プロットを考える15「フォール」

初心者の方はこちらからどうぞ→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

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前回のミッドポイントまでが、映画の半分。
ここからが折り返し地点となります。英雄神話でいうところの「帰還」が始まります。
プロップの31の機能でも定義されていますが、ここからは神話論の考え方とビートの考え方は分離していきます。

まずモノミス(単一神話)を復習します。
世界中の物語や神話の要素(=モチーフ素、ビート)を並べると円形状の一つの神話が作れるというのが、モノミスの考え方でした。
これは、一つの物語(作品)の中で、すべての要素が語られるという意味ではありません。
だから、例えば「鬱屈を抱えた少年が自分の目標を見つけて旅立つまで」を1本の作品にすることはできます。
神話論でみれば、これは「旅立ち」までしか描かれていません。旅立ち以降は読者の想像に任せるか、続編を待たねばなりません。
しかし、これが映画になった場合にはビートとしてのプロットポイント(旅立ち)が入ります。
旅立った後のシーンが映画オリジナルとして描かれるという意味ではありません。
この映画では「旅立ちを決心するまで」が長い心の旅となる作品なるはずです。
(脚本家がそういうビートをきちんと入れないと音楽や役者の演技といった演出でごまかすしかありません)

同じ作品でも、神話論のビートとして考えるか、映画のビートとして捉えるかでかわってきます。
神話論としてとらえれば、MPで宝物を得て、幸せになりハッピーエンドで終わる
物語はたくさんあります。
映画のビートとして見る場合は、MPで終わることはありません。なんせ半分ですから。

ここでは、これまで通り、映画のビートとしてを優先していきます。
神話論としての本質をとらえるには心理学の考え方なども説明しなくてはならず、非常に抽象的な話になるからです。また構造そのものは、ハリウッド三幕構成と神話論の構造はそっくりなので、こちらで基礎を身につけてから、あとで深い意味づけをしていけば理解しやすくなります。

前置きが長くなりましたが「フォール」です。これはFall、落下という意味です。
MPまでを折れ線グラフのように考えると(アークと呼びます)MPは頂点でした。
そこから折り返す=帰還するということは、落下していくことになります。

主人公の変化、成長という意味として捉えるならMPによって、試練は成功し、その結果として宝物を得ています。つまり、もう変化しているのです。
しかし、変化は見えないものなので、その変化を証明しなければなりません。つまり宝物を持って帰って、周りの人間に証拠をみせる必要があるのです。
山登りは上りよりも下りが危険と言いますが、帰りには帰りの試練が待っています。
「もう戻りたくない」という気持ちが沸いてくることすらあります。(イルカ🐬)

映画のビートとしてみた場合、『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』(以降、『CAT』)では「迫り来る悪いやつら」というビートが置かれています。これは原著でも、Bad Guys Close Inとあり同じです。一言でいえば、成長した主人公に対して、より強力で、新しい敵が現れるというビートです。
ミッドポイントで主人公は何らかの勝利をしているので、それに対する強い敵が現れるとも言えますし、ハリウッドのミステリー映画ではかなりの高確率でこのタイミングで真犯人が顔を見せます。
敵が登場しない場合もあります。状況が変化するといった程度の変化の場合もあります。『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』ではデススターの中に飲み込まれることがフォールです。

改めて、神話論に戻って「フォール」の意味を考えてみると、主人公が成長して変化したということは、それは「非日常」だった冒険が「新たな日常」になってしまったということです。シンデレラで言えば王子様と結婚したことで、夫婦生活という新しい日常が始まるのです。次は、その夫婦生活での新たな事件が起きるはずです。それが「フォール」です。だから『千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上』では「帰還の拒否」というのがありますが、これはアクト1の「ディベート」と同じです。
しかし、アクト1のくり返しになるので映画ではサクサクと展開されます。ミッドポイントからフォールまで長い映画は非常に中だるみします。

★まとめ:
・フォールは「帰還」の始まり。
・主人公はすでに変化している。変化した主人公に対する新たな旅立ち。

イルカの音声解説はこちら(※しまうまさん抜きで録音しています)

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