「プロットポイントとターニングポイントの違い」(三幕構成1)

初心者の方はこちらからどうぞ→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

ハリウッド三幕構成で使われる「プロットポイント」と「ターニングポイント」という用語はとても似ています。その違いを考えながら、創作時への応用法を説明していきます。

【そもそも三幕構成とは?】
まず三幕構成を簡単に説明します。物語を三つに分けて考える構成法です。日本でいう起承転結や序破急のようなものです。
1幕は「セットアップ」
2幕は「コンフリクト」
3幕は「ソリューション」
と呼ばれたりもします。
1幕のセットアップでは、登場人物が紹介されて事件が起きます。
2幕では、その事件が進展していきます。ミステリーでいえば、犯人を捜して捜査したり次の殺人が起きたりを想像してもらえばわかりやすいかと思います。それらを総じてコンフリクト=葛藤と呼びます。
3幕のソリューションでは、事件解決に向けてクライマックスへと入っていきます。
日本の構成法には、抽象的な意義はあっても明確な定義はありません。
だから、人によって、自分流の解釈をして構成を考えています。その点ではハリウッドでは時間配分による定義や、三幕よりさらに細かいビートという考え方もあります。
構成を「物語を計る定規」のように捉えるとすると、三幕構成のが目盛りが細かいので、初心者には扱いづらいけど、プロには便利といった印象です。詳しくは「ログライン/プロットを考える」シリーズをお読みください。

【プロットポイントとターニングポイントって?】
1幕と2幕の切れ目、2幕と3幕の切れ目にあたるイベントを「プロットポイント」と呼びます。
例えば、1幕でキャラクター達の日常生活が描かれた後に「殺人事件が起きる」これがプロットポイントになります。
キャラクター達は「誰が犯人か?」「何が目的?」「次は自分が?」といった恐怖や疑念を感じて「非日常の世界」が始まります。もちろん観客も興味を惹かれます。これこそが物語の核なのです。

1幕の日常生活と、2幕での犯人捜しという非日常を分けている出来事が「殺人事件」です。これを「プロットポイント1」略して「PP1」と呼んだりします。
そして、キャラクターと観客のドキドキハラハラを経て、「犯人はあいつに違いない!」とわかることで2幕は終わります。
3幕では解決編、犯人との対決に入っていくのです。この「犯人がわかる」出来事が、2幕と3幕の分かれ目なので「プロットポイント2」「PP2」と呼びます。

このように三幕の境界にあるのが「プロットポイント」です。これらの考え方はシド・フィールドの本で有名です。(映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術
もう一人有名なブレイク・スナイダーの本ではプロットポイントではなく「ターニングポイント」という言葉が使われています。(SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術
こちらはビートという三幕より細かい目盛りで構成を考えていき、その中の一つが「ターニングポイント」です。ビートの意義としてはプロットポイントとほとんど変わりません。

【プロットポイントとターニングポイントの細かい違いは?】
他にも三幕構成について書かれた本が多くあり、プロットポイント派とターニングポイント派に分かれますが、幕と幕をわけるイベントである点では同じです。
慣れていない人は同じと思って構わないと思います。
三幕構成を身につけるには実際の映画で「このシーンがプロットポイントだ!(ターニングポイントだ)」と探してみる作業がいちばんの近道です。
その場合、1幕と2幕の分かれ目に注目すればいいので、呼び方は問題にはなりません。

しかし、分析を重ねていくとプロットポイントらしいものが2つあるように見える映画にでくわすことがあります。(初心者はカタリストと間違えることも多くありますが、ここでは触れません)
そういった作品を考えるときには、プロットポイントとターニングポイントを別物として捉えることで理解がしやすくなり、それは創作時に応用しやすくなります。(※イルカは一貫して創作のための分析という立場で考えます)

