脚本添削:『イチョウの木の下で』(★1.75)

※この作品はライターズルームのメンバーによるもので、作者の了承を得た上で掲載しています。無断転載は禁止します。本ページへのリンクは可能です。

『イチョウの木の下で』川尻佳司(年末年始)221231

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本文への添削

※赤字はイルカによる指摘です。

「イチョウの木の下で」

─初稿─
2022/12/31
川尻 佳司

〈人物表〉

下谷 大地(12) 小学6年生 2組
坂上 麟(12) 小学6年生 2組

元宿 日向 (12) 小学6年生
湯津 忠司(53) 小学校教諭 クラブ顧問 あだ名「ゆづじ」

坂上 優子(43) 麟の母
坂上 楓(16) 麟の姉 高校1年生

根本 天音(12) 小学6年生
本文読む前の意見ですが10分にしては登場人物が多い印象。ムダなキャラ、ムダなシーンがある可能性を感じます。優子、楓など、ワンシーンぐらいしか出ていないなら、この作品内ではサブキャラ扱いで名前を付けなくても構いません。名前を付けることで読みづらくなるということを「読み手の気持ち」になって考えてみてください。川尻さんはルールをしっかり守ってくださる反面、細かすぎることがデメリットになっている場合があります。読み手に負担をかけないことは、内容に集中してもらうことに繋がりますので、バランスを大切に。ネーミングするかどうかの目安としては「作中で名前を呼ばれているか」「ワンシーン以上、登場しているか」「ステレオタイプではない、個性やwantを持っているか」などです。

〈ログライン〉

大地が日向と初詣に行って、迷子になるが、無事見つかって戻る。
※川尻さんだけでなくルーム共通で、今後、ログラインの後に「作者の狙い」として「観客をどういう気持ちにしたいか?」を一言足してもらいたいと思います。意図としては、みなさん、ログラインはしっかりと書けるようになってきていますので、次の段階として自分のストーリーの「何が面白いのか?」というこいとを意識していってもらいます。この作品で言えば「迷子になって見つかる話」を見せられたお客さんは何を楽しめばいいのか? ジャンルに近い部分でもあります。迷子になることでドキドキするサスペンスなのか、迷子になる過程で学びや発見から感動があるのか、などログラインで伝わらない部分を補足してください。観客の「人生の貴重な時間をいただいて、物語を提供する」ということを、作者の立場で考えていきましょう。仕事として物語を書くということは「提供するエンタメ性」の対価をもらうことです。自分が書きたい話を好きに書くのは仕事ではなく趣味です。初めのうちは作品が「作者の狙い」通りになっていなくもて構いません。むしろ、それが出来れば立派なプロです。面白いものを提供しようとして、観客が面白がってくれるなら、充分、仕事になりますよね?。まずは自覚することから、「物語を通して価値を提供する意識」をもつように仕向けていきます。感覚としては「自分の売りたい物語」=「商品」の、どこが面白いのかを売り込むようなかんじでもあります。

〈本文〉

柳原神社 境内 (昼)
宮司たち5、6人が社殿に松飾りやまゆ玉を取り付けている。
境内で、湯津忠司(53)を中心に生徒10名程が集まってイチョウの落ち葉を掃除している。
その生徒の中に、坂上麟(12)、下谷大地(12)
脱字かもしれませんが、文章終わりは句読点をつけましょう。ここまでのト書き、とても良い雰囲気です。季節感、雰囲気が良く出ています。映画をたくさん観ながら、どういうショットや「音」が良いかも練習していってください。もっとイメージが沸く映像的なト書きの書き方があると思います。初見で忠司が誰なのか分かりづらい。宮司かと思う。教師らしい描写を加えるか、ここでは「教師の」とか「担任の」とかつけてしまっても良い。読み手は、前のページに戻って人物表といちいち読み合わせません。「人物表を見ればわかる」といった理屈ではなく、読み手の気持ちに合わせてで書いてあげてください。サービス業のように。
次のシーンですが、掃除をしている動作が終わったト書きがないと、少し違和感。「中司、手を止めて、」とかで充分です。もっと良い描写がありますが、とりあえず。

