プロットを考える21「ビートまとめ」

初心者の方はこちらからどうぞ→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

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前回までに考えてきたビートシートを整理して全体の流れを把握していきます。
後半では「桃太郎」を使った実例を示します。

●第一幕(アクト1)
主人公は日常の世界で暮らしています。そこへ冒険への誘いを受けて「旅」へ出るまでがアクト1です。

「オープニングイメージ」 映画の冒頭でテーマを映像的に伝えます。

「ジャンルのセットアップ」コメディやアクションといったジャンルを明確にしておきます。

「主人公のセットアップ」主人公を紹介します。ここまでが主人公の日常の世界です。

「カタリスト」最初の事件が起きます。冒険への誘いともいえます。

「ディベート」冒険へ出ることに迷ったり、誰かに禁止されたりします。

「デス」危機が迫り冒険を決意します。あるいは禁止がなくなります。

「プロットポイント1」「門」をくぐり冒険へと旅立ちます。

●第二幕(アクト2)
冒険に出た主人公は目的地を目指して進んでいきます。

「バトル」主人公は試練、戦い、ミッションを経て成長していきます。

「ピンチ1」冒険の途中で新しい出逢いがあります。

「ミッドポイント」ここで勝利(あるいは敗北)して「宝物」を得ます。

「フォール」冒険の折り返し。帰り道(帰還)が始まります。あるいは強敵の出現。

「ディフィート or ピンチ2」強敵に敗北(あるいは勝利)します。仲間のイベントが入ることも。

「オールイズロスト or プロットポイント2」主人公の「旅」は終わります。たいてい喪失感も伴います。

「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」主人公は一時的に迷います。

●第三幕(アクト3)
主人公は改めて決断して最終決戦へ挑みます。

「ターニングポイント2」主人公は決断します。

「ビッグバトル」最終決戦。途中ではツイストも入ります。

「ファイナルイメージ」エピローグ。物語をすばやくまとめます。

●「桃太郎」をつかったビートの活用の実例
ひとつひとつの「ビート」の意義と全体の流れが理解できたら、創作に応用できるようになります。ビートの項目を書き出して箇条書きにしていくのです。その箇条書きリストを「ビートシート」と呼びます。ハリウッドでは企画書段階でビートシートの提出を求められることもあるそうです。
誰でもあらすじを知っている「桃太郎」で応用例を示します。

まずは「桃太郎」のあらすじ
「桃から生まれた桃太郎が、犬、猿、雉をつれて鬼退治して、宝物を持って帰ってくる」
これはログラインです。

旅がハッキリしているので「鬼退治へ出発するシーン」が「プロットポイント1」に当てるのは自然です。
問題は「プロットポイント2」=旅の終わりをどこに置くかです。

ミッドポイントやフォールの項目で説明したとおり、民話などはモノミス全体の一部しか描いていないものも多いので、ミッドポイントで「宝物」を得て終わってしまう物語も多くあります。
ビートにのせた脚本にする場合、不足するビートをオリジナルで補う必要がでてきます。

あらすじには「鬼退治」の決闘シーンがあります。これをどこに置くかというところから考えていくこともできます。
決闘=アクト3=「ビッグバトル」という発想は日本映画によくある構成法です。
この場合、

プロットポイント1:鬼退治へ出発
ミッドポイント:?
プロットポイント2:?
ビッグバトル:鬼との対決

という構成になり「ミッドポイント」と「プロットポイント2」が曖昧で、どんな「旅」をしたのかテーマが見えません。起承転結をベースに考えているとこういう中だるみする構成をしてしまいがちです。
「旅」にオリジナルのテーマをしっかり盛り込めれば、この構成でも可能です。

例えば、桃太郎を「無責任なコメディタッチなキャラクター」に設定して、鬼退治に出発したと見せかけて、軍資金で遊びまわるという「アクト2」=「旅」を設定します。
すると旅の出発=「プロットポイント1」の後には「酒を飲んだり女を買ったりといった、おふざけシーン」を「バトル」として展開していきます。ミッドポイントでは最高潮にふざけたシーンとして酒池肉林なふざけた大宴会を催します。
しかし、ここで軍資金が尽きてしまいます=「フォール」。「さあ、この先どうしよう?」。村にも戻れない。そこで鬼から宝物を奪うことを考えます。
(※ここで反省して真面目に鬼退治にいく主人公としても描けますがジャンルやテーマを考えると弱いと思います。説教臭くなるし、ふざけるならふざけ通した方が魅力的です)

準備が完了したところを「おふざけの終わり」=「旅の終わり」=「プロットポイント2」。「さて、ひと仕事するか」と「ターニングポイント2」を経て、アクト3=「ビッグバトル」に入っていきます。
この展開であればディフィートやダークナイトオブザソウルといった敗北感は出しても出さなくても展開できます。
「鬼との対決」=「ビッグバトル」では刀によるアクションではいけません。アクト2がふざけていたので、さらにふざけた企画で鬼から財宝を騙し取ろうというような展開の方がテーマがブレません。
最終的に、鬼とどうなるか、村に帰るかどうかなどは作者が決める結論なので、あとは結果次第です。
今のパターンをビートシートにすると、

プロットポイント1:鬼退治開始(と見せかけて)
ミッドポイント:酒池肉林な大宴会
プロットポイント2:準備完了
ビッグバトル:鬼の財宝を騙し取るための対決

(※ちなみにプロットポイント2で準備のために、一度、村に帰ったりすると演出的に旅の終わり感が出せます)

