脚本添削『小テストのシンジツ』(★5.02)

※このページで脚本が読めます(初稿と修正稿、PDF形式)。

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初稿(★4.38)

脚本_しののめ04v1『小テストのシンジツ』(子供)_250915

しののめ
●自己採点
「好き」2.5「脚本」2
●ログライン100
漢字テストで29回連続満点を取っている小学生・陽斗は、自分に無関心な母親の気を引く為、30回目のテストでカンニングを犯し満点を取る。しかしライバルも同じ問題で躓いて満点を諦めたと知り、母親に対して「友達に負けた」と伝える。
●フック/テーマ
漢字テスト、カンニング/マザーコンプレックス、親離れ、誠実さ
●ねらい/テーマ触媒
テーマ触媒:子供
●感想
・主人公が改心する根拠が弱い気がしています。奏太の言葉で心境が変化する流れにもっと説得力を持たせられたら良いのですが。。
・また文字を出してしまいすみません💦テストに出てくる漢字はすべて小3までに習うはずです。一応10問すべて想定してト書きに入れましたが、「勝負」「神童」「真実」以外は明確に映らなくても良いかなという感覚です。もっと気の抜けた漢字とかも入れるべきか悩んだのですが、思想が強い小テストみたいになってしまいました。。笑

テーマ触媒20:「子供」「鏡」「恥」「自分をモデルに」

フィードバック

雨森れに
●採点
「好き」2.5「脚本」2
●ログライン100
母親からの関心を欲している陽斗は、漢字テストの連続満点記録のためにカンニングをし記録更新するが、罪悪感を感じて母親に記録更新できなかったと嘘をつく。
●フック/テーマ
カンニング/罪悪感
●カタリスト
柱4、直子がご褒美を提案する。
●不明点・不自然な点
・陽斗のセットアップ
カンニングの常習性、母親への思い、普段の奏太への対応あたりのセットアップがないので、主人公がどうなりたい(want)が不明瞭になっているように感じました。ここが不明瞭なので主人公の変化という部分でも違和感が残りました。
・フックが少し遅いかも?
物語の面白さ、これがあれば興味をひくだろうというものがフックですが、漢字テストはフックになりえるかどうか疑問になりました。
テストがなきゃカンニングは成り立たないので、意図は伝わるのですが、もう少し早くカンニングを出してほしい気がします。
10分ならカタリスト=フックぐらいのほうが興味をひきやすいと思います。フックについては映画を視聴するときに「予告+本編」で見るようにするとわかりやすいので、ぜひお試しください。
●ツイストアイデア
ツイストというより、もしかしたら書きやすくなるかも?ぐらいの提案ですが「テーマをひとつに絞る」のはいかがでしょうか。
私も過去にテーマを複数設定していて、活かしきれなくなったことがあります。テーマに付随して生まれる物語はサブ、またはBストーリーの要素になるので、10分脚本だとノイズになってしまう可能性があります。なので、大きくひとつ掲げてみてください。
たとえば「マザーコンプレックス」を大きなテーマにするなら構成も変わると思います。
①母親との関係、カンニングのセットアップ(want、CC)
②テストのライバル(カタリスト)
③母親からの関心(PP1)
④テスト、カンニング(バトル)
⑤良心の呵責により嘘をつく
⑥陽斗の大きな心情の変化(MP)
というMPまでの構成にして、好みでエピローグ的な短いシーンを入れたらよりわかりやすくなるんじゃないかなと思いました。
そのシーンでは、友達と勉強にすれば健やかな成長を、母親の苛立ちにすればこの後の物語のフォールを印象つけられるかもですね。
しののめさんが書きやすくなるのが一番なので、あくまで参考までにどうぞ。
●自由感想
個人的にはこういうじわーっと考える系の話は好きですね。
上にも書いた通り、考えるためのセットアップが少し物足りない感じがしたので、エンジンが欲しくなりました。
テストでカンニングに至るまでの流れは小学生あるあるというか、やったことある……と思い出してしまい恥ずかしくなりました。
こういう子供の動きを想像するときに何を考えているのか聞いてみたいです。