忠司 「じゃあ、これで今年のクラブ活動は終わりだ、みんな冬休みは羽目を外しすぎて、生活リズムを崩さないようにな、でまた、元気に来年みんなで集まれるように、よし、学校戻るぞ」
生徒たち、出口に向かって移動を始める。
掃除の道具はもったままで良いか? 宮司さんお礼とか会話はないのか?
大地 「湯津先生、みんなで一緒に初詣行こうぜ?」
ここ、あだ名でなくてよいか?
忠司 「ん? みんなで初詣か、おお、いいぞ」
「ん?」と入れたい気持ちはわかりますが、セリフに入れると「声に出して言う演技になりかねません」。脚本ではカットして演技に任せてよいところ。テンポが悪くなります。大地が直前で「みんなで一緒に」と言った直後に「みんなで初詣」は、音として少し気になる。ちゃんと声に出していますか? 一人で書いているときでも必ずセリフを音読してください。
大地 「除夜の鐘から行こうぜ」
忠司 「夜からか、あ、でもまず相談だな、校長先生に通さないと」
麟  「大地、なんだよ急に初詣って」
生徒A「麟、アレだよ」
生徒A、歩いている元宿日向(12)を指さす。
麟  「(察して)ああ」
大地 「おい、俺はな卒業を前に最後の思い出として初詣を提案してんの、やめてくんないかな」
生徒A「それはそれは失礼しました」
ここは生徒Aを登場させずに処理してほしい。麟だけで可能です。「ムダなシーンは良いシーンを奪うことになる」という話をしましたが、セリフレベルでも同様に「モブキャラのセリフはメインキャラのセリフを奪うことになる」のです。現場での役者の格とか想像してみてください。名前のあるキャストより「生徒A」がセリフが多いことになってしまいます。こういったシーン作りが人物表で書いた「登場人物の多さ」と無関係ではないと感じます。また、キャラクター的に、小6にもなって「好きな女の子目当てで初詣いきたいのに、わざわざ教師を誘うか?」という違和感があります。身近に小6がいますか? 家庭によりますが、スマホをもってライン交換しているような男女がいっぱいます。大地がスマホを持てないような設定であるなら、それが見え隠れるするようなセリフにしてください。僕の最近の口グセになりつつありますが「バックストーリー」が甘いです。まず自分の身近な世界で練習するか、徹底的に調べるか想像しましょう。

