「三幕構成・起承転結・序破急」(三幕構成8)

【物語で構成を考える意味とは?】
ピーク・エンドの法則というのがあります
人間は最高潮=「ピーク」と、終わり=「エンド」で体験を判定するのです。
「終わりよければすべてよし」という言葉がありますが、小説や映画で言えば、さらに「クライマックス」が欲しいというところです。

物語の書き手でなくても、後半の「クライマックス」が重要なのは想像がつくかと思います。
観客は盛りあがりを期待しているので、後半何も起こらずあっさりと終わってしまえば、がっかりして不満を抱くでしょう。

また「クライマックス」でいかに派手なアクションがあったところで、たとえば、登場人物がすべて死んでしまうような雑な「ラスト」は納得がいかないこともお多いでしょう。
主人公が死ぬことがに「テーマ」があればともかく、驚かしや無意味な死は、観客は受け入れません。
(参考:ログラインを考える2「ラストを決めてテーマを伝える」)。

物語で重要なのは「クライマックス」と「ラスト」です。
それをしっかりつくるための指針が構成です。

【起承転結と序破急のアーク】
起承転結のアーク(※折れ線グラフのことと思ってください)はたいてい以下のようなグラフで示されます。

ヨコ軸(X軸)は物語の時間、タテ軸(Y軸)は物語の盛りあがり具合としておきます。厳密にはプロットアークとキャラクターアークがありますが、ここでは単に盛りあがり具合とだけしておきます。(参考:プロットを考える補足「キャラクターアークとは?」

物語のスタートである「起」から始まり、
事件が起きて物語が展開していくのが「承」。
山を登るように盛り上がっていった、頂上が「クライマックス」を表します。
事件が解決したら、物語をダラダラと進めずストンと落下させるのが「転」
あとは手短に、後味よくサッと物語を締めくくるのが「結」。

序破急で考えるときは
「起」と「承」を合わせて「序」として、
「転」=「派」、「結」=「急」と考えれば、構造は同じです。

【三幕構成のアーク】
三幕構成のアークを図に示すと以下のようになります。

これは、あくまでアークの一例でしかないのですが、一般的には三幕構成はこのグラフで示されます。
起承転結との大きな違いは、中間地点にもう一つ山があることです。
これを「ミッドポイント」と呼びます。
この考え方に基づいて物語をつくると「クライマックス」を2つ作るようなイメージになります。

中間で一度、山に登らせるためには、物語のペースを速める必要があります。
それがハリウッド映画と日本映画のテンポの差になっていることは否めないと思います。
さらに、テレビドラマなどではトップシーンからクライマックスを入れて、観客を一気に引き込むように作ります。
こういう掴みを「ティーザー」と呼びます。

一度、映画館に入ってもらえば、ゆっくりと見てもらえる映画に比べて、テレビではつまらなければすぐにチャンネルを替えられてしまうので、トップシーンから観客を引き込んでいくのです。
近年では、このつくり方が映画にも取り入れられていて、ディズニー映画などで顕著です。

【シークエンスとして捉える場合】
シーンは物語の一つの単位です。
「ある場所で、人物がいて、イベントが起きる」このかたまりがシーンです。
次のシーンでは場所や時間が変わり、次のイベントが起きます。
さらに、シーンがいくつかかたまったものをシークエンスと呼びます。
この連続で物語はできています。

演劇の一幕物のようなもの(映画では『十二人の怒れる男』をご想像ください)では、場所と登場人物は変わりませんが、話されている話題によってシーンは変わっています。

例えば、犯人を有罪にするか無罪にするか陪審員達の話し合いで、
「人物Aが、有罪を主張して、その理由を述べる」のがシーン1だとすると、
「人物Bが無罪を主張する」のはシーン2となります。
シーン3では「人物Cが……」と続いていき、シーン4では別の人物が「ちょっと事件を整理してみましょう」と提案する。
すると、話題は「有罪か無罪か」ではなく、「事件のあらまし」へと移っていきます。
シーン1~3までのように「有罪か無罪かの主張」というかたまりがシークエンスです。

起承転結には定義がないので、四つを全体の「シークエンス」として当てはまる考え方をする人もいます。
120分の映画であれば、30分ずつに4つにわけて、その1つずつをそれぞれ「起」「承」「転」「結」とよぶ考え方です。