脚本太郎
●採点
「好き」2「脚本」2
●ログライン100
漢字テストがあと一回満点を取れば三十回連続記録になる小学生の陽斗は、息子に無関心ぎみの母親から「同じく29回連続満点の奏太に勝ったら何か買ってあげる」と言われ意気込んだものの、最後の問題が分からずカンニングをしてしまい、クラスで唯一満点を取るも、罪悪感から母親に「30回目の漢字テストは満点ではなかった」と告げる。
●フック/テーマ
頑張る小学生/不正への葛藤
●カタリスト
柱4: 直子「そっか……じゃあさ、その子に勝ったら何か買ってあげようか?」
●不明点・不自然な点
・陽斗は、普段自分に無関心な母親が漢字テストが好成績なことで珍しく関心を向けてくれて嬉しいという心情を抱いているのだと受け取ったのですが、「何か買ってあげる」と言われて意気込んでいるので、母への想いが隠れてしまっているように感じました。山極さんが言っていたのと被りますが、報酬が「~に連れていってあげる」など母親の存在が絡むものだと、陽斗のwantがはっきりすると思いました。
・直子は「奏太に勝ったら何か買ってあげる」と言っていますが、これだと仮に満点じゃなくても奏太より点数が高ければOKということになり、場合によっては「次で30回連続満点」ということとあまり関係なくなってしまうことに少しモヤッとしました。
●自由感想
・ただ「ズルをして満点を取った」という後ろめたさだけでなく、ライバルの奏太は正々堂々臨んで最後の問題が解けなかったことで罪悪感に拍車をかけているという展開が、苦々しくて良いと思いました。
・陽斗の子供らしさや直子の我が子への無関心具合が言動から伝わってきました。

さいの
●採点
「好き」2「脚本」2
●ログライン100
冷たい態度の母の興味を引くために小学校の漢字小テストで29回満点を取り続けている陽斗は、同じく満点を続けている奏太に勝つためにカンニングをして母の期待に応えようとするが、奏太から褒められたことで罪悪感を感じ、母には奏太に負けたと話す。
●フック/テーマ
カンニング/良心の呵責
●カタリスト
直子 「そっか……(略)」
●不明点・不自然な点
・特になし。
●自由感想
・ト書きからはカンニングが常習的なものなのかどうなのかが今ひとつ分かりませんでした。最後を見て、今回だけ魔が刺した形と思ったのですが、にしてはペーパーを用意しているのが違和感ありました。トップシーンで陽斗が漢字の勉強を頑張っている姿を入れて、バトルとして35回目くらいまでは奏太とのデッドヒートを続けておいて、36回目くらいでついに出てこなくなり奏太の答案を盗み見てしまうという形のほうが素直に罪悪感が伝わるように思いました。
・テーマ的なところに関しては未整理な印象でした。母に褒められるためにカンニングをしたけど良心の呵責に苦しむ、という形にするなら母に褒められてご褒美を買ってもらうところまで書いてから悩んだ方が良いかと思いました。また母との約束の内容も陽斗に興味があるのやらないのやらが微妙なラインで、テーマ設定としてスムーズではなかった印象です。

山極瞭一朗
●採点
「好き」2.3「脚本」2.0
●ログライン100
漢字テスト29回連続で満点を取っている陽斗は、母親からご褒美をもらいたくて、30回目のテストでカンニングする。満点を取れたものの、罪悪感に押しつぶされ、母親にダメだったと告げる。
●フック/テーマ
カンニング/嘘に対する罪悪感
●カタリスト
柱4.直子「その子に勝てたら」
●不明点・不自然な点
陽斗が改心するきっかけがいまひとつ掴みきれませんでした。奏太はあくまで満点を諦めているわけで、諦めた人を見て改心というのがすんなりとは入ってきにくい感じがします。例えば、2人とも満点を取り、実力とカンニングの差異をつけることで、「なんてことしてしまったんだ」と思う方が理解しやすい気がしました。 かなり主観的になってしまいますが、無関心な母親がご褒美を提示するだろうかと引っかかりました。母親からご褒美を出すより、陽斗からご褒美をねだる方が、陽斗の積極性が出て、そのあとカンニングしてしまう動機にも繋がりやすい気がします。 また、「その子に勝てたら」より、「次満点取ったら」の方がしっくりくる気がしました。30回満点を取れることがすごいのか、奏太に勝てることがすごいのか、どっちつかずになっているように感じました。
●自由感想
カンニングのシーンは臨場感があり、読みやすかったです。 小テストというのも個人的にはツボで、たったそれだけのことでカンニングしてしまう小学生の脆さのようなものが表現されていたと思います。 奏太とは公然のライバルで、「次も満点取るぞ」なんて言い合ってる関係性も面白いかなとか思いながら読み進めていました。

