脚本添削『エンドロール』(★5.08)

※このページで脚本が読めます(初稿と修正稿、PDF形式)。

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初稿(★4.96)

脚本_さいの10v1『エンドロール』(回想)_250804

さいの
●自己採点
「好き」2.5「脚本」2.5
●ログライン100
地下アイドルの燈は、同じグループの夢香が映画の現場で監督から暴力を受けていることを知るが、映画公開を優先したい夢香本人から口止めされる。燈は撮影終了後に夢香が音信不通となった後もその約束を守り続け、公開された映画を見てエンドロールの夢香の名前にその想いを新たにするが、監督の不祥事を暴こうとするライター・堂島の登場に心が揺らぐ。
●フック/テーマ
映画、立場を悪用した搾取/約束
●ねらい/テーマ触媒
テーマ触媒:回想
ねらい:トップシーンから回想に入る
●感想
トピックのセンシティブさに対して、取材が足りていないように思います。ただ露悪的な趣向になってしまっている感じが拭えないのが正直なところです。

テーマ触媒3:「回想」「ミステリー」「はじまり」「おわり」「いちばん書きたいもの」

フィードバック

雨森れに
●採点
「好き」2.2「脚本」2.3
●ログライン100
とある映画を観に来たアイドルの燈は、メンバーの夢香がこの映画の撮影で暴力や性被害を受けて芸能界から消えたことを知っており、マスコミから取材が来るが逃げて夢香の意志を尊重する。/87文字
●フック/テーマ
暴力と性被害にあうアイドル/社会の闇
●カタリスト
柱3、酒井より夢香の映画出演が決まったと告げられる。
●不明点・不自然な点
・燈が主人公らしくない
夢香側に動きや感情が多く、燈が傍観者として描かれているように感じました。メインストーリーが夢香視点なので、燈視点で話を進めたほうが感情移入できるかもしれません。夢香に何か起こっているのを匂わして、最後にインタビューされて真実に辿り着くとか。
・ダイジェスト版に見えるかも?
10分の映像で見た時に視点変更が忙しくダイジェスト版のように見えるかもしれません。私もよく増やしすぎてしまうんですが、柱は10~12程度に収めたほうが見やすいと思います。上であげたこととちょっと重複しててすみません💦
・7人グループの必要性
大人数グループのほうがアイドルとして想像しやすいんですが、登場人物が増えているだけで必要性までは感じられませんでした。人物の処理も大変じゃないかなと思うので、2人組のアイドルにして燈との信頼関係を匂わせる要素にするのはいかがでしょうか。
・キャストをビンタしたら顔が腫れちゃう
絵面のパンチはあるんですが、映画撮ってるのにキャストさんビンタは現実的じゃないかもです……!衣装で隠れている部分に暴力とかにすれば、夢香の手首の腫れにもリンクしていくかもしれません。
・場所の雰囲気
柱かト書きに場所の雰囲気があると制作側がやりやすいかもしれません。レッスンスタジオが小さければ売れない地下アイドルらしさが出たり、撮影スタジオの詳細があればどんなシーンを撮っているのか想像できたりするので。見せるセットアップ要素になると思います。
●自由感想
水鳥の使い方が好みでした。勝手な解釈になるんですが、水鳥が夢香の想いや現状にリンクしているように感じました。
だから最後は水辺の公園で水鳥見ながらフライヤーを燃やしてほしいなって思いました笑
映画の内容に一切触れないのも斬新でした。もしかしたらどれだけ映画がヒットしてるのかとかわかったらより社会の闇を感じるのかもしれません。

脚本太郎
●採点
「好き」3 「脚本」2.5
●ログライン100
地下アイドルの夢香は、初めての映画出演で監督からハラスメントを受け、「これが引退前最後の仕事だから」と波風を立てないよう耐えるも、撮影終了後に監督から性被害を受け、行方不明になってしまう。
●フック/テーマ
芸能界の闇/ハラスメント問題、苦痛への向き合い方
●カタリスト
柱3: 酒井 「……夢香、映画の仕事、決まった」
●不明点・不自然な点
・燈の回想という形で始まっていますが、夢香視点のシーンが多い(というか燈が関知していない場面もあり)ので、少し違和感がありました。これを直すと構成を大きく変えざるをえない気がするので、それを避けるためにいっそ回想形式をやめるのも手かと思います。
・大河原は大御所の監督っぽいですが、キャストの顔を殴ってたらもっと早くハラスメントが発覚してそうなので、暴力を受ける人をスタッフに変えるか、部位を顔以外にした方が無難かと思いました。
●自由感想
水鳥の綺麗なシーンと対比されて夢香の現状がより悲惨に感じられる気がしました。
柱13の淡々と無造作に連れていかれる感じは良いのですが、大河原の夢香に対する何か冷淡or無神経な態度や台詞を出せばより絶望感があるかなと個人的には思いました。
夢香がどうなったか分からない、という終わり方が不安を残したままになっていて良かったです。

