「キャラクターアークとは?」(三幕構成5)

初心者の方はこちらからどうぞ→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

【三幕構成と起承転結のアークについて】
「アーク」というのは「弧」の意味で、物語をグラフ的に説明するときに使われる用語です。
構成を説明するときに使われることも多いので、キャラクターアークと区別するためにも、まずは構成のアークから説明していきます。

ハリウッド三幕構成に関する本を読んだことがある人なら必ず、

こういった説明図をご覧になったことがあると思います。
横軸(X軸)は物語内の時間を表し、縦軸(Y軸)は盛りあがりを表します。

あるいは日本の起承転結を表すものでは、

このようなアークになっていることが多いと思います。
起承転結は定義がないので(そもそも漢詩からきている理論ですし)、説明をする人が独自の解釈で用いているので、アークの描き方はそれぞれだと思いますが、基本的には、
「起」で物語の始まりを設定して、
「承」で事件が起きて、展開していき、
「転」クライマックスを過ぎたら、ストンと落として、
「結」さっと終わらせる。
という考え方です。「序破急」でもおおよそ同じです(もとは雅楽の楽曲の構成法則で、世阿弥はこれを能にも当てはめたものです)。

一言でいえば、後半のクライマックスが一番盛り上がるように構成しなさいということです。

【三幕構成にはミッドポイントがある】
それに対して、一枚目で示したハリウッド三幕構成では後半だけでなく、中央部分にも盛り上がりがあります
これはミッドポイントと呼ばれる地点で、このイメージの違いはハリウッド的か日本的かの違いに出ていると思います。ハリウッド映画が前半からテンポよくストーリーが進んでいくのはこのミッドポイントを目指して盛り上げていくからです。くわしくはビート解説シリーズ「三幕構成・起承転結・序破急」をご覧ください。

【プロットアークとキャラクターアーク】
さて、これらのアーク(グラフ)に関して、問題なのはY軸は何を表しているのか?ということです。
ここまで、なんとなく「盛り上がり」と呼んできましたが、それは何の盛り上がりなのか?

結論を先にいってしまえば、「演出や物語上の盛りあがり」と「感情の高まり」が混在しています。
これらを「プロットアーク」(※造語)と「キャラクターアーク」とわけて呼びたいと思います。

「プロットアーク」は、演出として音楽や映像的にも盛り上げるところとして捉えますし、実際、ミッドポイント付近は特別な演出がされている映画がほとんどです。物語としての盛り上げることも意味します。たとえば、キスシーンやベッドシーンがこのあたりに来たりします。ブルース・リーの『死亡遊戯』のように塔の階を上がるごとに敵を倒していったり、スポーツ映画でトーナメントを勝ち上がっていくようなイメージも同じです。エピソードやイベントによって盛り上がっていくことで、パーティーや祭りが開かれるようなエピソードが入ることもよくあります。

「キャラクターアーク」の「感情の高まり」というのは主人公の感情の高まりです。
プロットが高まる=敵が強くなってくれば、主人公のテンションも高まるので、アークは一致している物語もあります。

しかし、キャラクターが感情的にだからといって、観客も盛り上がるとは限りません。コメディ映画で、主人公が痛い目にあうのを見て、観客は笑うのを浮かべればわかります。
主人公の感情と、観客の感情が一致するわけではありません。
観客の感情はむしろ「プロットアーク」とかなりの割合で一致します。
多くの観客は、ストーリー上の矛盾があっても、派手なBGMを入れて、シーンカットを速めて、セリフやアクションでたたみかければ盛りあがりを感じます。

一方、ストーリーを重視する観客や、主人公に感情移入してみている観客はプロットアークの盛りあがりを鬱陶しく感じて、白けてしまうこともあります。
「演出にはのせられないぞ!ストーリーテリングを誤魔化すな!」といったかんじです。
そういう観客は小津安二郎作品のような演出的に地味に展開される(ただし明確なアークがある)映画に感動したりもします。

ともかく、ここでは物語には「プロットアーク」と「キャラクターアーク」という2本のアークが潜んでいることを区別してください
「キャラクターアーク」には成長・変化としてのアークの意味もありますが、それについては次回、掘り下げていきます。

緋片イルカ2019/05/04

参考:AIによるアークの分析→『ベストセラーコード』の7つのプロット

「プロットを考える」の過去のリストはこちら

構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

三幕構成の書籍についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)

三幕構成のビート分析実例はこちら→がっつり分析シリーズ

文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」

文学(テーマ)についてはこちら→文学を考える1【文学とエンタメの違い】

キャラクター論についてはこちら→キャラクター概論1「キャラクターの構成要素」

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『「キャラクターアークとは?」(三幕構成5)』へのコメント

  1. 緋片 イルカ 名前:緋片 イルカ 投稿日:2020/01/31(金) 22:04:48 ID:7d2f24a4b 返信

    ※補足

    プロットアークというのは、僕の造語になります。
    ハリウッドではキャラクターアーク=ビートとしているのがほとんどですが、分析してみると必ずしも、そうでないものがあるので解釈しやすくするために造りました。

