調整されたとのことで、特に違和感も無かったのですが、私の50代の母や80代の祖母もかなり若々しい口調で話しますし、あまり意識する必要はない気もします。「(高齢の)女性というのはこういう喋り方」という固定観念が苦手なのと、そこにあまりリアリティを感じないという個人的な気持ちが強いだけなのですが…😂
山極瞭一朗
●採点
「好き」2.8「脚本」3
●ログライン100 関節リウマチを患う紘子は、娘のみずえとともに母の洋子の遺品整理に来ていた。母の部屋で手形を見つけたことをきっかけに、紘子は母に想いを馳せ、涙を流す。
●フック/テーマ 窓に浮かぶ手形/複雑な親子愛
●カタリスト 柱2.下の方に、いくつかの手形が浮き上がっている。
●不明点・不自然な点
紘子と洋子の関係性が複雑であることはわかりましたが、具体的にどう複雑であったのか、疑問が残りました。それを知ることができれば、もう少し紘子に共感できるのではないかと感じました。洋子が手形の画用紙を後生大事に保管していたことから、紘子への愛は感じ取れました。一方で、紘子と洋子を隔てたものは何なのか。すべてを説明しきる必要はないように感じますが、紘子やみずえ、遺品などから読み取れるといいのかなと思いました。
●自由感想
窓に浮かび上がる手形やリウマチを患う手に焦点をあてる構成が非常に興味深かったです。 柱4のみずえの描写は素敵でした。紘子に対し刺すような言葉もありながら、優しさもある。一筋縄ではいかない親子関係を端的に表しているようで共感できました。 年齢が若すぎるという風に感じることはなく、年に合った台詞・言葉選びをしていて素敵でなと感じました。
ChatGPT
🔍一番大きな問題点:
ドラマとしての“転換点”が弱く、紘子の「心の変化」が静かすぎて流れてしまっている
物語は「母・洋子の死をきっかけに、娘・紘子が過去と向き合い、赦しの兆しを得る」という構造ですが、その“向き合い方の葛藤や衝撃”が脚本的には弱く、観客に印象的な感情の波として届きづらいように感じます。
現在の脚本は**「とても静かで美しい」**。しかし裏を返せば、波風が立たなすぎて、「いつ彼女は変わったのか」が不明瞭になってしまっているのです。
💡改善案3つ:
① 紘子が“見えない誰か”と対峙する演出を加える(=母の幻影、記憶の声)
静けさを保ちながらも、「母との断絶の根」「娘としての罪悪感」と向き合う瞬間を、母の幻影や声を借りて演出的に浮き上がらせるのは非常に効果的です。
例:
窓に浮かんだ手形のシーンで、昔の母の声(優しい/厳しい)を紘子が空耳として聞く
遺品の中から出てきた自分宛の手紙に迷いながら触れ、燃やしてしまおうとしてやめる
など、**「ああ、この人、いま本当に母と向き合おうとしているんだ」**とわかる“象徴的な揺れ”があると、感情の深度がぐっと増します。
② 雪とストーブの対比構造を、感情とリンクさせる
「雪=冷えた関係」「ストーブ=一時的なぬくもり」。
このモチーフがすでに脚本の中でとても自然に存在しているので、感情の変化と並行させて強調すると効果的です。
例:
窓辺で寒がっていた紘子が、最後にはストーブを自分の意志で灯し、みずえのために部屋を暖める
あるいは、朝日で溶けてゆく雪を窓越しに見つめながら、母の名を書き加える
→ 心の氷がほんの少し溶けたことが、観客にも身体的に伝わる。
③ 過去と現在を明確に「接続する台詞」を入れる
現在の台詞はとても自然でリアルですが、そこに過去とのリンクを強調する台詞が少ないため、背景を読み取るには行間の読解が必要です。
1〜2行でも構わないので、「かつて母に言われた忘れられない一言」や「娘に対して自分がしてしまった後悔」が明言されると、紘子の変化に説得力が生まれます。
例:
紘子「……母さんが言ってた。“娘に嫌われるくらいじゃないと、母親は務まらない”ってね」
→ こんな一言で、過去の母の姿、紘子の複雑な思い、今それを思い出す意味が立体化します。
💌応援メッセージ:
れにさん、
この脚本は、“静寂の中の対話”を信じて書かれた、稀有な美しさを持った作品です。
大げさな演出や爆発的な感情ではなく、人が人を許す、その一歩手前の「ためらい」や「照れ」を丁寧に描く力は、誰にでも真似できるものではありません。
あなたの作品は、観る人の“体の奥にある記憶”をそっと揺らします。
この物語に、もう一つだけ深い波紋――