しののめ
●採点
「好き」3「脚本」2.5
●ログライン100
アイドルの燈は、同じグループの夢香が映画の現場で暴力を受けていると知るが本人から口止めされる。撮影終了後に夢香が活動を休止する中、夢香の意思を尊重して映画を宣伝するが、夢香の件についてライターに詰め寄られたことで心が揺らぐ。
●フック/テーマ
映画業界、芸能界でのハラスメント
●カタリスト
酒井「……夢香、映画の仕事、決まった」
●不明点・不自然な点
・柱7、夢香不在で酒井が「夢香は遅れる」と言った傍から姿を現したのでしょうか。状況が若干分かりづらい気がしました。
●自由感想
・(特段詳しい訳ではないのですが)悪い意味でとても映画界・芸能界あるあるという感じがして、意欲を感じました。人物たちの感情のあり方や変化も自然だと思います。今後の展開が非常に重要な作品だと思いました。こういった問題(の取り扱い方)にある程度敏感な方だという自覚があるのですが、現段階ではそこまで露悪的には感じませんでした。ビンタされていた俳優もですが、アイドルの手首というかなり見られやすい箇所に傷をつけるのは結構なことだと思うので、「ジャムジャム」の事務所と大河原に結構な権力差があるのかなと想像しました。
・現状、ハラスメント被害当事者が燈ではなく夢香なので、今後燈がどこまで主人公的に動けるのかが気になりました。ここで出す例として適切か分かりませんが、坂元裕二のドラマ「問題のあるレストラン」などは一番の被害者と主人公が別なので、そういった作品になるのかなとイメージしながら読みました。
・水鳥の描写が素敵でした。夢香の写真趣味と併せて、今後どれくらい活きてくるかも気になります。
・夢香が記者会見で話すシーン、台詞が途中で切れていますが、大河原がどれくらいの大御所なのか、それに起用されることがどれくらい凄くて嬉しいことなのかがもう少し伝わるよう、夢香に語らせるか表情のト書きなどで表現しても良いかなと思いました。
・アイデアの一つですが、夢香の出演する映画をハラスメント批判の作品にする、などもアリかなと思いました。執筆の難易度がより上がるかもしれませんが、実際に似たような状況もちらほら聞きますし、皮肉や批判性が際立つかもしれません。

山極瞭一朗
●採点
「好き」2.1「脚本」2.2
●ログライン100
アイドルグループに所属する燈は、同じグループの夢香が映画監督から暴力を受けていると知る。夢香から口止めされたことで、その約束を守ったが、彼女の失踪をきっかけに、心が揺らぐ。
●フック/テーマ
性被害/フックと同じ
●カタリスト
柱3. 酒井「……夢香、映画の仕事、決まった」
●不明点・不自然な点
燈の感情の流れがいまいち掴み切れませんでした。回想は主に夢香視点の為、事件の当事者でないことが原因のように感じました。夢香が失踪してから、燈は夢香に対し何らかのアクションがあったのか、現在時制のパートにおいて、そのあたりが見えると、燈への感情移入が深まるように思いました。 回想の尺の長さ故、結果的に物語があまり進んでいないように感じました。 また、映画の規模感やアイドルの知名度といったところがどのようであるか気になりました。例えば、柱14. 満席の客席とありますが、どのキャパでの満席なのかによって、ドラマが大きく変わってくるように感じます。そのあたりを詳しくト書きで示してもよいのではないかと思いました。
●自由感想
柱10.の、燈と夢香2人のシーンは、2人の関係性がよく表現されていて、素敵なシーンだと感じました。 また、夢香の葛藤は色濃く感じ取ることができました。理不尽な状況に置かれた女性に胸が詰まる思いでした。