学校から帰り道・住宅街(昼)
前のシーンの柱とルールが違います。中黒で繋ぐのか、全角スペースで繋ぐのか統一してください。明確な意図がないなら基本通り、中黒にしてください。絶対ルールではないですが、どうでもいいことで読み手の集中を削ぐという損をしてしまいます。書いている時に意識できなければ、書き終わった後に、目を通して直す作業をするだけのことです。→参考記事:作者の態度と作品への影響(文章#44) また、柱は階層の高いところから繋いでいくイメージです。「学校の中の教室」とか「田中家の中のリビング」というように、この「の中の」にあたるのが中黒と思ってください。住宅街と帰り道には階層関係がない(というかどっちでもいい)ので、どっちかだけで良いかと思います。どちらかを柱にして、どちらかはト書きに入れれば済みます。
麟と大地が並んで歩く。
大地 「うち両親とも大晦日も働いてるからさ、夜から初詣って行ったことねえんだよ、だから一回行ってみてえんだよなあ、わかるだろ」
麟  「ああ、そうか」
前の「柳原神社」のシーンの延長で麟を描いてください。テンポ悪い。麟の性格や考えが見えるリアクションもト書きで欲しいところ。以下同じ。「え?」は上の「ん?」と同じ。いちいち、リアクションで会話の流れを止めない。本当に必要か、自分で声に出して読むこと(逆に止めるべきところは流れないように、しっかりリアクションさせること)
大地 「なあ麟、天音も誘ってくれよ」
麟  「え?」
大地 「女子が少ないとバランス悪いからさ」
麟  「おまえやっぱ……」
大地、前方に歩いている日向に駆け寄る。
ショット次第では全く問題ないが、一度、前方に日向が歩いているところを映像として見せるト書きが欲しいところ。過去の川尻さんの作品を踏まえると「雑なト書きが出た」という印象を受ける。ちゃんと絵コンテが書けるような画が浮かんで書いてますか?
大地 「日向、お前もゆづじと初詣行くよな」
前の「柳原神社」のシーンで「ゆづじ」と呼ばせていないので、観客には「誰?」という感じ。「人物表に書いてある」は通用しない。観客は人物表など見ない。
日向 「えっ……」
大地 「大丈夫だよ、女子は天音も来るからさ」
大地、麟に目配せする。
麟、慌ててうなずく。
大地 「その、俺さ、前から夜の初詣って行ってみたかったんだよ、なんかさワクワクしねえか、大晦日ってさ普段と違うだろ、みんな静まり返ってよ」
「夜の初詣行ってみたかった」を大地というキャラクターの心情としては、改めて日向に話すことは正当だと思うが、視聴者的には、その情報は数秒前に聞いているのでくどく感じる。そもそも、最初から3人で歩いていても問題のないシーン。ムダを省く工夫を。
日向 「う、うん」
大地 「な、それを最後みんなで体験しときたいなって、あんま興味なかったか?」
日向 「(首を横に振って)ううん」
大地 「行くだろ?」
日向 「うん」
脚本として「うん」だけで心情を伝えるのはやや苦しい。「う、うん」とかも実際に声をだすと、あざといので使いところ選ぶ。作者が思っているほどには伝わらない。ト書きをしっかりと。

小学校 6年2組(昼)
昼から昼のシーンのつなぎは、混乱しやすい。編集でもフォローしてくれるところではあるが、脚本でも工夫してください。
教室の後方で麟と大地が話す。
「話す」ではなく「話している」
麟  「初詣、天音行けないって」
大地 「えっ」
麟  「あいつ家族で過ごすんだってよ」
表現が大人くさい。天音が「そういう表現をするキャラ」であるセットアップもないので作者の感性が漏れている印象。小学生視点では違う言い方になるのでは?
大地 「まじかあ、あてにしてたんだけどなあ、女子はさくらと智美も誘ったんだけど、二人ともだめだったから」
麟  「どうする、女子は日向だけだぞ」
大地 「うーん」
麟  「大地、今回は諦めようぜ」
大地 「諦める、おかしいだろ、まるで目的が女子と行くことみたいな」
麟  「半分そうだろ」

小学校 廊下(昼)
麟と大地、日向が話す。
麟  「えっ、大丈夫なのか」
日向 「うん」
大地、笑顔がこぼれる。
麟  「女子、日向一人になるけど」
日向 「私、大丈夫だよ」
麟、大地の顔を見る。
ここと前の2シーン、天音が来れないけど日向は来てくれるという状況を説明するだけのシーンで面白味がなく説明的。会話ばかりで動きもない。カットもしくは、工夫が欲しい。

日向の家・外観(夜)
4階建てくらい公営住宅。
麟と大地、日向を玄関前で待っている。
日向と母親(38)、弟(10)が一緒に玄関から出てくる。
日向の母「大地君、日向のことよろしくね」
大地 「えっ、あっはい」
説明シーンの上、母親、弟も不要。次の合流シーンから始めても何も問題ないのでは? ちなみにこの長さの脚本なら、日向母親、弟も人物表にしっかりと入れておいて欲しいところ(※今度、人物表にいれるいれない、名前つけるつけない、年齢どうするかの感覚を改めて説明します)