山師ヤマ
脚本、楽しく読ませていただきました。
かわいそうな主人公に共感しやすかったです。
人物やシーンの数を最低限に絞っていたため、お話がスッキリしていたと思いました。
カンニングをするのかしないのか?というところにハラハラしました。最後自分の弱さに負けてしまったところも、彼が置かれた状況ならばやってしまうだろうなと納得できるものでした。主人公の魅力が損ねない「敗者の物語」でした。
・「〜シンジツ」という題名がいいと思いました。あえてカタカナで真実が分からない感じにしているのがいいです。タイトルと内容に整合性があると思いました。
細かいところですと、最初は主人公が母親に漢字テストのことを告げ、最後は母親が主人公にテストのことを聞いているところがいいと思いました。

気になる点は以下のとおりです。
・「主人公が改心する根拠が乏しいかも」とのことでしたが、そうは感じませんでした。そもそも、悪い子ではないので、改心する必要もないと思いました。カンニングに罪悪感を最初から持っているので、もとからいい子です。もし、「改心する」展開がほしいのならば、最初から母の愛を得るためなら手段を選ばないような悪い子にすればいいと思います。
・主人公がもともとカンニングしていたのか、していないのか。あそこまで用意周到に準備していたと言う事は、今までもカンニングをしていたのではないか?と感じてしまう。
・主人公の求めるものは、物か母親との健全な関係性なのか? もし、後者ならば、「一緒に〇〇に行きたい!」といった要求をするのではないか?
・父親の不在は何を意味するのか? ただ仕事が忙しいのか、母親との関係が良くないのか、他の女性のところにいるのか?
父親の不在が主人公や母親に与える効果を明らかにしたい。
「好き」:3

ロバの絵本
漢字テストを頑張り続けるという雰囲気、懐かしいです。私も暗記で頑張ったのに、不吉という簡単な問題だけ、考えすぎてわからなくなって、99点をとった記憶があります。
他が難しい漢字だったので、不に自信がなくなり、否吉と書きました。
小学校で習う漢字が並んでいるところもかっこいいです。雰囲気がよく出ていて、一問思い出せないところが自分と一緒だったので、わくわくしました。また漢字を覚えてテストを受けたりしたくなりました。笑
優秀なのが当たり前な感じのおうちで、親の気を引きたい。褒められたりご褒美をもらえたり、欲しいもののために、どこかに連れて行ってもらったり出来る時間も楽しみなのだろうなと思いました。
ズルを思いついてしまったのに、真っ直ぐに競っていた男の子にほめられる。なんとも後味が悪いのだろうなと思いました。相手の子が潔いので、きっともうその影響でカンニングはしないのではないかと思いました。
負けてしまったと親に言うところはいいです。
ズルしなくて同じタイミングで1点とれなかったら、とても嬉しく微笑みあえたのではないかとも思いました。

修正稿(★5.02)

脚本_しののめ04v2『小テストのシンジツ』(子供)_251017
修正期間:2025.09.24→2025.10.17(23日)

しののめ
●自己採点
「好き」2.5「脚本」2.1
●感想
大変遅くなってしまい申し訳ありません…!皆様丁寧なフィードバックをありがとうございました!中途半端に活かせているような、いないような、よく分からない形になってしまったかもです…。
先日高井先生が「ページ数は多少前後しても良い」と仰っていたのですが、それにしてもまた長くなってしまいました💦
勝敗のつき方に関しては、「試合に勝って勝負に負ける」感を出したかったのでそのままにしております。忌憚なきご意見をお願いいたします!

