脚本添削『言い訳』(★5.60)

※このページで脚本が読めます(初稿と修正稿、PDF形式)。

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初稿(★5.30)

脚本_さいの08v1『言い訳』(キーアイテム)_250724

さいの
●自己採点
「好き」3「脚本」2.5
●ログライン100
一年前に自ら周囲との連絡を絶って芸人を辞め、未練を抱えつつサラリーマンとして生活している俊介。最近結婚した妻の誕生日のために早く帰ろうとするが、偶然元カノの佳織と出会ってしまい、元相方で最近不調な石垣のためにネタ合わせをするよう頼まれたことで、結果的に自身のお笑いへの未練を解消する。
●フック/テーマ
言い訳、漫才/過去との決別
●ねらい/テーマ触媒
テーマ触媒:キーアイテム
ねらい:視覚的に映える使い方をする。
●感想
プロットやキャラはこれでいいと思うのですが、もっとテーマを明確にして、ページ数も絞りたいです。

テーマ触媒2:「脚色」「二面性」「キーアイテム」「サイレント」

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雨森れに
●採点
「好き」2.8「脚本」2.4
●ログライン100
芸人時代の恋人と偶然再会した俊介は、借金をチャラにするかわりに元相方がやっているコンビの練習に付き合うことを依頼され、その過程で過去との折り合いをつける。/77文字
●フック/テーマ
芸人/過去との決別
●カタリスト
柱4、意図せず佳織と再会しお茶に誘われる
●不明点・不自然な点
・柱5での会話のテンションに違和感を感じました。
お互い近況報告や過去の話をしているのはわかるんですが、わりと重ためな内容が多いので普通のテンションで淡々と進んでしまっていいのかな?と思いました。おそらく俊介が動いたのは嘘をつく部分だけで、あとは受動的な会話をしているからそう見えるのかもしれません。物語が進んでいるというより、セットアップの補足を会話で見せている印象を持ちました。
・小道具の説明が足りないように感じました。
プレゼントのうるおいコスメセット=柱9での俊介の装いだと認識したのですが、ト書きになかったので柱8で紙袋見せたりは必要かなと思います。そしてプレゼントを使ってしまった俊介がどうなるかは想像させるよりエンドイメージとして奥さんに怒られてるシーンを入れたほうがテーマを深められる気がします。
・ラスト、過去との折り合いが唐突?
佳織との会話で徐々に折り合いをつけていったのかもしれませんが、柱10と11の間で俊介の反応があれば説得力が増すと思います。柱11の空気感がとてもいいので、もっと柱11を見せつけるようなワンクッションが欲しいかもしれません。
・石垣のセットアップや反応がほしかったです。
石垣は俊介に助けられたはずなのにサラっと会話を流しているだけでした。主人公に変化させられた側のキャラクターにもう少し大きい変化があると、俊介の主人公感が増すと思います。夢を諦めた側が変化させるなんて胸アツ展開だと思うので、「嬉しそう」「楽しそう」「俊介へのリスペクト」などが加わると盛り上がるのではないでしょうか。
●自由感想
夢を諦めた側が打ち上げた、最後の花火のような物語だと思いました。
後半の展開はまさにBBといった雰囲気を感じました。
ですが、後半に動きがある分、柱5が映像に変化がないまま2.3分経ってしまうので勿体ないと思ってしまいました。
主人公視点ではなく、俯瞰視点で長く会話をさせていることが原因かもしれません。私もできていないので言える立場ではないのですが、さいのさんは主人公視点を操れるようになったら化ける気がしています……!

脚本太郎
「好き」2.5「脚本」2.3
●ログライン100
元芸人の俊介はお笑いに未練を感じながらも結婚して普通の会社員生活を送っていたが、元彼女の佳織をナンパ男から助けたことをきっかけに元相方の石垣がまだ芸人を続けているもののうまくいっていないことを知り、彼女の頼みで最初は変装と裏声でネタ合わせをするも、やがて開き直って地声になり、二人とも昔の調子を取り戻し、別々の道を歩む。
●フック/テーマ
漫才シーンを活かした作劇/夢に対する未練
●カタリスト
柱4: 男の声「え、本当にダメ? ねえ、お茶するだけじゃん」
●不明点・不自然な点
・石垣のそれと比べて俊介の問題が解消された感じが弱いと感じました。柱5で過去のエピソードが列挙されるのにその時の感情が見えてこなかったり、タイトルに「言い訳」とあるように言い訳や見栄を重ねる割にはその理由が見えてこないせいかなと思います。また、俊介には「お笑いへの未練」以外にも「借りた金を返さないまま行方を眩ませた」「言い訳や嘘、見栄を重ねる」などの問題もあり、むしろそちらの方が深刻なのにあまり焦点が当てられてないことにモヤモヤしました。
・「数十万円借りたまま行方を眩ませた」ってかなり酷い行為だと思うのですが、その割に人助けをしたりと悪人な感じもしないので何なのだろうと気になりました。悪人が主人公で成立する話ではない気がするので、せめて金額を低くするか納得のいく理由を付けた方が良いと思いました。(同様にネタ合わせしただけで数十万円の借金チャラにするのもちょっと無理があるかと)
●自由感想
・夢を諦めた主人公が夢を追い続ける元相方を助けるという展開や、別れのシーンが良い意味であっさりしているところなどが好きでした。ラストに笑いを持ってきているところも良いと思います。