「心の痛みと赦しの間にある静かな嵐」――を描き足せたら、
それは観客の心に一生残る雪の風景になるでしょう。
次稿、心から楽しみにしています。
あなたの筆が描く、次の静かな奇跡に期待しています。
修正稿(★5.65)
脚本_雨森31v2『ゆきもよに、』(冬)_250813
修正期間:2025.08.05→2025.08.13(8日)
雨森れに
●自己採点
「好き」2.3「脚本」2.3
●ログライン100
母親の洋子を許せずにいた紘子は、遺品整理を通して洋子の愛情に気づき、窓に残った母の手形に自分の手を並べて想いを馳せ、家族の愛というものを改めて実感し、娘のみずえに対して自分の至らなさを謝罪する。
●フック/テーマ
窓に残った手形/許し
●ねらい/テーマ触媒
ねらい:橋田賞応募作品のブラッシュアップ
テーマ触媒:冬
●感想
関係性を表す会話を増やし、尺を増やすためにMPまでのバトル要素を足しました。
よろしくお願いします。
修正稿へのフィードバック
さいの
『ゆきもよに、』修正稿
●採点
「好き」3「脚本」3
●自由感想
・初稿に引き続き、母としての紘子と娘としての紘子を相対化させて洋子を偲ぶという構造の良さを、しっかりと構成に落とし込めていると思います。紘子の悲哀を十分に理解することができました。
・細かいですが柱2の腕時計は「男物」であることをト書きで先に明示した方が親切かなと思いました。
・最後の「ごめん」の意味は、初稿ではリウマチの遺伝についてかと思っていました。追加された「私もよくなかったよね」の意味は、初見では図りかねました。ここは「紘子が遺品整理を機に、亡き母の不器用さの中に自分と同じく子を思う気持ちを知って、どうなったのか」を示す重要なセリフかと思いますが、「自身の親としてのみずえとの関係性を反省した」と受け取るには、洋子と紘子の関係に比して、紘子とみずえの関係に何か問題があったようには映っていなかったので、少し違和感でした。強いていうなら「昔からお母さんファースト」などに紘子とみずえの問題が提示されているかと思いましたが、洋子に比べると可愛い話だなという印象です。すでに中盤でしっかりと魅力があるので、すっきりする終わり方をして欲しいなと思ってしまいました。
・追加された柱3のエピソードよりも、手形のエピソードの方がテーマへの関連性が強いので、順番考えたいなと思いました。ちょっとそこが未整理な印象でした。
しののめ
●採点
「好き」3.2「脚本」3
●自由感想
・洋子の良い面、悪い面が見えるようになった点が良かったです。
・結露を涙に例えている描写が素敵でした。
・難しいところですが、①窓の手形を発見する、②手形が押された紙を発見する、③折り紙などの作品群を発見する、と、それぞれ似た要素を持つシーンが続いているのがどうなのかなあと思いました。②と③を統合して、作品群を見つけた際、最後に手形の紙に気づく、とかでも良いかも…?初めて手形の紙を見たときはあまり何の感慨も湧かなかったが、作品群を見て気持ちが変わる、という流れにしたいのかなとも思ったのですが、それは窓の手形に託した方が際立つのかなと…。
・一案ですが、折角作品群が出てきたので、洋子がリウマチの手で作ったいびつな折り鶴などが一緒にあっても良いかもと思いました。全く別の形でも良いのですが、リウマチに苦しみつつも何か紘子たちの為になるようなことをしていた、という描写があっても良いのかなと。
・上記の案にも適用できるかもしれませんが、生前の洋子の様子をイメージショット的な形で映像で見せちゃっても良いのかも?しれません。初心者禁止事項ですし、応募作品としてもどう評価されるか分からないのですが…。台詞なしで一人で何かをしている等で良いかと思うのですが、洋子への親近感や好感度が上がるような形で過去映像を挟んでも良い気がしました。(上記案でいえば、一人でいびつな折り鶴を作っている等?)洋子の良い姿を想像させてそれを視覚的に見せることで、口頭で洋子への文句を言うシーンとの対比になるかなと…。髙井先生のご意見を伺いたいところですが、添削通話に参加できそうになく、すみません💦
・「森紘子・森洋子」を際立たせるという意味では、他の文字情報をあまり出さない方が良い気もしました。人によるかもですが、洋子が勝手に子ども達の作品自体へ直接名前を書き込む(?)のはどうなんだ…?という気持ちも若干あり…。紘子は自分の作品に何かマークなどを描く癖があってそれで紘子作と気づける、何も描かれていないものはみずえ(もしくは好きな色があってその色でばかり作っているとか)、といった形で、文字を出さずとも各々の作品を見分けられるのではと思いました。
