SSFF2025 視聴メモ

毎年、記事にしているので今年も「SSFF 2025」の気になった作品を記録として残しておく。

今年は154本視聴。

採点したものの平均点は、
「好き」3.52 「作品」3.30 「脚本」2.97

昨年とあまり変わらない数字。

明らかにレベルの低いジャパン部門の作品は、採点すらしていないので、それらを採点して含めていったら、もっと下がるはず。

だいたい、このレベルを超えたら上映にはかかると言えるかもしれない。

以下、採点合計で12点を越えたもの。イルカが視聴した順。

マリオンMARION
「好き」4 「作品」4 「脚本」4
https://www.shortshorts.org/2025/program/comp24/marion/
上質。プロデュースからしても、映像のレベル、題材の切り取り、テーマの見せ方など良いのは当然か。

また今度Till Next Time
「好き」5 「作品」4 「脚本」3
https://www.shortshorts.org/2025/program/comp20/till-next-time/

脚本は悪いが、個人的に感情の切り取りが好きだった。刺さらない人には、普通のよくある作品だろう。

Dragfox
「好き」4 「作品」4 「脚本」4
https://www.shortshorts.org/2025/program/comp15/dragfox/
安定した作品。マリオンと同じで、よく出来ている。何か突き抜けたものはないとも言えるが、普通に、多くの人に満足度はあるだろう。

破れたパンティーストッキング
「好き」4 「作品」4 「脚本」4
https://www.shortshorts.org/2025/program/comp21/pantyhose/
グランプリ作品。詳細はこちらの記事でも書いた。会場で見ていて、面白かったが、それ以上ではない印象だった。これがグランプリということが、今年の作品全体の小粒感を表してるかもしれない。

クロネズミBlackmoll
「好き」4 「作品」4 「脚本」4
https://www.shortshorts.org/2025/program/milbon/blackmoll/
Dragfoxとは逆で、よく出来ているが物足りなさが目立つという印象。修正したら、すごく良くなりそう。

炎のエーリウÉiru
「好き」4 「作品」4 「脚本」4
https://www.shortshorts.org/2025/program/comp9/iru/
こちらはDragfox系、コンセプトがはっきりしていて、構成も安定していて、テーマもハッキリ伝わる。

雑草の逆襲Weeds
「好き」4 「作品」4 「脚本」4
https://www.shortshorts.org/2025/program/comp11/weeds/
テーマ構成も、炎のエーリウと似ているが、こちらのが感情が描かれていて少し上という印象。短編向き。長くするならエーリウのが作りやすいだろう。

一切れの肉A piece of meat
「好き」5 「作品」4 「脚本」3
https://www.shortshorts.org/2025/program/comp11/a-piece-of-meat/
演出のテンポは悪くないが、もう少し感情を拾うドキュメントタッチの演出にしていたら5をつけられたかもしれない。ボクシングシーンとの噛み合わせに腕が要るだろうが。最後の息子の感情が動いたところも、もう少し高められることができそうだし、好きだったがもったいない作品。

モンスリ公園でMontsouris Park
「好き」5 「作品」4 「脚本」4
https://www.shortshorts.org/2025/program/comp10/montsouris-park/
今年見たもので最高得点2つのうちの1つ。とはいえ、上質な中で「好き」5が点いただけでもある。「作品」「脚本」として5を点けた作品は1本もなかったので、好みの問題という感じか。この作品は、リューベン・オストルンド監督を思わせるような悲喜劇が魅力。前半のワンショット撮影は、やや間延びしているようだが、演出的に観客の興味を引く力があって単調に見えない。脚本としては「公園でのささやかな犯罪」を、この演出で切り取ったことが素晴らしいと感じた加点が大きいが、構成的にはマイナスも多い。後半のカメラマン達のやりとりも、説明的で、やや蛇足になってしまっている。もっと何かできたはず。