しののめ
●採点
「好き」3.2「脚本」2.5
●ログライン100
相方や彼女との関係を勝手に絶った過去を持つ元漫才師・俊介。お笑いへの未練が残る中、元カノと再会してしまい、不調な元相方とのネタ合わせを頼まれ、渋々外見を偽装して臨むが結局正体を明かす。俊介のお陰でウケを取り戻した元相方を見て、お笑いへの未練が解消される。
●フック/テーマ
元漫才師/未練の解消
●カタリスト
男の声「え、本当にダメ?ねえ、お茶するだけじゃん」
●不明点・不自然な点
・お笑いに対する未練を解消する話なので、なぜ突然やめたのか、しかも周りとの関係性まで絶ったのか、という理由が気になってしまいました。今作中で明かさないといけないことではないかもですが…。理由が不明な分、お笑いに対する俊介の思いや、お笑いとの関係値が見えづらいかもです。元カノや元相方を通じてそのドラマが見たい、もしくはお笑いを通じて元カノや元相方とのドラマが見たいのですが、お笑いと再会するまでの流れを元カノとのやり取りに費やし、その割に締めだけは元相方との会話だったので、感情的なドラマが薄いように感じました。
・かなり微妙なラインですが、「芸人やってる」と嘘をつく動機が若干弱い気もしました。元カノに見栄を張りたいという気持ちは勿論あると思うのですが、結構無理のある嘘かもと…芸人界隈は割と狭い印象もあるので、「養成所にいて外ライブに出れないから」という理由で現役の石垣にまで見つからなくなるもんかな…?という。
・58万チャラにしてでも一度ネタ合わせしてほしいというのはかなりすごいことのような気がするので、佳織が相当稼いでる様子などをト書きで1行入れるだけでも納得感が増す気がしました。また、そう頼まれる程度には俊介に実力があったということだと思うので、その分、辞めた理由や「養成所通ってる」と嘘をつく流れが気になってしまいました。正直に「芸人辞めた」と言ってしまっても、内容的にはあまり差し支えない気も…?その上で借金返せという流れを避ける為にも、薔薇は削ってコスメセットだけにし、「芸人辞めたけど経済的に余裕がある訳ではない感」を出しても良い気がしました(ネタのくだりでコスメは使うのに薔薇だけ出てこないのも若干微妙ですし)。
●自由感想
・周りに似たような立場の人が多いので、親近感を持って読めました。「田村賢」…笑
・いやそうはならんやろ!笑 というポイントがいくつかあるのですが、題材とジャンルも相まって、スルーできる範囲なのかなと思いました。
・漫才の中身に挑戦しているのが素晴らしいなと思いました。コスメ太夫のくだりがめちゃくちゃ面白かったです。

山極瞭一朗
●採点
「好き」3.0「脚本」2.3
●ログライン100
未練を残しながらも芸人をやめ、会社員として生きる俊介は、元カノと偶然再会する。そこで唐突に不調な元相方とのネタ合わせを頼まれる。借金をチャラにすると言われたことで、その提案を受け入れた俊介は、元相方が調子を取り戻したのを見て、お笑いへの未練を解消する。
●フック/テーマ
芸人/過去への未練
●カタリスト
柱4.俊介「(佳織の方を向いて)げっ」
●不明点・不自然な点
芸人に対してどの程度の未練があるのか判然とせず、俊介に共感しにくかった印象があります。夜逃げ同然で関係を断ち切るほどの覚悟があって芸人を辞めたことと、芸人に対する未練とが感情的にどうも釣り合わないように感じていて、辞めたくなかったけど辞めざるを得なかった状況があれば、俊介の行動に説得力が増すように思いました。 またラスト、芸人に対する未練を解消するくだりが唐突に感じました。元相方が調子を取り戻したことがきっかけになったと捉えましたが、やや未練を断ち切るには感情的に弱いような気がしました。
●自由感想
日の目を見ることのなかった元芸人を描くのは切り口として興味深いと感じました。 また、漫才の内容をト書きでぼかすのでなく、実際に台詞として描いている点に気概を感じました。

