不思議な恰好をした女の子

デス

「コモリさん、タスケテください!」

 ドアを開けると不思議な恰好をした少女が言った。ウホッ、めっちゃカワイイ子。外国の人かな? オレにタスケテほしいだって?

「お任せ下さい、お嬢さん。僕に任せておけば大丈夫です。」

 話を聞くと、どうやら道に迷っただけらしい。コスプレイベントの会場へ行こうとしたら迷いに迷ったあげく、たまたま目の前にあったうちに助けをもとめてきたというだけだった。チッ、かっこつけて損したぜ。だが、こんなカワイイ子を放って置くわけにもいかない。オレは会場になっている市民館まで案内してやることにした。めんどくさいけどね。

「ありがとうございます。助かりました。これはお礼です。」

 チュっ。

……なんてことがあるかもしれない。おっと、危ない。妄想していたら、危うく赤信号を渡るところだった。

「外に出るのはひさしぶりですか? コモリさん。」

「ああ、そういえば、そうだな。もう12年振りぐらいか……あれ? ところで、君、どうしてオレの名前知ってるの?」

「そんなこと、どうでもいいじゃないですか。」

「まあ……名字なんて玄関の表札に書いてあったけか。まあ、どうでもいいか。キミみたいなカワイイ子がオレの名前を知ってくれてるだけでうれしいよ。」

「はい。よく知ってます。コモリさんのこと。」

 そのとき、オレの背中を彼女が押した。つきとばれて、オレは赤信号の横断歩道に倒れ込んだ。

 プッププーーーーーー!

 クラクションが鳴り響く。大型トラックが迫る。

 そのとき、彼女の声が聞こえた。

「やっと連れて行ける」

(オレは死んだのか……?)

謎の女の子が現れたことは「非日常」へのきっかけ。冒険への誘いとも言います。これからどんな冒険が始まるのか、観客の期待には応えつつ、予想を裏切ります。

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