北千住駅・外観(夜)
駅前に初詣客の沢山の人だかり。
忠司と生徒たち3人くらい、待っている。
麟と大地、日向が合流する。
大地 「うわーすげえ人だなあ」
忠司 「もうコロナも大分緩和してるしなあ、お前たち、しっかり先生について、はぐれるなよ」
ここまでの流れを考えると、もはや教師と行く意味が感じられず、むしろ邪魔に見える。生徒たち3人も邪魔。いるだけで、セリフや描写も増える=メインキャラの時間が減る。ストーリーとしても大地が言い出しっぺなのに、謎の生徒がいるところにも違和感。もともと、学校行事として企画されていたならわかるが……

電車・走行外観(夜)
電車走行。
書き方が雑。文体が変わっている。観客にムダな違和感を持たせる。これまでのシーンで電車=遠くへ行く印象がないので違和感。遠いなら遠いところへ行くという距離感をきちんとセットアップしておくべき。天音が行けないという話にも関係する。

電車・走行車内(夜)
沢山の乗客。
忠司ら一行、座席に座り、外の景色を見たり、会話したりしている。
主人公は忠司ですか? 「大地ら一行」と書いてください。

浅草寺・雷門(夜)
大勢の行きかう初詣客。
忠司ら一行、本堂に向かって歩いていく。
浅草寺の大晦日、撮影大変ですね笑 or 初詣の画作りは予算的に難しいんだろうな笑 脚本で書く分には問題ありませんが、直しが入りそうですね笑

浅草寺・本堂(夜)
除夜の鐘が鳴り響く。
忠司ら一行、参拝する。
浅草寺の初詣を「参拝する」というト書きの一言で片付けるのは雑です。映像には参拝している一行しか映らないのでしょうか? 読み手の想像力をかき立ててください。

浅草寺・宝蔵門(夜)
忠司と日向、生徒2人くらい、生徒Aを門前で待っている。
生徒Aを待っているということをどうやって映像だけで伝えるのでしょうか?(=無理ですよね?)「誰かを探している」は首をキョロキョロしている動作で伝えられますが、誰を探しているかまではセリフなどにしなければ、伝わりません。また「待っている」というト書きは「立っている」とほとんど区別がつきません。次の大地のセリフで「待っていたのだ」とようやく繋がりますが、その直前の映像がチョンと立っているだけに見えるのはサスペンスとしてマイナスなのが想像できますか? 前シーンの参拝からの、急展開なので映像が映った瞬間から「何かが起きた!」感じで入るように演出してください。
大地と麟、忠司ら一行の元へ歩いてくる。
大地 「ゆづじ、だめだ、全然見当たらない」
忠司 「わかった、今、西側のトイレも見てきたから、あとは東と北側だな、手分けしてもう一度見に行こう」
日向 「東側見に行く」
大地 「よし、俺たちはそっちにいこう」
麟  「俺らはもう一回仲見世に行くよ」

浅草寺・東側(夜)
大地、人だかりの中をかき分けて前に進む。
大地 「さっきより人が多いな、日向離れるなよ」
大地、振り向く、
大地 「あれ、日向、日向」

浅草寺・仲見世(夜)
麟と生徒ら2名くらい、人形焼き屋前に生徒Aを見つける。
麟 「こんなところにいたのか」
生徒A「おお、どうしても人形焼き買いたくて」
麟  「勝手に離れるなよ、ったく、食い意地張ってんだから」
誰が迷子でどういう状況なのか、初見で混乱しました。読み返させるような書き方をすることが、読み手への負担になります。「日向を呼んでいるシーン」のあとに、生徒Aを見つけて「ん??」となりました。全体から見て、生徒Aが(名前もない人物が!)迷子になるツイストは必要ですか? 面白い展開ですか? これによって、観客の気持ちが盛り上がりますか? ムダなシーンが入るということは……以下略。