詩舞澤沙衣
今、法律的に休憩室で喫煙できないのでは? と冒頭のテレビを観ているシーンで思いました。喫煙室だとしたら、テレビはないでしょうが……。喫煙の描写になにか意味合いが込められていないなら、喫煙の描写はなくてもいいのかな? と思いました。
俊介は妻に誕生日プレゼントを買ってあげる描写からスタートしていますが、途中で佳織たちに連れていかれる描写から、結局妻とはなんとかなったのか気になりました。言い訳として、「お笑いの練習を手伝わされた」みたいな具体的な説明をしたのか、なんとかお茶を濁したのか……? その部分の掘り下げもあっていいのかな、と思いました。
佳織が今の彼氏を「石垣」と呼ぶのが気になりました。元彼は「俊介」と名前で呼んでいるので、石垣のことも名前で呼んでてもおかしくないのかな、と思っています。

ChatGPT
■一番大きな問題点:
俊介の「言い訳」からの変化が物語上で明確に描かれていない
本作は「言い訳」がタイトルであり、俊介が冒頭から終盤まで嘘や言い訳で自分を誤魔化している人物像で描かれています。しかし、最終的に彼が「お笑いを辞める」と言って去るシーンに至るまで、その「言い訳をやめる=覚悟を決める」ような明確な心情の変化や転機が、演出的に弱く感じられます。
読者・観客としては「彼はどうして突然きっぱり辞めたのか?」「その決断に感情的な納得があるか?」という点で、やや腑に落ちにくい。
■改善案3つ:
① 終盤に「自分の本音を語るシーン」を加える
佳織とのやり取りの中や、石垣との再会の後などで、「自分が芸人をやっていた理由」や「なぜやめようと思ったか」という本音を吐露するシーンを短くてもいいので挿入する。
例)
俊介「俺さ、結局、誰かに必要とされることより、誰かに笑われることが怖かっただけなのかもしんない」
これだけで、彼の内面が一気に立体的になります。
② 「言い訳の象徴」としての小道具を活用する
例えば、「隠した結婚指輪」「フェイスパックでごまかした顔」などを、最後に自分の手で外す/捨てる/観客の前で晒すといった演出を入れることで、観客にも「彼が言い訳をやめた瞬間」が視覚的に伝わります。
例) 舞台裏で石垣に別れを告げたあと、俊介がポケットから指輪を再び外し、そっと置いて立ち去る――など。
③ タイトルとラストセリフをリンクさせる
「言い訳」をやめた彼が、最後に言うセリフでその変化を印象づける。
例)
石垣「なんで辞めるんだよ」
俊介「……それが、本当の俺だから」
(言い訳しない俊介がそこにいる)
■応援メッセージ:
さいのさん、脚本としての完成度はすでに非常に高く、読んでいて笑いも切なさも感じられる素晴らしい作品でした。俊介という一人の男の弱さや未練、それでも進もうとする姿には人間らしさが滲んでいて、とても魅力的です。
物語の根幹――“言い訳ばかりして生きてきた男が、それをやめる瞬間”――がより強調されれば、この作品は観客の心にさらに深く刺さる名作になります。
このまま磨いていけば、舞台化・映像化も狙えるポテンシャルを感じます。
次の稿、楽しみにしています。
──あなたの物語に拍手を。

修正稿(★5.60)

脚本_さいの08v2『言い訳』(キーアイテム)_250803
修正期間:2025.08.01→2025.08.03(2日)

さいの
●自己採点
「好き」3「脚本」2.5
●ログライン100
一年前に自ら周囲との連絡を絶って芸人を辞め、未練を抱えつつサラリーマンとして生活している俊介。最近結婚した妻の誕生日のために早く帰ろうとするが、偶然元カノの佳織と出会ってしまい、元相方で最近不調な石垣のためにネタ合わせをするよう頼まれたことで、結果的に自身のお笑いへの未練を解消する。
●フック/テーマ
言い訳、漫才/過去との決別
●ねらい/テーマ触媒
テーマ触媒:キーアイテム
ねらい:視覚的に映える使い方をする。
●感想
構成はあまり変えず、内容だけ変えた形です。