別のパターンの、もう少し正統派な展開を考えてみます。
アクト3にもってきていた「鬼との対決」をミッドポイントに前倒しします。映画の半分=60分ぐらいで鬼ヶ島に着かせてしまうのです。
起承転結で「転」=クライマックスと考える構成に拘っているとなかなか出来ない発想ですが「ミッドポイント」の意義がわかっていると、ここで一度クライマックスにもってくる発想ができます。観客にとっては展開がテンポよく感じられます。明確なテーマがないまま「鬼との対決」をラストにすると、無駄に見せ場を引き延ばしされてる印象を受けてしまいます。とくに「桃太郎」のような誰でも知っているストーリー、つまり漫画原作の映画化のようなものだと最初からラストが決まっているので、「クライマックス」までの90分近くが茶番に見えてしまうのです。原作のテーマがしっかりしていれば別ですが、テーマがないま音楽に映像を映すだけのモンタージュシーンや、無駄なCGシーンなどでストーリーを遅らせるだけの邦画をよく見かけますが、それはミッドポイントの概念を理解していないために起きているように思います。

ミッドポイントに「鬼との対決」をもってきた場合、アクト3=「ビッグバトル」はどうするのか?という疑問が浮かびます。もっと派手な対決を作ってやればいいのです。
例えば、鬼ヶ島の鬼を退治して財宝をもってかえる桃太郎一行。ところがその生き残りの鬼(子供の鬼なんかもいいかもしれません)がいて鬼の仲間に助けを求めるのです。そして、鬼の大群が村に攻めてきて壊滅させます。こうすれば「フォール」→「ディフィート」→「オールイズロスト」の流れは明確です。主人公の桃太郎が帰ってきた時には、村人達から「お前のせいでこうなった」などと悪態をつかれて「ダークナイトオブザソウル」=落ち込みます(この展開はアメコミのスーパーヒーローものでも使われる流れです。)
それでも、桃太郎は村人を救うために決心します(=「ターニングポイント2」)。そして「ビッグバトル」へ入っていきます。この展開であれば桃太郎達が勝利をするのは決定的です。負けることはないでしょう。続編でもあるなら別ですが。勝利した後の桃太郎の扱いで作者のテーマが出せるでしょう。シンプルに村のヒーローとして尊敬を集めるか(相討ちになって死ぬのもヒーローの展開としてよくあります)、あるいは映画『七人の侍』のようにむなしさを覚えるか、そういったところは作者の描き方、テーマ次第でプロットとは別です。もちろん「ファイナルイメージ」で話したとおりテーマを語ったりするのは野暮です。桃太郎がどうなったかを見せることで、観客が自然とテーマを感じるように作るべきです。

プロットポイント1:鬼退治へ出発
ミッドポイント:鬼との対決
プロットポイント2:桃太郎が村へ帰ってくるが、鬼の大群に襲われて壊滅状態になる
ビッグバトル:鬼の大群との大決戦

桃太郎の「桃から生まれた桃太郎が、犬、猿、雉をつれて鬼退治して、宝物を持って帰ってくる」というだけのあらすじから、ビートにうまく当てはめるだけで、いろんなパターンの物語が創り出せることをご理解いただけたでしょうか?
ビートの意義=モノミスの意義は、どんな物語にも当てはまります。ゼロから創作するときにも、二稿三稿とブラッシュアップするときにも使えます。
物語を書こうというお気持ちがある方はぜひにも身につけておいて損のない技術だと思います。

アクトを分ける「プロットポイント1」「プロットポイント2」は発想する上で重要なので最初に考えます。
次にクライマックスである「ミッドポイント」「ビッグバトル」だけでも全体の流れが創れてしまいます。
その他のビートは全体ができてから考えていけばかまいません。

例えば「桃太郎が鬼退治にでるまで」に、コメディであれば「コメディである」という「ジャンルのセットアップ」をして、ふざけたキャラクターであることをきちんと「無責任であること」=「主人公のセットアップ」を見せておきます。そんな桃太郎に「鬼退治への依頼」=「カタリスト」がきます。「そんな怖いことできない!」と拒否して悩みます=「ディベート」。しかし育ての親の「おじいさんに勘当される」とか、「お金がなくなったところに退治にでれば軍資金がもらえる」といった「デス」を経て、旅に出発する。というかんじです。どんな「旅」=アクト2に出るかの方が重要なので「プロットポイント」を先に考えてからでいいのです。

桃太郎がどういう性格で、どういう理由で旅にでるかといったところは構成ではなくキャラクターの範疇です。構成は、旅行代理店のように「冒険のプラン」を用意してあげることです。その参加者のキャラクター達が全く予定外の行動をとることは自由です。キャラクターこそがすべてというように創作論を語る人がいますが、「冒険のプラン」がないまま書いていくと思いつきだけで行動してしまうことになります。例えば「桃太郎が思いつきで鬼退治に出発する」というようなかんじです。最初のうちは破天荒なキャラクターに見えるかもしれませんが、2時間も引っ張ることはできません。次第に主人公(と作者)のワガママに振り回されているように感じて疲れてしまうでしょう。

このように「構成」と「キャラクター」は切っても切れない関係ですし、どちらかだけでも面白いストーリーにはなりません。なので「ビートシート」でもキャラクターのバランスをとって作っていくと具体的になっていきます。そのあたりまでくると、セリフやシーンも具体的に浮かんでくるはずです。自分の良いタイミングで書き始めればいいのです。もちろん詰まったら、構成を見渡して考えなおしたりしながら書き進めていきます。

創作はただでさえ暗闇の洞窟を手探りで進む、それ自体が「冒険」のようなものです。そんなときに「ビート」や「モノミス」という先人の知恵を利用すれば、いくらか楽になるし、無駄に彷徨う時間も少なくできるのです。

ご意見、ご感想などありましたら、なんでもコメント欄へおねがいします。

(2019/01/08h緋片イルカ🐬)
2019/05/22追記

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構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

三幕構成のビート分析実例はこちら→がっつり分析シリーズ

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