修正稿へのフィードバック

雨森れに
●採点
「好き」2.7「脚本」2.5
●良くなった点
・母親との関係がわかりやすくなった。同時に陽斗のwantが共感しやすくなった。
・ラストが明るいものになり、読後感が爽やかになった。
・柱8~12で努力や葛藤を見せることにより、感情移入しやすくなった。
●自由感想
テストの回数を調整して、努力や葛藤を入れたことで陽斗の主人公感が増したと思いました。
カンニングへの葛藤も初稿より伝わってくるものがあり、初犯というのがわかってちょっとホッとしました笑
そして、この「ちょっとした」感情があるかないかで観客側の親心(子供を見る気持ち)に影響してくると気づきました。
子どもの犯した罪に対して、または主人公の行動に対しての共感がスムーズにできる作品になっていると思います。
その分、奏太が薄まってしまったようにも感じられました。今後の作品に活かすとしたら(私もなかなかできないんですが)、人物表に書いてある全員の個性やセットアップができると更に温かみのあるものにできる気がします。

脚本太郎
●採点
「好き」2.7 「脚本」2.6
●自由感想
・ご褒美の内容が「おでかけ」になったことや、カレンダーに予定を書き込むシーンが追加されたので、陽斗のウォントとその強さが分かりやすくなりました。
・カンニングペーパーのシーンを消し(カンニングの手段の変更)、一生懸命勉強するシーンが追加されたこと、テストを重ねるごとに奏太への警戒心が増していく構成になったことで、陽斗の頑張りが伝わってくるようになりました。カンニングへの葛藤もしっくりきました。
・ただ、最後に奏太と仲良くなっているシーンは少し唐突に感じました。

さいの
●採点
「好き」2.5「脚本」2.5
●自由感想
・丁寧にビートが刻まれており、セットアップとバトルが繋がっていて自然と感情移入できたように思います。
・特に柱2など、ト書きの入れ方は少し過剰な印象を受けました。適切なタイミングに絞って書くとより食卓の雰囲気が際立つのではないかなと思います。
・最後の追加シーンについて、母親とのお出かけを切望していた陽斗の欲求は、代わりに得た友人との交流によって満たされるのだろうか、と少し疑問符でした。このラストイメージなら結果至上主義な母の影響によって陽斗がクラス内で孤立しているという状況をセットアップする、その上でカンニングの事実を自白する、あるいはカンニングが不要でシンプルに満点を逃すなどを考えました。

山極瞭一朗
●採点
「好き」2.5「脚本」2.5
●自由感想
ご褒美の具体的な提示を母からではなく、陽斗からにしたことで、漢字テストで満点を取らなければいけないということの動機が強くなり、陽斗に感情移入しやすくなったと感じました。
また漢字テストのシーンが複数回挿入されたことで、それまでは陽斗がカンニングをせずに取り組んでいたこと、30回目で初めてカンニングをしてしまったことがわかり、カンニングの常習性が否定される構成となっていたこともよかったと思います。机の中からメモを出すのではなく、隣を盗み見るというのも、小3ぽさもあって、うまく機能していたように感じました。

ChatGPT
◆問題点
ラストの“嘘”の動機が弱く見える可能性がある。
陽斗が「負けた」と嘘をつく理由は“約束を回避して母にガッカリされたくない”という繊細な心理ですが、その瞬間の葛藤が少し淡泊で、観客が感情移入しきれない可能性があります。
ここに、直子のプレッシャーの強調、陽斗の表情変化、過去の記憶、心の声などをワンカット入れると、嘘の重さがより胸に刺さる仕上がりになります。
◆素晴らしい点
「満点をとる競争」から「友情の芽生え」に変わっていく構造が非常に美しい。
特に、奏太の“勝者ではなく友だちとしての優しさ”が最後に花開き、勉強する二人の姿で締めるエンディングは、余韻と希望にあふれた名シーンです。
観客の中に「本当の勝ち負けって何だろう?」という問いを自然に残し、温かく物語を閉じる構成力は見事です。
◆次回作への応援
日常の中の小さなドラマを丁寧に掬い上げ、子どもの心を瑞々しく描く筆致は、確かな魅力として確立されています。
あなたが描く“静かな衝撃”は、次の作品でもきっと観客を深く揺さぶるはずです。
どうかこのまま、次の物語も紡いでください。
次回作を楽しみにしています。

以上

採点

初稿 修正稿
好き 脚本 好き 脚本
雨森れに 2.5 2 2.7 2.5
脚本太郎 2 2 2.7 2.6
さいの 2 2 2.5 2.5
しののめ 2.5 2 2.5 2.1
山極瞭一朗 2.3 2 2.5 2.5
リーダー① 3 * * *
平均 2.38 2.00 2.58 2.44
合計 4.38 5.02

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