※漢字の答えは広告の下にあります。小説内にお題の漢字が出てくるので、よかったら推測しながらお読み下さい。
娘がめずらしく勉強していると思ったら違った。
「受験? わたし、推薦でもう決まったよ?」
「そうなのか? 聞いてないぞ」
「まあ、言ってないからね」
「ちゃんと言えよ」
「だって、さっき結果わかったんだもん」
「なんだと、目出度い(めでたい)じゃないか」
「ん、まあね」
夕御飯の準備ができたから呼んできてくれと言われて上がって来たが、娘の部屋に入ったのは久しぶりである。いや、こんな日曜のサザエさんタイムに俺が家にいるのが珍しいのかもしれない。どうも疲れているのか、今週は夜遊びも控えている。妻は自分の浮気のせいで俺が早く帰ってきていると思っているから、丁度よい、そう思わせておこう。
「ちょっと、部屋の中、ジロジロ見ないでよ」
壁にはアイドルユニットのポスターが貼られていた。
「これ、TWICEとかいうやつだろ」
「パパ、知ってるの?」
「俺を漢字だけだと思うな」
「じゃあ、何人いるか知ってる?」
「そんなの簡単だ……]
俺は言いながらポスターで数えて、
「9人だろ」
「じゃあ、TWICEの意味は?」
「2回だろ」
「うん、だから何で2回がグループ名なの?」
「1回目は歌、2回目はダンスで楽しませるって意味だろ?」
「おおっ! すごい! 何で知ってるの?」
先日、水族館に海星を見に行った大学生に教えてもらった。
「俺だっていろいろ知ってるんだ。さすがにメンバーの名前までは知らないが、日本と韓国と越南の子たちだろ?」
娘が一瞬かたまった。それから吹きだした。
「越南って。やっぱりにわかだったか。ツウィは台湾だよ」
俺は取次筋斗になった。漢字のことではないが、何だか悔しい。
「紅白でるから、パパも一緒に見ようよ?」
「ああ、もうそんな時期か……」
隣の部屋から出てきた息子が通りかかって、
「なに話してんの?」
「大晦日に家族みんなで紅白見ようっていう話」
「どうせ親父、仕事だろ。俺も友達と出かけるし」
「じゃあ、お兄ちゃんいなくてもいいし」
「ふん」
息子は階段をおりていった。
たまには、そんな年越しもいいかもしれない。紅白を見て、除夜の鐘をきいて、年越し蕎麦を食べて、家族が寝てから、逢いにいけばいいだけのことだ……。
今日の漢字:「越南」(ベトナム)
国名は音による当て字です。
比律賓=フィリピン
泰=タイ
新嘉坡=シンガポール。
歴史で馴染みがないからか、ヨーロッパの国よりもアジアの国のが読みづらいですね。越南は新潟の地名にもありそうです。
(緋片イルカ2018/12/3)