「主人公は成長しなくてはいけないという思い込み」(三幕構成6)

初心者の方はこちらからどうぞ→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

【なぜ主人公は成長しなくてはいけないのか?】
前回、物語には「プロットアーク」と「キャラクターアーク」という2本のアークが潜んでいることを考えました。

これらを混同して使っている人が多いので、本来の「キャラクターアーク」がとてもわかりづらくなっています。
その理由は「主人公は成長しなくてはいけない」という思い込みによります。

多くの物語論を語る本では「主人公は変化しなくてはいけない」「成長して何かを学ばなければならない」といったことが書かれています。
これは「成長物語と成長しない物語」「キャラクターロールとアーキタイプ」といった記事でも似たようなことを書きましたが、全くそんなことはありません。

そもそも、ハリウッド三幕構成のビートは観客を飽きさせないためにテンポよくストーリーを進める(=「叩く」「ビート」)という単純な意味に合わせて、「キャラクターの変化・成長」させるという概念が合わさっています。
そこからビートの意義や定義ができています。

だから主人公は、PP1では主人公は非日常の世界へ入り、ミッドポイントで学びを得て帰ってきて、アクト3(ビッグバトル)で成長を証明するといったセオリーがていて、それ自体が神話論をベースとしているので説得力も効果もあります。

やみくもに作者の感性だけを頼りに、物語を紡ぐよりは効率的で、うまく使えばテーマを掘り下げるテクニックにもできます。

しかし、テクニックの部分だけが注目されると安易なハウツーに陥ってしまいます。上手く扱うには物語の本質まで掴む必要があります。

「主人公は変化しなくてはいけない」という考え方に囚われている人は、ハウツー本の受け売りで、自分で分析をしたことがない人なのではないかと思います。
分析してみれば、主人公が変化していない、それでいて面白い映画はたくさんあります。

あるいは「プロットアーク」と「キャラクターアーク」を区別できていないため、プロット上の盛りあがりをキャラクターの盛りあがりに合わせようとしてしまうのかもしれません。
こういったことは、ハリウッド三幕構成の呪縛だと思います。

【3本のキャラクターアーク】
現在、日本語に翻訳されている本で、キャラクターアークについて一番ていねいに解説している本が『』です。
この中で、3つのキャラクターアークが紹介されています。

1:ポジティブなアーク The Positive Change Arc
2:ネガティブなアーク The Negative Change Arc
3:フラットなアーク The flat Arc

「主人公が変化や成長をするアーク」は「ポジティブなアーク」です。
「ネガティブなアーク」とは、主人公がダークサイドに落ちる『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(エピソード2/クローンの攻撃、エピソード3/シスの復讐)のようなタイプです。
そして、主人公が変化しないタイプは「フラットなアーク」です

フラット(平坦)という言葉通り、主人公の価値観は変化しませんが、当然ですが、物語上のアークはつけます(プロットアーク)。
「プロットアーク」と「キャラクターアーク」を切り離して考えることで、キャラクターアークの意味もはっきり見えてきます。

次回は、3本のキャラクターアークに沿った主人公像を考えていきます。

緋片イルカ2019/05/05

「プロットを考える」の過去のリストはこちら

構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

三幕構成の書籍についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)

三幕構成のビート分析実例はこちら→がっつり分析シリーズ

文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」

文学(テーマ)についてはこちら→文学を考える1【文学とエンタメの違い】

キャラクター論についてはこちら→キャラクター概論1「キャラクターの構成要素」

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