脚本添削『マゲと龍』(★6.07)

※このページで脚本が読めます(初稿と修正稿、PDF形式)。

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初稿(★5.78)

脚本_雨森27v1『マゲと龍』(時代劇)_250615

雨森れに
●自己採点
「好き」2.5「脚本」2
●ログライン100
床屋の文吉は絵が趣味だが大きなものしか描けず、そこに目をつけた友人の治三郎からねぷた祭の絵師にならないかと誘われ、常連客に惜しまれつつも絵師への道を選ぶ。
●フック/テーマ
床屋が絵師を目指す/夢を追う
●ねらい/テーマ触媒
江戸時代を描く/時代劇
●感想
時代劇、難しかったです。文化に惹かれるところがあるので、またどこかで挑戦してみたいです。
よろしくお願いします。

テーマ触媒6:「海」「時代劇」「ブス」「タイトルオマージュ」

フィードバック

脚本太郎
●採点
「好き」3.0「脚本」2.3
●ログライン100
絵に情熱を注いでいる床屋の文吉は、友人の治三郎から「津軽で絵師にならないか」と誘われ、床屋の常連のマゲを結えなくなることから出発を迷うも、自分の絵の上手さを知った常連から背中を押され、旅立を決意する。
●フック/テーマ
江戸の床屋/夢を追う、進路の迷い
●カタリスト
治三郎「ブンさん、津軽で絵師やらねぇか」
●不明点・不自然な点
・地獄絵祭りのチラシは、台詞だけでなく絵として見せた方が良いと思いました。
・小さい絵は苦手だから絵全般が下手だと思われていた→大きい絵は上手かったということだと思うのですが、誤解を解いて雰囲気的には盛り上がっているようで、あまり内面的な物語性と合致していないと思いました。
・宗助一人に認められただけで文助の葛藤は解消されるものだったのか疑問でした。他の常連のお客さんは? とかも。文吉にマゲを結ってもらえなくなることが常連たちにとってどれくらい困ることなのか、文吉にとって床屋の仕事はどういうものなのか、といったことを示せれば、文吉の葛藤に説得力が出てくるかと思います。
●感想
・時代劇らしい話し方による雰囲気が良く、会話が入ってきやすかったです。
・「江戸時代の祭り」や「絵師を目指す床屋」など、フックとなる要素が多く、長編の冒頭的な雰囲気もあって続きが気になりました。
・マゲと龍を対比しているのも良いと思いました。

さいの
●採点
「好き」3.5「脚本」3.5
●ログライン100
床屋をしながら絵を描いている文吉は、卸問屋の治三郎から津軽に行って絵師を目指すよう誘われ迷うが、常連客の宗介の後押しで決意を固める。
●フック/テーマ
江戸の床屋/キャリア選択の迷い
●カタリスト
治三郎「ブンさん、津軽で絵師やらねぇか」
●ルールミス
・人物表の宗介の説明。
●不明点・不自然な点
・この時代に江戸から津軽へ行くことがどれだけ大変なのか、治三郎の力を借りればいつでも行けるものなのかどうかという文脈が補われたら、文吉の迷いをより理解できたと思います。
・文吉「治三郎んとこのだよ」の意味。
・小さい絵より大きい絵が得意だから、ねぷたに繋がるということは分からなかったです。
●感想
どれも長い会話ですが、現代口語で書いたら説明臭くなりそうなところを、時代劇の文法を上手く使って情緒的なやり取りとして展開しているのが魅力的でした。
またディティールが丁寧で、これを書くにあたってどのような取材工程を経たのか、作り手として気になりました。
●ツイストアイデア
最後、時間経過を示すためにも雪を出してほしいなと思いました。

しののめ
●採点
「好き」3.3「脚本」3
●ログライン100
江戸の床屋で絵描きを趣味とする文吉は、小さい絵は苦手だが大きな絵には素質があると見抜いた友人の治三郎から、津軽で「ねぷた祭り」の絵師になることを勧められる。常連に引き留められるも大きな龍の絵を描いて見せ、その迫力で納得させる。
●フック/テーマ
江戸の床屋、絵師/適職と夢
●カタリスト
治三郎「ブンさん、津軽で絵師やらねぇか」
●不明点・不自然な点
・強いて言えば、文吉の状況に対し「渡りに船」すぎて、行くかどうか葛藤する理由があまりないように感じました。宗助との仲を感じられる描写や、そこからくる葛藤がもっとあれば良いかもしれません。ただこれが長編の序盤で、宗助との人間ドラマにあまり焦点が当たらない作品である場合は、現状のままでもあまり問題ないかもです。
・私の読解力の問題なのですが、視覚的に見れないこともあって「小さい絵は苦手だが大きい絵には素質がある」ということが初読時にすんなりとは理解できなかったので、最後の「今にも昇っていきそうな迫力である」の辺りに、「小さい龍の絵とは比較にならないほど上手い(迫力や凄みがある?)」的なニュアンスのト書きがあると、更に分かりやすいかもと思いました。
●感想
・とても読みやすかったです。時代の雰囲気や江戸っ子らしい小気味良い掛け合いも、それっぽさが出ているように思いました。マゲと龍を掛けるアイデアも面白かったです。