心に火をつけろNaked Lights
「好き」5 「作品」4 「脚本」4
https://www.shortshorts.org/2025/program/comp12/naked-lights/
最高得点のもう1作品。こちらは演出が抜群に上手いと感じた。ガラスの使い方なども。脚本は構成のバランスがいいが、もう少し、感情を掘り下げられたら5だった。少しタランティーノ味があるところは好みか。

罠TRAP
「好き」4 「作品」4 「脚本」4
https://www.shortshorts.org/2025/program/comp6/trap/
よくできた韓国スリラー。脚本も技術としてはかなり上手いし、タクシー内会話劇中心でも、細かく演出が出来ている。質はよいが、テーマなどにクリシェ感。ここもやはり、感情が足りない。

ギャンブラーPUNTER
「好き」4 「作品」4 「脚本」3
https://www.shortshorts.org/2025/program/comp8/punter/
トータル11点だが、太郎くんが分析記事を挙げていたので追記。スパイクリー制作は納得の雰囲気。『一切れの肉』と同じ系統、題材としてボクシングと競馬、父が痛いところを見て、子供が頑張るなど似。好みの差という感じ。

ABYSS
「好き」4 「作品」4 「脚本」3
https://www.shortshorts.org/2025/program/horror/abyss/
これも11点だが、視聴した数少ない日本作品の中では唯一、インターナショナル部門と遜色ないと感じられた。ジャンル、暗さで、良い意味でごまかせている。短編向きのネタでもあるし、ストーリーも良い意味でごまかせているが、長編にしたら粗が出るだろう。短編としても、もっと高められるポイントがいくつもあった。

隔たりを乗り越えて|Deutsche Telekom|Bubbles
https://www.shortshorts.org/2025/program/comp25/bubbles/
ブランデッドなので点数はつけていないが、この短さの中での描写やオチのまとまりなど、レベルは高い。

全体感想
今年は毛嫌いせずに日本作品も見ていこうと思ってはいたが、見るに堪えないものが多く、結局、実写では10本ぐらいだった。ジャパン部門の受賞作が『逆さまの天才』になってしまうのも、こういう賛否つけづらい作品(ブランデッドぽいとも言える)しか評価しづらいとも言える。日本にショートフィルム文化が根付いてないことも要因か。ネットに散乱するショート動画の流れから、今後もブレブレになりそう。アジア部門の作品を見ていて、技術的には日本よりレベルの低いものがたくさんあるのに、そっちの方が、とっつきやすく見えるのが何故だろうと感じて、浮かんできたキーワードが「原始的」「primitive」ということ。経済・文化の差もあるだろうが、日本や韓国のレベルの低いものは、変にいろんな作品を見すぎて、結局、ありがちなテーマを「面白い」と感じてしまっていて、結果、クリシェにしかなっていない(ゾンビとかネットとか)。一方で、インドネシアの『ブディと母』のような作品は、途中のコントのようなノリは日本の『すみませんが、助けに行きませんよ!』と変わらないのだが、ブディにある「死んだ母をビーチへ連れていく」という肉体感が、ぎりぎり作品と観客のの繋がりを保ってくれている。この感覚が「原始的」。創作の根本にあるネタや面白いということへの視点が、頭で考えた絵空事からではなく、体で感じた「面白い」から来ているように感じる。ショートフィルムの魅力は、この身体的な面白さとの相性がいい。長編映画のような引き込みではなく、肉体に迫る原始的な面白さ。ブランデッドのような、まとまりの良さは、金がかかっている方が上質になるが、それを越える「5」になるためには、もう一つ、頭が抜けなければならない。セレモニーなどで審査員が、審査に迷ったという話をよくしているが、これを裏を返すなら、どれも似たり寄ったりという言い方もできる。一歩、ズバ抜けた作品があったときは、審査員も「一致して良いと思った」という総評が出てくる。そういう作品とは、どういうものか? 過去には実際、そういったものがあった。良いものをたくさん見て、しっかり見抜き、クリエイターは妥協せずに5点を目指すしかない。

イルカ 2025.7.1

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