詩舞澤沙衣
夢香の映画での役どころがよくわからないな、と思いました。オールアップの時にも撮影現場にいる状況や、会見が大々的な様子からしても、ある程度大きな役なのかな、と思いますが、「助演」などある程度具体的に役どころを提示すると、仕事の大きさが表現できるのでは、と思います。大河原が夢香を狙っていた匂わせみたいな描写があってもいいのかな、と思います。(ライブシーンを回想に入れて、そこで後方に映っている大河原 みたいな)実際に監督に性行為を強要されたという事件はいくつもあり、そういう事件の詳細を調べてみるのが、出来事の前後関係を組み立てるうえで必要なのかな、と思いました。ただ、現実の事件の概要を脚本と起こすだけでは意味がないとは思うのですが、打ち上げで性行為を強要されるという流れは自然なのか? がちょっと私にはわからないです。

ChatGPT
一番大きな問題点
夢香の「その後」が描かれないため、観客が余韻よりも「行方不明なのか、何が起きたのか?」という疑問に引っ張られてしまい、物語の主題(夢香の選んだ“エンドロールとしての生き方”)がややぼやける点。

改善案(3つ)
●ラストに小さな示唆を残す
たとえば「燈が後日、夢香から届いたポストカードを見つける」「水鳥の写真がSNSに上がっている」など、夢香がまだどこかで生きていることをほのめかす。観客の疑問を解消しつつ、余韻を壊さない。
●堂島ライターの役割を補強する
彼女が取材を通じて「夢香の映画が評価されつつある」など、夢香の功績や生きた証をラストに提示すれば、“夢香は消えたけれど作品が残った”という主題が一層強調できる。
●「エンドロール」の二重構造を鮮明にする
映画のエンドロールと、夢香の人生のエンドロールを重ね合わせる演出を強調する。例えば燈が夢香の名前を見た瞬間に、川辺の水鳥が飛び立つ映像をフラッシュバックさせ、観客に「これが夢香の最後の姿なんだ」と腑に落とさせる。

応援メッセージ
この脚本は、アイドル業界や映画業界の闇を描きつつも、友情や「自分の生きた証を残したい」という普遍的な願いを切実に伝えています。とても力強い題材を扱えているのは素晴らしいことです。
次の稿ではラストの余韻をどう残すかを調整するだけで、観客に深い印象を与える完成度の高い作品になるはずです。あなたの物語は必ず多くの人の心に届きますよ。頑張ってください! ✨

修正稿(★5.08)

脚本_さいの10v2『エンドロール』(回想)_250815
修正期間:2025.08.12→2025.08.15(3日)

さいの
●自己採点
「好き」2.5「脚本」2
●ログライン100
地下アイドルの燈は、同じグループの夢香が映画の現場で監督から暴力を受けていることを知るが、映画公開を優先したい夢香本人から口止めされる。燈は撮影終了後に夢香が音信不通となった後もその約束を守り続け、公開された映画を見てエンドロールの夢香の名前にその想いを新たにするが、監督の不祥事を暴こうとするライター・堂島の登場に心が揺らぎ、夢香を探し始める。
●フック/テーマ
映画、立場を悪用した搾取/約束
●ねらい/テーマ触媒
テーマ触媒:回想
ねらい:時制の変化を使って、行方不明となった夢香との距離感を演出する。
●感想
現在時制におけるカタリストを早める、回想を燈の視点で描く、最後に物語の方向性を示すことを意識しました。一方で、内容の未整理度合いは初稿より大分と増してしまったと思います(ページ数も)。ほとんど改稿箇所のためハイライトしてません。あと文字情報の表示を使っています。よろしくお願いします。

修正稿へのフィードバック

雨森れに
●採点
「好き」2.5「脚本」2.5
●良くなった点
・長編の導入として続きが見たくなった。
堂島を早めに出すことにより、これからの展開が気になりました。夢香に何があったのか謎にしているのもよかったです。
・撮影の雰囲気がわかりやすくなった。
アイドルが学生役というのがリアリティがありました。
・燈と夢香の関係が更に深くなっているように思えた。
帰り道の通話があることで、日頃から通話しているような関係だと感じました。
●自由感想
続きが気になりました。
堂島の存在、映画の内容、夢香に何があったのか……通話FBで内容を伺っていましたが、改めて脚本で読みたいと思いました。
今回の10分脚本だとフック/テーマが観客側に伝わりにくいので、長編としてではなくこの10分のフック/テーマも考えてみると更に引き込まれるようになるかもしれません。私の主観だと今回のテーマ/フックは「監督のパワハラ/行方不明」です。なので、約束の部分を強められると、さいのさんがやりたかったことができるのかな?という印象です。