浅草寺・東側(夜)
大地、大勢の参拝客の中から日向を探している。
大地、人の列から外れ、不意にイチョウを見ると、イチョウの下に日向を発見する。
夜中ですよね? 灯りの具合とかは? 雰囲気を描写して、読み手の想像力を!
大地 「日向、大丈夫か」
日向 「(涙を浮かべて)うん」
大地 「なあ、不思議なんだ、日向にあわせてくれって思ってたら、イチョウに呼ばれてる気がして、見たら日向がいたんだ」
日向 「えっ、私も大地くんどこって思ってたら、イチョウの下にいれば会えるって思ったの」
大地 「ほんとか? 神様っているのかな?」
日向 「うん」
大地 「さっき、何お願いしたか聞いてもいい?」
日向 「えっ? 大地くんから言ってよ」
大地 「はっ? ああそうか、いややっぱいいや」
日向 「私はもっと強くなりたいってお願いした」
大地 「強く?」
日向 「うん、もっと強くなれば家族のことを守れるから」
大地 「へえ、家族思いなんだな」
日向 「うち、お父さんがいないから」
大地 「そうか」
日向 「はい、私言ったよ、次」
大地 「え、俺はいいよ」
日向 「ずるっ」
大地 「俺は世界平和だよ、戦争がなくなるように」
日向 「ほんとに?」
大地 「ほんとだよ、その、大きな意味でな」
朝日が昇ってきて、2人を照らしはじめる。
いま何時? 何時間探していた? 朝日が昇るなら柱も(早朝)では? 教師たち何してた? いろんな疑問と違和感が残る。
麟  「おーい二人ともー、見つかったぞー」
麟、大地と日向に手を振っている。
大地と日向、お互いを見て笑顔になり、麟らの元へ歩いていく。
日の光が浅草寺を照らしていく。

〈おわり〉

イルカのコメント

年末でお忙しいところ、〆切に間に合わせて、頑張って書いてくださったのかなという印象(〆切厳守はとても良いことです)。

文章に疲れが見えますが、回を重ねるごとに書くことには慣れてきている印象があります。

いくつかの指摘で書いたとおり、川尻さんのクセはキャラクターやシーンを増やすことで、説明的に話を進めようとしてしまうところです。

「逃げ」になってしまっているので、まずは登場人物、シーンを減らすことを意識すると良いと思います。

何からの「逃げ」になっているかというと「ドラマ」からの逃げです。

ログラインでは「大地が日向と初詣に行って、迷子になるが、無事見つかって戻る。」とありました。(ちなみに「迷子になったのは日向」なので、ログラインの文章はおかしいですよね?)

分析能力の高い川尻さんですから、その目を自分の作品にも向けてみてください。

PP1はどこですか? 迷子になるところがPP1になっていますか?

このストーリーを本文からログラインにするなら「迷子になる話」ではなく「好きな子を初詣に誘う話」ではないでしょうか?(※ログラインと本文は、どちらから書いてもいいが、最終的に内容が一致するようにして下さいとお伝え済みです)

ラストを見る限り、ジャンルは「ラブストーリー」のようです。

主人公は大地でインターナルなwantは「日向と想い出を作りたい」などでしょうか(インターナルなwantは明確には言語化しづらいときもあるので抽象的でも構いません)。

これに対してイクスターナルなwantをしっかり設定してください。

たとえば「日向と大晦日に初詣へ行く」であれば、PP1から始まる「誘い」~MPで「初詣で参拝」ぐらいで、10分なら充分です(無理にアクト3つけなくても構いません)。