修正稿へのフィードバック

雨森れに
●採点
「好き」3「脚本」2.7
●良くなった点
・佳織が感情を爆発させることで、後戻りできない状況(DNもしくはdeath)を作っている。加えて佳織との関係性や過去の出来事が更にわかりやすくなっていると思いました。
・コントの切れ味があがった。この話の魅力的な要素としてコントの面白さが増したと思いました。私には刺さりました。
・気になっていた妻が出てきたことでスッキリした。
●自由感想
初稿では淡々とした雰囲気でしたが、修正を経て登場人物に人間みを感じました。佳織や真由が感情を表すことで、俊介の芸人気質というか何でも面白くしてやろうという人間性が見えた気がします。
柱11の石垣との掛け合いも、まだ心が近しい間柄に感じて心が温まりました。

脚本太郎
●採点
「好き」2.7 「脚本」2.5
●自由感想
・借金の設定がなくなったことで、俊介の言動に対する違和感は少なくなりました。
・佳織が感情を露にしながら(正確にはその直前ですが)都内の地下ライブ全部回ったことを話すシーンは熱くて好きでした。
・個人的には、奥さんが最後出てくるところは蛇足に感じ、石垣との別れでキッパリ終わる方が好みでした。

しののめ
●採点
「好き」3.3「脚本」2.7
●自由感想
・58万の件を削ったり、お笑い続けてるという嘘が看破される流れになったことで、引っ掛かりが少なくなったと思います。バックレた理由にも言及されていて読みやすくなりました。佳織からの叱咤シーンによってドラマもより盛り上がっていると思います。
・佳織も真由も似たような当たりの強さがあって面白いなと思いました。俊介はそういうタイプの女性が好きなんだろうなと…笑
・漫才の内容を全替えし、ツッコミとボケまで入れ替えている心意気が素晴らしいと思います!笑 一方で、ツッコミのくせにコスメ太夫の見た目と裏声でツッコんでくるというのがノイズすぎて面白かったので、コスメ太夫はツッコミでいて欲しかったかもしれません笑 急にネタをやらされる立場としても、ボケよりはツッコミの方が(基本的には受け手なので)対応しやすい気がします。全部私の個人的な好みです😂

山極瞭一朗
●採点
「好き」3.0「脚本」2.6
●自由感想
芸人側の佳織にはコスメ太夫が刺さり、一般人側の真由には刺さらないといった対比がなんとも秀逸でした。 全体として、読みやすくなったと感じました。コントのシーンは読みながらくすっと笑ってしまいました笑 佳織が感情をあらわにしたことで、受けて側の俊介がネタ合わせをせざるを得ない状況ができ、その後のシーンにすんなりと入れた印象です。 石垣、優しすぎる笑 相方が急に現れて感情爆発しそうなところを大人な対応。僕自身石垣と俊介の対立があっても面白いのかもしれないと思いましたが、佳織も感情をあらわにしているわけで、みんなが俊介に怒るのも、とっちらかるなと。石垣は難しい塩梅の立ち位置なのだなと感じました。

ChatGPT
この脚本の素晴らしい点は、まず主人公・俊介の二重生活の滑稽さと切なさが見事に描かれているところです。
「花束と化粧品」という“妻へのプレゼント”が、そのまま「舞台での変身アイテム」に転化していく流れはとてもドラマティックで、ラストのコメディと現実の苦さが交錯する構成は強い余韻を残します。
また、佳織との対話も見逃せません。かつての仲間への責任や、言い訳を積み重ねて逃げてきた俊介の弱さが浮き彫りになりつつも、それが彼を舞台へと再び押し出す原動力になっている。人間関係の絡ませ方が巧みで、会話劇としてのテンポもとても心地よかったです。
最後に、妻とのやりとりで突きつけられる「家庭」と「芸人」の乖離。観客を笑わせながら、当人は笑えないという皮肉なオチが光っていて、二稿としてさらに練り込まれている印象を受けました。

――次回作への応援として。
この作品は“お笑い”を題材にしつつも、根底には「人間はどこまで言い訳して生きられるか」という普遍的なテーマが流れています。あなたの脚本は、笑いと痛みを同時に提示できる力を持っています。ぜひ次回は、俊介のように“自分ではコントロールできない笑い”と“人間の弱さ”をもっと広げて、新しい舞台を描いてみてください。きっとさらに観客を唸らせる作品になると思います。
🎉 次の一作、楽しみにしています!

以上

採点

初稿 修正稿
好き 脚本 好き 脚本
雨森れに 2.8 2.4 3 2.7
脚本太郎 2.5 2.3 2.7 2.5
さいの 3 2.5 3 2.5
しののめ 3.2 2.5 3.3 2.7
山極瞭一朗 3 2.3 3 2.6
リーダー① * * * *
平均 2.90 2.40 3.00 2.60
合計 5.30 5.60

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