「音楽の形式と映画の構成」(三幕構成12)

音楽と映画の共通点とは?

 音楽の構成方法と映画の構成には共通するところがかなりあります。それは「時間芸術」であるという点です。全体を分割して、それぞれのパートを構成していく考え方は驚くほど似ています。
音楽理論に詳しくないので、例えをだすことが難しかったのですが、『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』の中にわかりやすくまとまっているページがあったので、引用して比較してみます。

「形式」という語は、クラシック音楽で使う場合は、ある楽曲を作曲する際のガイドとなる構成──かなりの数の作品に共通する一連の特徴──を指す。形式には主要なものがいくつかあり、それぞれ楽章や主題部の分け方が違っている。言ってみれば形式は、ひとつひとつの楽曲の設計図のようなものである。

「作曲する際のガイドとなる構成」というのは「物語をつくる際にガイドとなる構成」と置き換えれば、三幕構成に共通します。
以下、具体的な「形式」。

二部形式(A─B)

楽曲の第一部(A)は主調で始まり、やがて転調(調を変えること)して属調【訳注:完全5度上の調】か平行長調【訳注:ある短調と調号が同じ長調】になる。続く第二部(B)は、属調か平行長調で始まり、やがて転調して主調に戻る。例えば、ある楽曲がイ長調の場合、Aはイ長調で始まり、やがてホ長調に転調する。続くBはホ長調で始まり、イ長調に戻る。イ短調の場合は、Aがイ短調で始まってハ長調に転調し、Bがハ長調で始まってイ短調に転調する。

訳注があってやや読みづらいですが、要点を抜きだすと「Aは主調で始まり、属調か平行長調になり、Bは属調か平行長調から始まり、転調して主調に戻る」となります。
主調を日常の世界、属調か平行長調を非日常の世界と考えると、物語の基本である行って帰ってくる「旅」という構造と重なります。転調はアクト3へ入る前のプロットッポイント2と呼べそうです。
30分アニメでは真ん中のCMの前後で「Aパート」「Bパート」と呼びますが、それにも近いと言えそうです。

二部形式の例としては「ちょうちょう (唱歌)」があります(リンク先でサンプルが聴けます)。

三部形式(A─B─A)

Aは主調で、Bは属調または平行長調であり、そのあとでAが繰り返される。そのため、楽曲全体は始まったときの主調で終わる。

これは、そのまま三幕構成に当てはまります。最初と最後のAが日常、真ん中のBが非日常となります。二部形式と同じように感じるかもしれませんが、この違いは「ヒーローズジャーニー」と「ビートシート」の違いと言い替えられます。「ヒーローズジャーニー」は物語を比喩的に構成した場合で「主人公が旅に出て帰ってくる」という一つの物語に集約できます(※詳しくはモノミスヒーローズジャーニーの記事や書籍をお読み下さい)。
それに対してビートシートは三幕(ミッドポイントで切れば四幕)に分けて、「ヒーローズジャーニー」の考え方を重ね合わせたようなものです。ざっくりと二部構成は物語の構成、三部構成は映画用の構成と考えてしまってもいいと思います。

三部形式の例としては「きらきら星」があります。

ソナタ形式

複合二部形式とも呼ばれる三部構成の形式。第一部は提示部といって、主調を決め、第一主題と、たいていそれと対照的な第二主題を提示し、主調から転調して緊張感を作り出す。第二部を展開部といい、ここで作曲家は主題をさまざまな組み合わせや装いで表現する。頻繁に転調することことも多い。第三部である再現部で、最初の主題に戻り、最初と同じ調で終わる。

これは三幕構成にキャラクターアークが加わった形です。「主調」を物語でいえば主人公、「対照的な第二主題」はアンタゴニストといえます。第二主題が登場する「提示部」からアクト2に入りミッドポイントまで上りつめていき、「展開部」はフォールの開始といえます。「再現部」で一度、最初の主題に戻るというのは「オールイズロスト」で日常に戻ったり、敗北したりするのと似ています。
このあと物語では最後の対決であるアクト3に入っていきます。ウィキペディアのソナタ形式のページでは「再現部」のパターン例が書かれていますが、これはラストが映画によって様々なのに似ています。

楽曲でなぞると超わかりやすい、「ソナタ形式」の解説

こちらのサイトにピアノソナタ第8番『悲愴』第1楽章のていねいな解説がされていました。まさにビート分析似ているなと思いました。
面白いことに、曲全体が7分のうち、アクト2開始といえる「提示部」の開始はちょうど全体の25%でプロットポイント1のセオリーと一致していますし、「展開部」の開始は55%、「再現部」の第二主題の始まりが71%、きれいな1:2:1の三幕構成になっています。

ロンド形式

これは三部形式の一種で、異なる主題をアルファベットで表すと、A─B─A─C─A─D─Aという形式を取る。B、C、Dをエピソードといい、主要主題であるAを和声や旋律の面で引き立てる役割を担っている。

この形を見て、思い浮かぶ映画の構成は回想型の構成です。具体的な映画でいうと『市民ケーン』『きみに読む物語』『イングリッシュ・ペイシェント』のような映画です。
市民ケーンでいえば、記者が「バラのつぼみ」という謎を追うというAの主題があり、B、C、Dと過去にエピソードに触れていく形です(この型でもアークとして捉えればきちんとビートがあります)。

主題と変奏

作曲家は、まず旋律を提示すると、その旋律を、装飾をつけたり、和声を変えたり、音の組み合わせ方を変えたり、長調から短調に変えたりなど、さまざまな技法で変形させる。これを変奏という。変奏を文字で表す場合は、A─A’─A”─A”’などと書く。

作曲家は主題をさまざまな技法で変形させる。これは物語作家が主人公をさまざまな事件をあたえて変化や成長させようとするのと似ています。

緋片イルカ 2020/02/04

物語の構成などについて知りたい方は以下のページをご覧ください。

構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

三幕構成の本についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)

キャラクター論についてはこちら→キャラクター分析1「アンパンマン」

文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」

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