SSFF2023 インターナショナルプログラム選(視聴メモ)

ライブアクション部門の中で、アジアを除く世界各国から応募された2099作品より選出された、97の国と地域の37作品。
全作品を視聴した中で、よかったものを記録のためメモしておく。

Cold Water 冷たい海

https://shortshorts.org/2023/program/int/int-2/cold-water/

「好き」5 「作品」3 「脚本」4

料理を作る妻と、庭に着た鳥を撃ち殺す夫。辟易する妻に対して、夫は猟銃をウィンストンと呼び、警察時代の相棒の名前だと言う。堪忍袋の緒が切れた妻は銃を海に捨てにいく。そこで夫はある記憶を思い出す。警官時代にウィンストンとここへ来たことがある。当時は違法だった同性愛の若者を取り締まり、全裸にし、冷たい海に飛び込むようにうながした。彼らは飛び込んだ。そのことを悔やむように涙する夫。「冷たかった」という夫に対して、妻は「冷たいように見えたでしょ」と言い直させる。飛び込んだ二人こそが夫だったのではないかと思わせるやりとり。また、妻は「あなたは40年間、校長先生で警察官だったことはない」と伝える。前半では「施設に入れる」というフリがあったり、日頃の妻の態度からも夫が認知症を患っていることは納得のいく流れ。ビートでいえば「ターンオーバー」であり、オチのようにも処理できるが、それがこの作品の伝えたメッセージではない。演出をみればわかる。夫は教師だったと言われても「いや、俺は警察官だった」と語り、妻も「あなたは警察官だった」と認める。この「警察官」は職業的な意味ではなく「わたしたちも同罪なのだ」と聞こえる。素晴らしいシーンだと思う。短編映画の魅力はこういうところだと思う。短い時間、日常の中にぽっと浮かび上がったものを、しっかりと切りとるセンス。長編では良いシーンがひとつあったぐらいで、その他のマイナスは帳消しにしづらいが、短編では、こういうシーンをひとつ見れれば、それだけで満足感がある。小綺麗にビート通りにまとまっているよりいい(それこそ長編でいい)。翌日、夫は繰り返しのジョークを語る。「2匹の魚が水槽(タンク)を泳いでいる。片方の魚が言った。〝お前の銃を取れ。俺が戦車(タンク)を運転する〟」2匹の魚は、冷たい海に飛び込んだカップルか、この老夫婦か。全体的にうまく効いていない。構成を見れば欠点は多く、おそらくこの短編を見ても「認知症だったってことだよね」ぐらいにしか受け取れない観客も多いだろう。それでも、僕には刺さったし素敵な短編だと思う。今年、見たなかでは一番印象に残った。こういう作品に出会えるからショートショートは楽しい。

Desert Lights 砂漠の星

https://shortshorts.org/2023/program/int/int-4/desert-lights/

「好き」4 「作品」4 「脚本」3

お利口なつくり。子供ゆえ演技も弱いし、ドラマティックの展開にも弱いところがある。干ばつの地域という題材を、ストレートではなく少年達のサッカーという視点から描くというのも、特別、オリジナリティのある工夫がある訳ではない。「ライターズルーム」のメンバーに、これぐらいは普通に書けるようになってもらいたいという思いで選んだ。少年達の「描写」など、説明的なシーンにしないというのはこういうこと。ダーツとか、将来、店をやるとかいったセリフとか。

El Carrito タマレス

https://shortshorts.org/2023/program/int/int-3/el-carrito/

「好き」4 「作品」4 「脚本」4

原題のスペイン語はカートの意味だと思うが、タマレスはあざとくて嫌な邦題。ミニプロット系として短編映画でよくある作りではある。過去に見た同様の作品に較べると、やや弱さもある。トップシーンのカートの車輪なども画作りも丁寧。同様の系統で『Endless Sea 果てしない海』という作品も気にはなったが、こちらは演出にブレがある。派手に仕上げてる分、見苦しい。設定もこちらのが派手でわかりやすいが、短編映画としては『El Carrito タマレス』の方がすぐれていると感じる。

Esperanza エスペランサ

https://shortshorts.org/2023/program/int/int-2/esperanza/

「好き」4 「作品」4 「脚本」3

密入国を題材にした映画はショートショートではよく見る。もっとサスペンスを煽ったものや、生活の苦しさを描いたものも見たことがあるが、それらに較べるとややおとなしい印象。カップルを同性愛者にしたところもストーリー上は機能していないので、あざとさばかり目立つ。だが、主人公であるインド人運転手の良い表情を捉えている。ここに尽きる。演技力よりも画作りの方が優っている。演技がさらに良くて、シーンを作り込むだけで、もっと良くなりそうなのがもったいない。

Hikikomori

https://shortshorts.org/2023/en/program/int/int-3/hikikomori/

「好き」3 「作品」4 「脚本」3

ビジュアルを見ると日本人的には抵抗感が出てしまいがちだが、しっかりとキャラクター、家族、コロナ禍を扱っているのが好印象だった。「ひきこもり」という題材はクリシェに使われがちだが、外国人の視線を通して自国を見直すことには意味があると思う。これも「ライターズルーム」向けに選んだ側面もある作品。

On the Edge リッジ

https://shortshorts.org/2023/program/int/int-8/on-the-edge/

「好き」5 「作品」4 「脚本」3

題材はめずらしくない。ドキュメンタリーなどにも良くある。兄弟(役者も兄弟のよう)の空気感と、舞台である山の風景を(映画的に)よくとらえている。素直に良い映画と感じられる。脚本よりは撮影の妙というかんじ。長編のようにストーリーを追わなくてよい分、短編映画を見るときは映像的な側面が強く出ることも勉強しやすい。

緋片イルカ 2023.7.10

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