    たとえばハリウッドの古いアクション映画なんかでは、キャラクターの心情や目的は「ミッションを成功させる」とか「家族を守る」といったシンプルなものしかないので感情の変化もほとんどないか、あってもとってつけたような変化です。「夫婦仲が悪かったが、トラブルに巻き込まれて解決したときには仲直りしてた」とか。

    こういう作品では、物語を動かしているのは、主人公よりも事件の方なのでプロットアーク中心といえます。

    「事件→主人公のリアクション→次の事件→主人公のリアクション……」

    の繰り返しで進んでいくかんじです。
    なので構成を解釈するときには、事件を中心にみていけば大丈夫です。

    一方、キャラクターアーク中心の物語ではプロットポイントでは大きな事件は起きますが、それ以降は主人公の感情を中心に動いていきます。

    「プロットポイントの事件→主人公の悩み→決断→行動→状況変化→新たな悩み→決断→行動……」

    というようなイメージです。

    たとえば思いつきのベタな例ですが

    「仲の悪い母娘がいて、母に癌がみつかり余命1ヶ月だとなる。そこで娘は母のために何かをしていく」

    というような話だとすれば「母の癌が見つかった」ということが、プロットポイント1と言えます。その後の「何かをしていく」が、「母が好きな料理をつくってやる」「好きな場所へ連れていってやる」といった地味なエピソードであると、ビートの解釈がしづらく事件が起きていないように見えます(=プロットアークがないように見える)。
    つまり母と娘が交流を繰り返して関係が改善されていくというキャラクターアークが中心になって物語が動いています。

    ミッドポイントでは「二人の関係が最高潮に達して、どちらかが『今までごめんね』とか『ありがとう』とか、それまで二人が絶対に言わなかったようなことを言うかもしれません(これが変化です)。

    こういう丁寧な心理描写がつづく映画だと、どこをビートととるかは非常に悩んだりします。映画では、観客がキャラクターの感情を読みとらなくてはいけないので(セリフだって嘘をつきます)、共感力が低い人には何が起きているのかわからないとった状況になってしまうこともあります。
    子供がみても心情を理解できなかった映画を大人になってからみたら、すごく共感できたなんてこともあると思います。

    「プロットアークの方に観客や読者は共感する」というのはこのあたりの意味です。多くの観客という意味です。小津安二郎みたいな映画は僕は大好きですが、黒沢明のような派手な映画の方が一般論として人気があるという。

    実際はプロットアークとキャラクターアークが2本ある映画がほとんどですし、ハリウッドで言われるようにキャラクターアーク=ビートと考えて問題ないものがほとんどです。アクション映画でもむかしほど感情を無視したものは少ないと思います。

    けれど、たまに歌の輪唱みたいに2本のアークがズレている作品があります。以前にやっていた勉強会でもミッドポイントが2つあるような場合で「どっちだろう?」となりますが、分析は一つに決める答え合わせが目的ではないので「いっそキャラクターアークとプロットアークとして別々に捉えた方がわかりやすいよね」というかんじに分けて考えるようにしています。

    2本アークがあるとどうなるかというと、上の母の病気のストーリーで言えば「母のために何かする」という娘のキャラクターアークとは別に「死ぬまでにしたい10のリスト」(パクリですが)があったとすると「プロットアーク」がはっきりしてくると思います。リストの内容を1つずつこなしていくというのがプロットアークになります。(『ファンボーイズ (字幕版)』という映画がちょうどこんなかんじです)

    やろうと思えば、アクションのプロットアークと合わせることだってできます。面白いかどうかはともかく「癌が見つかった母は実はスパイで、最後のミッションをこなさなくてはいけない」という設定で、母がスパイであることを初めて知った娘が母を手伝いミッションをこなしていく。こうするとキャラクターアークとプロットアークが重なるります。

    ミッドポイントではさきに書いたような「母娘の相互理解」(キャラクターアークのミッドポイント)がありつつ、アクションの方でも「重要任務を達成する」といった派手なミッドポイント(プロットアークのミッドポイント)が入ったりします。
    ハリウッドがキャラクターアーク=ビートとして捉えるのは、このように「事件とキャラの気持ちを重ねなさい!」というかんじです。でも必ずしも重なってなくてもいいんです。

    二つのアークがズレる場合、プロットアークのミッドポイントで母娘はミッションには成功するけど、二人の親子関係が決裂するなどもできます。母娘の関係改善(キャラクターアークのミッドポイント)は、もう少し後にとっておいても構わない。アクション中心であれば、テンポが悪くなるかもしれませんが、そのあたりは作者の自由です。
    とくに小説では枚数に自由がきくので、テンポロスが映画ほど欠点にはならないので、より自由だと思います。

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