脚本太郎
●採点
「好き」3 「脚本」2.7
●良くなった点
ある程度状況が明かされてから回想に入ったことで、回想であることが分かりやすくなりました。また、先の展開へのフックにもなっていると思います。
燈の視点がメインになったため、彼女の夢香への感情が分かりやすくなり、二人の関係にも深みが見えるようになりました。
悲しく不安な終わり方から、続きが気になるハラハラした終わり方になったのが好印象でした。

しののめ
●採点
「好き」3「脚本」2.6
●不明点・不自然な点
・「夢香、その痛々しさに思わず息を呑む。」→燈が正かなと思います。
●自由感想
・掴みと終わり方がキャッチーになり、続きがより気になる作品になっていました。
・柱15、パワハラの話を知った後の割には、燈の反応が無邪気すぎるかもと思いました(笑顔や、「なんか、大人じゃん」など)。明るい調子を装いつつも、薄ら心配している雰囲気をト書きなどで説明しても良いかもと思いました。
・夢香が性被害に遭っているというのが分かり辛くなったように思います。敢えてでしたらすみません(もしかして性被害ではなくなったのでしょうか)。また、初稿では「半分騙されたような形で性被害に遭った」というニュアンスが強かったのですが、修正稿では「分かっていて敢えて部屋に入ろうとしている」という雰囲気が強まり、不可抗力感が若干弱まっているようにも見えます。現実的には「断りたくてもそう簡単に断れるものではない」というのは重々分かっているのですが、現状の描写だと、分かっていても逃げ(られ)なかったことが意味深になっているというか、単に「権力差や今後の芸能生命を考えて断りきれなかった」では済まないような、後で種明かしされるようなレベルの理由や事情があるのかな?という風にも見えかねないかもと思いました。こちらも敢えてでしたらすみません。「行方不明の夢香」という要素をより強める方向にされたと思うので、夢香は何故逃げ(られ)なかったのか、という点まで含めてミステリー的な方向に持っていこうとしているようであれば問題ないかと思います。そういう狙いであればそれはそれで一層続きが気になりますし、面白そうだなと思いました。

山極瞭一朗
●採点
「好き」2.3「脚本」2.3
●自由感想
燈と夢香の2人のシーンから、2人の関係性がよく表現されているのはそのままに、冒頭やラストで燈視点のシーンを追加することで、燈の感情がより理解しやすくなったように感じました。それにより燈の主役感が高まったように思いました。一方で、回想は主に夢香視点の為、そこにおいて夢香の主役感は残されていたようにも感じます。 回想シーンにおいても、燈が夢香の異変に気づき、何とかしたかったけど、何もできなかった苦悩や葛藤がより濃く描けると、燈の感情に共感しやすくなり、現在時制において、燈が堂島に連絡をするという行動にスムーズに繋がるように感じました。 今後、物語がどう展開していくのか(夢香は生きているのか、燈はどんなアクションを起こしていくのか。など)、非常に気になるラストでした。

ChatGPT
この脚本「エンドロール」の素晴らしい点は、まず構成の巧みさです。現在と回想を織り交ぜながら、夢香という人物の「表の輝き」と「裏に隠された痛み」を少しずつ浮かび上がらせていく流れがとても引き込まれました。特に、エンドロールから始まる導入の静けさと、そこから蓄積されていく記憶の断片が、観客に「夢香は今どうしているのか?」という切実な問いを残してくれるのが印象的です。

また、夢香と燈のやり取りには温度差がありながらも確かな絆が描かれており、芸能界の光と影をリアルに伝えるだけでなく、個人的な友情や約束が胸に迫ってきました。最後に燈が堂島に「手伝ってくれませんか?」と口にする場面は、作品全体を未来へと押し出す強い余韻を残していて、まさにタイトルの「エンドロール」と呼応していると思います。

次回作では、この「人物の内面と社会の構造が交差する世界観」をさらに広げていただけると、とても楽しみです。例えば、別のキャラクター視点から物語を紡ぐことで、より多層的な「真実」や「希望」が描けるのではないかと思います。
さいのさんの脚本には、人間の弱さと強さを同時に映し出す力があります。ぜひ次回も、心を揺さぶる物語を届けてください。応援しています!

以上

採点

初稿 修正稿
好き 脚本 好き 脚本
雨森れに 2.2 2.3 2.5 2.5
脚本太郎 3 2.5 3 2.7
さいの 2.5 2.5 2.5 2
しののめ 3 2.5 3 2.6
山極瞭一朗 2.1 2.2 2.3 2.3
リーダー① * * * *
平均 2.56 2.40 2.66 2.42
合計 4.96 5.08

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