あるいは、川尻さんのログライン通り、「迷子になった日向を探す」をイクスターナルなwantとするのであれば、当然、「日向が迷子になる」がPP1になるはずです。

いずれにせよ、10分という長さでしっかりと描いて欲しいのは、大地と日向の動き(とくに心の動き!)です。

それ以外のキャラもシーンもノイズです。

川尻さんは、構成への意識が強いがために、お話をまとめることにばかり意識がいってしまっている印象があります。

大切なのはドラマです。ドラマが魅力的な構成などブレても、観客にインパクトが残ります。

本来は、そのインパクトを最大限に強めるのが構成の役割なので、ドラマより構成を優先することは本末転倒です。

「ドラマからの逃げ」とは構成論からいえばメインストーリーがブレまくっているということでもあります。

メインストーリーを掘り下げるときに、大切なのが、冒頭で指示した「このお話の何が面白いのか?」です。

このお話は誰にインパクトがありますか?

小学生向けですか?

リアルな小学生は、この物語でドキドキ・ワクワクして、見るでしょうか?

大人に向けて書いていますか?

だいの大人が「小学生が初詣にいって迷子になっただけの話」で何を楽しめばいいんでしょう?

どちらにもインパクトを与えきれていないと感じます。

この物語に対して観客はいくら払うのか?

現代人の時間は貴重です。無料でも時間を返せと怒られかねません。

プロの作家は「あなたがお金と時間を使うに値する感動を提供します」というシェフのようなものだと考えてください。

小学生のラブストーリーという点に、そもそも企画としての弱さを感じはしますが、それでも「ラブストーリーとして」という視点で見ていったとき、小学生6年生の、この時間にしかない「子供時代の終わり」のような気持ちを描き切れていれば、子供にも大人にも魅力的な物語にはもっていけます。

それぐらいの覚悟とメッセージ性を込めてください。

今後も、川尻さんに対しては、内容としてのレベルを上げるための厳しめの指摘が増えていくと思いますが、小言を言われながらも締め切りを守り続けていけば、必ず上達しますので、焦らなくて大丈夫です。

引き続き、今年もともに成長していきましょう。

まとめと次回へ
・登場人物を絞る。減らす=メインストーリー、メインキャラだけ描く。
・キレイにまとめようとしない=ドラマを描く
・ストーリーの面白味が何か?を考える(ログラインの後に提示してください)

緋片イルカ 2023.1.7

他の方の感想

・設定に少し無理があるかなと思いました。小学生の保護者同伴以外での深夜外出(初詣)は青少年の条約に引っかかるのでは?と考えてしまいました。
また、地元でなくワザワザ電車に乗っていくのも難しいかな…と。小学生を電車に乗せていくのは学校の行事でもない限り、許可が出なさそうです。(ドラマなので、有りなんでしょうか?そのあたりが分かりませんが…)
・「ゆづじ」というあだ名は面白いと思います。ただ、セリフとして読むと言い難いので、伝わりにくいかと感じました。
・イチョウの描写は綺麗で、想像出来たので良かったです。

・以前より柱が多く、映像で想像しやすかった。
・パッパと切り替わる中で、見せたいシーンは柱14からかな?と思える分量で、どのシーンを大切にしたいのかわかりやすかった。参考にしたい。
・柱14、(涙を浮かべて)と指示があるのでそこからは顔のアップで行くのかな?と思ったんですが、大事な部分なのに少しのっぺりとした印象に思えました。もう少し動き(ト書)があったらよりいいかなと。日向が座っていたのか立っていたのか、大地は発見した時に駆け寄ったのか。大地が「俺はいいよ」って言った時の動きはあるのかとかで、2人の個性が出せる気がします。
・今のご時世的に保護者問題や学校の許可の面で疑問がありました。コロナ禍、しかも緩和しているところにワクチンが進んでない未成年の連れ出しは厳しそうですよね。昔の話にしても人混みに対する気持ち(煩わしい、面倒、はぐれる不安)は変化ないと思うので、コロナは抜いてもいいかもですね。

雨森 米俵 川尻 イルカ 平均
好き 3 3 3 2 2.75
脚本 2 2 2 1 1.75

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