ストーリーをブラッシュアップする会議に、オープンダイアローグの方法は効果的に使えると確信しています。
まだまだ勉強中、検討中ですが、現時点で考えられる一つの形式を示してみます。
物語分析会で実験的に取り入れて、改良しながら、制作の現場でも活用できるようにしたいと考えています。
※この記事の内容はあくまでシュミレーション例です。実際に、この通りにやっている訳ではありません。やってみて気づいたことは随時、追記しています。
1:「感謝」と目的「動機と方向の確認」
「本日は、貴重なお時間を使って、お集まりいただきありがとうございます。作品を分析することから、作品の魅力や可能性を発見し、皆さんに価値ある時間になれるように対話していきましょう」
・参加者に親しい人が多くても、決まり文句の挨拶を入れることで「開始の合図」となる。
・僕が分析結果を発表する場ではない。皆さんの意見を聴く。僕の分析は一意見に過ぎない。
・ただの雑談とは違う「目的」を持った時間とする。会話でなくて対話にする。
※「目的」というよりは「動機」と「方向」の確認と呼ぶことにする。「目的」だと答えを出さなくてはいけないような語意がある。「なぜ集まったのか?」「どうしていきたいのか?」の確認。(2022.5.27追記)
2:発言の時間(数分×人数×質問項目)
「作品に関して、質問に答える形で、順番にお話を聴かせてください。お話される際は、時間の目安として、ここにある砂時計をお使い下さい。30秒~10分までの6種類がありますので好きなものを選んで、話し始めるときに、ひっくり返してください。砂時計が動いている間は「あなたの時間」です。発言は一言でも構いませんし、何も言わなくても構いません。反対に砂時計が止まって、話し続けても構いません。話し終わったと感じたら砂時計を戻してください。誰かが話しているときは発言せずに傾聴しましょう。質問や思ったことを話す時間は別に設けますので、まずは話している人の言葉を受けとることに集中しましょう。」
・話を止めないよう音が鳴らない砂時計を使う。
・時間は30秒 1分 2分 3分 5分 10分。自分で選んでもらう。
・発言者は時間を過ぎてもかまわない。
・時間が余っても、次にはいかない。「その人の時間」を大切にする。
・焦って話す必要はない。ゆっくり考えながら話しても構わない。
・聴く人は、なるべくメモなどとらず、発言者の気持ちに重ねることに集中する。
分析会での質問項目
①観客・読者として、この作品に対する率直な感想を聴かせてください。
②この作品で嫌いだったところ、理解できなかったところなど、ネガティブな印象を中心に話を聴かせてください。ご自分なりの理由があれば、それも聴かせてください。
・質疑応答の確認。
③この作品の好きだったところ、感動したところなど、ポジティブな印象を中心に話を聴かせてください。ご自分なりの理由があれば、それも聴かせてください。
・質疑応答の確認。
④ビートについてわかる人は、あなたがスリーポインツだと思うシーン、その理由などを聴かせてください(※これに関してはパス可)。
・質疑応答の確認。
4:質疑応答の時間(数分×希望者)
※「3:リフレクティング・トーク」と「4:質疑応答の時間」を入れ替えた。リフレクティング・トークは対話が停滞したタイミングで入れればよい(2022.5.27追記)
「今までの会話を踏まえて、質問や発言をされたい方がいましたら、挙手をお願いします。先ほどと同じように砂時計を使って、お話ください。質問する方は、訊きたい相手を指名してください。指名された方は砂時計を使って、お答えください。」
・会場の都合などで、時間制限があるときは、ここでの回数を調整する。1人1回までとか。
3:リフレクティング・トーク
「僕のビート分析について話す時間をください。みなさんのお話を伺って、感じたことも含めて意見を述べさせていただきます。」
・ただの感想発表会にならないよう、イルカからの専門的な解説はさせていただく。
5:新たな理解(3分×人数)
「まだまだ対話をつづけたいところですが、時間の都合もあるので、一度、区切らせてください。さいごに、お一人ずつ、次のようなことを聴かせてください。作品について新たに気付いたこと、感じたこと、魅力、オリジナリティなど。あるいは、この会についての感想、次の機会があれば望むことなど。何でも構いませんので、お話を聴かせてください。この時間だけは平等に○分ずつ、聴かせてください。」
・時間検討。3分ぐらいか?
6:感謝と挨拶
「本日は貴重なお時間をいただき、お話を聴かせていただいて、本当にありがとうございました。」
・お互いへの感謝、挨拶で閉じる。
ダイアローグ式にする効果予想
直しの方向が決まっていたり、ビートを理解しあっているような間では、ピンポイントで話した方が早くて効率もよいと思うが、距離感のある間柄でブラッシュアップしなくてはいけないようなときには「形式」をあえて持ち込むことで、発言が偏ったり、目的が定まらない会議になることを避けられる。そもそもの問題点すら見えていないとか、直す方向性が定まっていないような段階でのブレストにも「結論を出さないこと」を前提にして対話することで可能性が見えてくるかもしれない。答えを出すことよりも、ライター自身が解決法を掴むことが大切なので、会議がきっかけになればいい。ビートの理解が未熟な人は、参加して対話を続けることで自身のレベルアップを図れる。一回の時間を限定して、日をかえて対話をくり返すようにすることで、だらだらしない。ダイアローグ式のあとに自由会議の時間を設けてもかまわない。
緋片イルカ 2022.3.9
参考記事:「対話」を生むために(文学#60)