ここからはやや専門的な話になります。興味ない方は飛ばしてください。

PP1で非日常に入る前の主人公は、悩みを抱えているパターンと抱えていないパターンがあります。

これは物語が成長物語の構造を持つか持たないかによって変わります。成長するパターンであれば、悩みやトラブルを抱えていた主人公が、その悩みと向き合うアクト2(2幕)に入り、そこで葛藤を重ねながらも成長して帰ってくるという構造になります。成長しない物語であれば主人公は日常に満足していてかまいません。平穏に暮らしていた人間が事件に巻き込まれてピンチになることが葛藤となり、そこから脱出することが目的であり解決(=3幕)になるのです。

これを踏まえると、成長物語では主人公はが悩みと「向き合わざるを得ない状況」こそがPP1ないしTP1となります。なぜ「向き合わざるを得ない」かというと、成長には通過儀礼を伴うという考え方からです。
例えば主人公の悩みが「髪が長すぎる」という程度だったとして「美容室へ行って切る」というぐらいの日常的行動ではコンフリクトにはならないのです。つまり物語として成立しない(つまらない)ということです。
「髪が長すぎることをバカにされる」という悩みがあり「短く切る」(これはカタリストです)。短く切ってもやはりバカにされる。ここに主人公の本質的な問題が存在します(芥川竜之介の『鼻』を連想してください)。その本質的な問題と向き合うことこそが2幕になります。この主人公は日常が嫌になって家出する(これはデスです)、嫌になって坊主頭にしてしまう、そんなとき同じような坊主頭の子どもに出会う。その子は癌患者で放射線治療を受けている。その瞬間、主人公の中で何かが変わる。こういった出来事がPP1になるのです。

このように成長物語の主人公は自分の抱えている問題を、自分の力だけではどうにもできない状態にいます。それが出会いによって変化を初めていくのです。だから、PP1は主人公にとっては受身的になります。

一方、成長しない物語は問題を抱えていないので、事件は巻き込まれる形で起きます。やはり受身的です。

成長する物語でもしない物語でも、主人公は「PP1」として「何かと出会う」ことで次のアクトに入っていきます。このことでPP1とTP1の違いが気になることはありません。

しかしPP2では、先に述べたようにプロットポイントが2つあるように見える映画があります。
結論から言えば、それはビートでいうところの「オールイズロスト」「ターニングポイント2」の違いです。ミステリーで言えば「犯人があいつに違いない!」という証拠を手に入れるあたりがオールイズロストです。その後に警察に連絡したり、犯人逮捕に向けて準備して、いざ対決であるアクト3(=3幕)が始まる地点がターニングポイント2です。(それはビッグバトルのスタート地点でもあります)。

この2つのビートに時間的な差がなければ、どちらが切れ目になっているかと捉えても大差ありませんが、両者が離れている場合、どちらをPP2とするかで意見が分かれます。
これはビートという細かい目盛りを使って捉えれば、丁寧に分けて解決できるのですが、重要なのは「プロットポイント2」=「オールイズロスト」であって、=「ターニングポイント2」ではないということです。

つまり厳密にはプロットポイントは出来事、エピソードで捉え、ターニングポイントは主人公の決断、行動で捉えるのです。

キャラクターは出来事を受けて、リアクションとして決断して、次の行動に移ります。その行動の結果を受けて、また次の決断をして、行動をしていきます。物語はその連鎖です。
これはアクションとリアクションの関係と同じです。どちらが重要と考えるのは鶏と卵のどちらが先かと考えることと同じです。イベントが重要という考え方の人はプロット重視、決断が大事という人はキャラクター重視の意見をもちますが、どちらも重要なのです。(アクションとリアクションについては一人称小説におけるリアクション描写について

PP1では主人公が受身的な状態にあるので、PP1とTP1はほぼ一致します(『JUNO』のような若くて個性の強いキャラクターはTP1でアクト2に入っていきますが)。
PP2では分析するときには意見が分かれるときはありますが、そういう作品にぶつかったら、ビートを使って捉えるようにしていけば解決できます。

「プロットを考える」の過去のリストはこちら

構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

三幕構成の書籍についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)

三幕構成のビート分析実例はこちら→がっつり分析シリーズ

文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」

文学(テーマ)についてはこちら→文学を考える1【文学とエンタメの違い】

キャラクター論についてはこちら→キャラクター概論1「キャラクターの構成要素」

「物語論」すべてのリストはこちら

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