ロバの絵本
床屋や将棋など、今でも親しみのあるものが出てきて、登場人物たちにも感情移入しやすくなりました。
床屋としてもとても腕がいいのに、絵を描きたい思いが募っている文吉さん、暖簾にも龍のような線があったようですが、龍を描き始めたのには、まわりで起きた火災で感じたことが湧き上がったのではないかと思いました。それがどんな思いだったのか、打ち明けられていくといいなあと思いました。
ねぶたとねぷたの違いも楽しかったです。火事で感じたことから、地獄絵図をスポンサーさんは描かせたいのかなあと思いました。ねぶたの絵とねぷたの絵が見たくなりました。
髪を上手に剃れる技術も、ねぷたの絵師としてなにか関係してくるのか、器用な人ということなのか、気になりました。
天にのぼっていくような龍が描けるのはうらやましいです。私もその絵を見てみたくなりました。
半月から1ヶ月かかる道のりで、景色の絵も描けるよと言うと、惹かれる文吉さん、見たことのない景色を心にとらえて、描いていくことにも惹かれている、絵師にもなりたいけれど、世の中をこの目で見たいのだろうなとも思いました。
ずっと先まで読んでいきたいお話でした。

●「好き」5

ChatGPT
この脚本の「一番大きな問題点」
クライマックスの「絵を描くシーン」が感情的には山場であるにもかかわらず、ドラマの構造的な「転換点」が弱いため、物語全体に緩やかさが残る点です。
これは言い換えると、観客が「行くの? 行かないの?」という緊張を感じる時間が少なく、葛藤→決断の高低差が薄いということです。主人公が「悩んでいる」と台詞で言っても、観客は「本気で迷ってるようには見えない」恐れがあります。

改善案3つ
①「津軽行き=人生の大勝負」と見えるように“犠牲”を描く
→ たとえば、津軽行きを決めたら床屋の常連たちとの縁が切れる/親の介護ができない/婚約者が去るなど、行くことで何かを失う描写を入れることで、葛藤が浮き彫りになります。
②宗助との将棋を「勝ち負け」にして葛藤を可視化する
→ 文吉が早指しで勝つが「心ここにあらず」でミスを連発、宗助が「あんた、行く気なんだな」と察する。盤面に感情を投影することで、葛藤が行動に現れます。
③「龍の絵」完成後に、ひとつだけ“やり残した感情”を残す
→ たとえば宗助が「でもよ、忘れんなよ。俺のマゲを結えるのはお前だけだ」など、決断の中に名残惜しさを残すと、観客は「旅立ち」をより深く感じます。

応援メッセージ
れにさんの脚本は、台詞の呼吸がとても美しいです。人物の温度、情のやり取り、言葉を交わしながらも心が揺れていく様子が繊細に描かれていて、思わず読み返してしまいました。
この作品にはすでに優しさと芯の強さが宿っています。あとは、観客が**息を止めて見守りたくなるような「決断の瞬間」**をもう一段深く掘ってあげると、物語の輪郭がくっきり浮かび上がると思います。
れにさんの描く職人たちは、静かで、でもとんでもなく情熱的です。そのまま、その熱で突き進んでください。
マゲより太くて真っ直ぐな、文吉の生き様に乾杯!
いつでも、またお手伝いさせてくださいね。

修正稿(★6.07)

脚本_雨森27v2『マゲと龍』(時代劇)_250701
修正期間:2025.6.24→2025.7.1(7日)

雨森れに
●自己採点
「好き」2.6「脚本」2.1
●ログライン100
床屋の文吉は絵が趣味だが大きなものしか描けず、そこに目をつけた友人の治三郎からねぷた祭の絵師にならないかと誘われ迷うが、絵のうまさを知った常連客の後押しで津軽行きを決意する。
●フック/テーマ
江戸の床屋/夢を追う
●ねらい/テーマ触媒
江戸時代を描く/時代劇
●感想
葛藤をわかりやすくしたくて将棋のあたりを少しだけ変えてみました。
内容をあまり変えたくなかったので、大きい修正はしていません。セリフや細かいところで、皆さんの意見をできるだけ取り入れてみました。
よろしくお願いします!