脚本でハコ書きという構成法や、演劇の四幕にわけて考える方法はこれに基づきます。
ハリウッド三幕法では

アクト2は2倍の長さと考え、その中間にミッドポイントがあると考えます。
アクト2前半、アクト2後半という分け方もするので、実質は4つに分けるのと同じです。

※序破急で3つに分ける構成法はあまり使われませんが、三幕構成の応用で各アクトを1:1:1に近付けることでリアリティが増すという考え方はあります。ただし一般的ではないし、ビートのズラし方でこの方法は応用できるので、ここでは触れないことにします。

【三幕構成にビートという目盛りがある】
物語全体を4つのシークエンスに分けて考えるという意味では起承転結も三幕構成も同じようですが、三幕構成にはさらに細かいビートという目盛りがあります。
細かい一つ一つのビートやその定義については「ビートを考える」シリーズをご覧いただきたいのですが、ここでは特に重要なプロットポイントについて、考えます。

プロットポイントというのはアクトとアクトの間に入る、切れ目のシーンです。

PP1:プロットポイント1
MP:ミッドポイント
PP2:プロットポイント2

この考え方は起承転結にはありません。
個人的には「起」から「承」に行く時には大きな事件を起こすんだ!というような解釈をされている方もいらっしゃると思いますが、ビートには用語と定義があって業界全体で共通理解ができるのが強みです。

【ビートに定義があるメリット・デメリット】
そもそものビートの定義は神話論と心理学がベースになっています。(参考:ジョーゼフ・キャンベルのモノミス
古今東西の物語に共通する構造が、定義に含まれているのです。
さらに「主人公の成長」そのために必要な「通過儀礼」といったキャラクターアークを含めてプロットを考えます。
要はテクニックとして応用することで未熟な作者でも物語に深みを与えることができます。

また、ビートの定義が業界で共有されていることで複数のライターで物語を進めるときの共通理解ができるだけでなく、ビートの意義を考える創作論がたくさんあるので、理論自体が日々アップデートされているのです。
日本の創作論はあくまで個人的な持論が多く、部分的になるほどと思うこともありますが、ほとんどは「ビートの○○と同じ」ということが多いです。
個人のアイデアよりも、業界全体でブレストされている方が、深みが出てくるのは当然です。

デメリットは内容が複雑なことです。
最近は、入門にわかりやすいハウツー本が翻訳されたり、日本人で書いている方もいますが、ビートの表面をなぞっているだけでは三幕構成を十分に扱いこなすことはできません。
パソコンのアプリやソフトで喩えるなら、複雑で使いこなすのは大変なプロ使用のソフトのようなものです。

やや、余談ですが、数年前の日本ではアメリカで有名な『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』は絶版、『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』は翻訳されていないという状況だったので、その頃に比べると三幕構成やビートはかなり浸透してきていますが、反面、安易なハウツーに成り下がっている残念な本もたくさんあります。アップデートをせずに、何年も前の理論で説明されているものも多く、翻訳は数年遅れになってしまうという状況は仕方がないとしても、勉強不足や分析不足のために、ゆるい理論を語っている人もいるし、『SAVE THE CATの法則』を1冊読んだだけで、わかったように語る人まで出てきている、こういった現状は三幕構成を使う上でのデメリットともいえると思います。頭でっかちの理論家にならず三幕構成を身につけるために、分析して創作に応用する作業が必須です。これはパソコンのアプリやソフトを使うことで身についていくのと同じです。

【おわりに。本当は三幕構成でなくてもいいのだけど……】
物語の本質さえつかめれば、どの理論、どんな用語を使ってもいいと思います。
ただ、その本質は深淵で底に行き着くことなどないのだとも思います。また時代によって変化もしていきます。
それでも物語を創ろうとする者は、意識的にせよ、無意識にせよ、その答えを探し求めてなければいけません(アナリストのような理論を商売にしている人でも同じはずです)。
その物語研究という意味においては、三幕構成が一番深く、最先端だと感じます。

初心者の方はこちらからどうぞ→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

「プロットを考える」の過去のリストはこちら

構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

三幕構成の書籍についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)

三幕構成のビート分析実例はこちら→がっつり分析シリーズ

文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」

文学(テーマ)についてはこちら→文学を考える1【文学とエンタメの違い】

キャラクター論についてはこちら→キャラクター概論1「キャラクターの構成要素」

「物語論」すべてのリストはこちら

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