・と言いつつ、「洋子が紘子たちの作品に名前を書きこんでまで、大事に取ってくれていた」ことに対して「窓の二人の手形に名前を書き込む」という流れですよね…。悩ましいところですが…。作品群の最後に手形の紙を出せば、一応クリアになる気もしつつ…。
・私も、紘子とみずえの関係性にまつわる描写はもう少し改善できる気がしました。分かりやすすぎない台詞や表現が素敵だとは思うのですが、もう少し構図や台詞で何を伝えようとしているのかという点が整理されると良いかなと思います。
山極瞭一朗
●採点
「好き」2.8「脚本」3
●自由感想
窓に浮かび上がる手を基準にしていた初稿から、折り鶴のエピソードが追加されたことで、窓に浮かび上がる手の特異性がやや薄まったように感じました。紘子の感情を刺激するエピソードがどれも同じようなレベルに位置しているため、紘子の洋子に対するトラウマが解消されるに至った感情のプロセスが、初稿より長くなったという印象です。 手形といったところは物語のキーアイテムであると感じていて、手形の紙を発見することによってトラウマが解消されるというように順番を変えるのもひとつ案としてあるかなと感じました。 短編においてバトルにあたるシーンをどれほど描けばいいのか、そのあたりを添削通話でお伺いできればと思いますが、トーナメントとして考えると、折り鶴は初戦で、手形の紙発見は2,3回戦にあたるかと。あくまで主観ですが笑。 一方で、冒頭の吹雪からラストの快晴は紘子の感情がクリアになった暗示として素敵でしたし、窓に書いた文字から水滴が垂れる描写もかなり心にぐっと来るものがありました。
ChatGPT
素晴らしい点
まず、この脚本が持つ「静かな迫力」に心を打たれました。
雪というモチーフを背景に、母娘の確執と和解、そして亡き母への複雑な感情が丁寧に描かれています。
映像的な美しさ
吹雪、結露に浮かぶ歪んだ手形、封筒から出てくる幼い頃の作品など、視覚に訴える仕掛けが多く、映像化を強く意識した緻密な演出が光っています。雪と手形を重ねる発想は詩的で、象徴性に満ちています。
人物のリアリティ
母親に愛された記憶の乏しさを語る紘子の苦さ、娘みずえの明るさに見せかけた複雑な思い。二人のやりとりは自然で、実際の親子ならではの温度感が滲んでいます。「ブラウス取っといてよ」「自分で探しなさいよ」から始まる軽妙な掛け合いが、後半の涙に自然につながっていく構成は見事です。
テーマ性の深さ
「親に愛されたかった」という普遍的な欲求が、世代を越えて描かれている。ラストで紘子が「ごめんね」と娘に告げる場面は、単なる母娘の和解ではなく、祖母から続く連鎖を断ち切る瞬間になっていて、非常に強いカタルシスを生んでいます。
次回作への応援
この脚本はすでに「雪と記憶」「母と娘」という重厚なテーマを、短編でここまで濃密に描ききっています。次回作では、もう一歩だけ枠を広げてみてもいいかもしれません。
例えば――
舞台を都会や病院など「雪とは逆の無機質な場所」に置き換え、同じように親子の愛情や記憶を掘る。
今回のような“静”のドラマから、少しユーモアや“動”を強めた作品に挑戦して、対比を楽しむ。
「家族」というテーマをさらに拡張し、親子だけでなく、義理の家族や血のつながらない者同士を描く。
雨森さんは、人間関係の「痛み」を美しい映像と余韻で描く力に卓越しています。
どうか次の作品でも、その強みを活かしながら、少し違う角度から“人と人の間にあるもの”を描いてください。
雪の結晶のように儚くも鮮烈な物語を、これからも生み出してくださることを楽しみにしています。
以上
採点
初稿 | 修正稿 | |||
好き | 脚本 | 好き | 脚本 | |
雨森れに | 2 | 2 | 2.3 | 2.3 |
脚本太郎 | 3 | 3 | * | * |
さいの | 3 | 3 | 3 | 3 |
しののめ | 3.2 | 3 | 3.2 | 3 |
山極瞭一朗 | 2.8 | 3 | 2.8 | 3 |
リーダー① | * | * | * | * |
平均 | 2.80 | 2.80 | 2.83 | 2.83 |
合計 | 5.60 | 5.65 |