修正稿へのフィードバック

脚本太郎
●採点
「好き」3「脚本」2.5
●感想
・地獄絵をビジュアルで表している点、大きい絵が得意である伏線、雪景色による時間経過の表現、などが加わったことで、初稿より分かりやすくなりました。
・柱6「ここをどうするか、だよ」と、同柱6「ホントはチマチマしたことが苦手なんだよ」の二つの台詞は、個人的には初稿のものの方が良かったと思います。
・自分は文吉が旅立つことで常連が困ることを心配して葛藤してるのだと思ってたのですが、柱6「でもな。あっちでも受け入れてくれるかわからねぇだろ」から考えると絵で成功できるか不安で迷ってたのでしょうか。だとしたら自分の思い違いで、「そん時はそん時さ。あっちでも床屋はできるだろ」という台詞は前のものの方が良かったかもしれません。今さらすみません。
しかし新しく追加された柱4「それで、床屋はどうなる」という台詞からすると常連を心配する気持ちもあるのでしょうか? だとしたらそちらの問題が解消したようには思えませんでした。

さいの
●採点
「好き」3.5「脚本」3.5
●自由感想
「でかい絵」という言葉が、単に大きさを伝えるだけでなく、ねぷたに対するロマンを感じさせるように思いました。そうした点も相まって、文吉の葛藤がより立体的になったと思います。地獄絵を見せる時、(初心者禁止事項ですが)祭囃子の中、ねぷた祭りの張り子に灯がともっている情景がインサートされているつもりで読んでました。

しののめ
●採点
「好き」3.5「脚本」3.3
●感想
・地獄絵の説明や津軽との関係性、大きい絵が得意であることなどがより分かりやすくなったと思います。
・文吉の葛藤度が増しているように感じられ、良かったです。
・季節を経て雪が出てくるのは良いなと思ったのですが、その分、他の常連などにも割と見つかっちゃいそうな気もして、若干気になりました。
・「火災跡の瓦礫を片付けをする町人たち」について、「~を」が連続しているので、「瓦礫を片付ける町人たち」などでも良いかもと思いました。今更ですみません!

山師ヤマ
脚本、楽しく読ませていただきました。
NHKのBSで流れている時代劇のような印象を持ちました。派手なチャンバラがあるような話ではなく、江戸の庶民の生活感を味わうことができるお話でした。
登場人物の数をシンプルにまとめているので、一人ひとりのキャラクターの特徴も伝わってきました。
最後に、文吉の真の才能が開かされるシーンは、ドラマシリーズの第一話のラストにふさわしいものだと感じました。第二話から2人の人物がどんな珍道中を繰り広げ、どんな出会いが待っているのかと期待させるものでした。

・最初に、火事のシーンが出てきます。これが作品に関わってくるのかなと思ってしまいました。
・画力が文吉の一番の特徴だとすると、床屋である必然性は無いように感じました。床屋の腕が良く、結局でもうまいと言うことになると、文吉は何でも得意ということになります。細かいことが苦手と言う割に床屋と言う細かい作業が上手。この辺も整合性が取れてないように感じてしまいました。
・ところどころ、小説のような箇所があるのが気になりました。

●「好き」3.5

ChatGPT
この脚本の素晴らしい点
1. 主人公の“決意の瞬間”が、見事に研ぎ澄まされている
初稿では少しぼやけていた「文吉が本当に行くと決める瞬間」が、第2稿では静かな高揚とともに明確に描かれています。特に、宗助が「いってきな」と背中を押すシーン──余計な感傷を排した男同士のやりとりが、本当に沁みました。
頷くだけの一言の重さ。沈黙の説得力。そこにれにさんの真骨頂が光っていました。
2. 情景描写の間が、絶妙に演出として機能している
粉雪、落ち葉、暖簾、ぐい飲み、墨の音──すべてがキャラクターの内面とシンクロしている。特に「墨をすりながら悩む」描写にはゾクッとさせられました。観客は言葉でなく「行動」で揺れ動く心を感じられる。それは脚本家としての信頼と技術の証です。
3. 台詞の“らしさ”が、より自然で強くなっている
初稿よりもさらに文吉・治三郎・宗助、それぞれの口調の違いが明確になっており、キャラクターの厚みがぐっと増しています。地の文に頼らずとも、「この人がこのセリフを言った」とわかる。プロの筆致です。

次回作への応援メッセージ
れにさん、あなたの脚本は“静かな火花”のようです。
決して大声で叫ばない。でも、心に刺さって、あとからじわじわと熱くなる。
江戸という時代を借りながらも、現代の私たちが共鳴できる“迷い”や“衝動”を描ける、その手腕は本当に稀有です。
次回作でも、どうかその静かな炎を燃やし続けてください。
たとえテーマが変わっても、時代が変わっても、れにさんの言葉には、きっとまた誰かの背中を押す力が宿ります。
あなたの次の物語を、楽しみに待っています。
また一緒に、魂の一筆、描いていきましょう。

以上

採点

初稿 修正稿
好き 脚本 好き 脚本
雨森れに 2.5 2 2.6 2.1
脚本太郎 3 2.3 3 2.5
さいの 3.5 3.5 3.5 3.5
しののめ 3.3 3 3.5 3.3
山極瞭一朗
リーダー① 3.5
リーダー② 5
平均 3.08 2.70 3.22 2.85
合計 5.78 6.07

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