「あなたの好きな小説のジャンルを教えて下さい」

すこし前置きが長くなりますが、まずは物語の分類について考えてみたいと思います。
物語を厳密にジャンル分けるのはとても難しいと思います。民話学ではアンティ・アールネとスティス・トンプソンによる「AT分類」という分類が使われています。映画ではレンタルショップでの陳列棚で分類されているのがなじみ深いと思いますが、探している作品が全く違う棚にあったという経験をされたことはみなさんもあるかと思います。

物語の分類を考える上で「モチーフによる分類」と「プロットによる分類」を区別しておくと混乱しないですみます。

「モチーフ」とはストーリーの核となるアイテムや要素と考えることができます。
例えば「タイムスリップもの」といえば『バックトゥーザフューチャー』のように車を使うか、『ドラえもん』のように机の引き出しを使うかが違えど、アイテムを使って時空を移動するという点では同じと言えます。
「ボディチェンジもの」といえば、親子が入れ替わる『フリーキーフライデー』や女装する『トッツィー』、古典に『王様と乞食』やシェイクスピアには変装で入れ替わるモチーフが多数使われています。アニメの「君の名は」では「タイムスリップもの」と「ボディチェンジもの」をかけ合わせた部分は新しいと思います。

「プロット」とは構成、物語の筋と言えます。これはモノミスとビートを理解することで、すべて説明できます。
例えば「お姫様が王子様に助けられて幸せになる」というお決まりの展開や、急に良いことを言いだした後に死ぬ「死亡フラグ」のような部分的な展開もプロットの一部であり、それらを抽象化して一本道にまとめて円環にしたものをモノミスと呼びます。モノミスの要素となるのがビートです。
(詳しく知りたい方は物語論をご覧下さい)

さて、今回のアンケート項目のうち「文学」と「ライトノベル」はモチーフから中心に捉えたもので、「ミステリー」はプロットによるものです。
ミステリーには「謎」と「解決」という要素が欠かせません。謎が殺人事件の犯人であったり、トリックであったり、もっと日常的なものであっても、とにかくクイズのように「謎」が提示され、その答えを探す形でストーリーが展開されていきます。アンケートの1位31%を得票したのは、やはり人間には「知りたい」という欲求があるのだと思います。

2位の「ライトノベル」は、以前は剣や魔法のファンタジー世界とマンガ風のイラストといったものが中心でしたが、今ではストーリーが多岐にわたっているので、厳密に定義することはできないと思います。とはいえ「美少女ハーレム」「転生」「ゲームっぽさ」などのいくつかのラノベらしいモチーフが存在します。

ミステリーとライトノベルは書籍の売り上げてでも売れているので妥当な順位と言えるかもしれません。

「文学」はもっと曖昧です。学校教育の影響で文学イコール漱石や太宰といった、明治以降の近代文学をイメージする人が多いと思います。純文学というのはもう死語だという人もいますが、21%も得票したのは、むしろ「文学」というものに感じるものがあるのからだと思います。ある作家(現在、文学賞の選考委員などをされている方)が「エンタメは読者を気持ちよくさせるもの、文学は気持ち悪くさせるもの」と言っていました。大手の編集者の方も、文学は売れないけど赤字だからといって止められないプライドがあるというようなことをおっしゃっていました。現代的なモチーフを探すこと自体が、作家の仕事だと思います。過去には『なんとなくクリスタル』や『太陽の季節』のように時代に影響を与えたものも多くあります。最近では『コンビニ人間』などが現代人を映すモチーフだったと思います。近代文学の呪縛からか、私小説的なものを文学と思い込んでいる人も中にはいますが、そういった作家像自体が文学のモチーフとも言えるかもしれません。

「その他」に投票してくださった方の中には、上記に入らない「歴史もの」「ファンタジー」などでしょうか。あるいはジャンルには分けられないといった考えの方もいらっしゃったかもしれません。当サイトのtwitterのフォロワーさんには若い方が多いと思われますが、年配の方には歴史ものは人気があり書籍でもやはり売れています。

みなさんのご意見、ご感想など、よかったら聞かせてください。

参考に、当サイトの物語分類のリンクを貼っておきます。
ジョルジュ・ポルティの36の劇的局面

新井一の23のストーリー分類

ウラジミール・プロップの31の機能

オットー・ランクの英雄神話の機能

ブレイク・スナイダーの10のストーリータイプ

ウラジミール・プロップの31の機能

物語のパターンは他にもたくさんあるので機会があれば、あげていこうと思います。

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