短編映画の構成と魅力(三幕構成51)

ライターズルームでの質問について考えていきます。

今回は「短編の魅せ方(作り手としての長編との違い)」について聞きたいとのことでしたので、僕なりに答えていきます。

短編とは何分まで?

ショートショート、ショートムービー、短編映画など呼び方はいろいろあります。

アカデミー短編映画賞の基準では40分未満が短編とされ、世界の短編映画祭の募集基準によっては30分まで、20分までというのもあります。企画によっては5分以内とか、1分以内という募集もあるでしょう。

CMでは15秒、30秒のもの、ブランドイメージCMなどで2分ぐらいのものもあります。

CMは商品宣伝のものは物語性が薄いようですが、三幕的構成のものは多いです。

状況設定:「これこれにお困りでないですか?」

葛藤:「そんなときはこの商品!」(カタリスト・PP1どっちで捉えても同じ)

解決:「あなたのお悩み解決」

短編と長編の違いを考えるポイントは尺の長さです。

ビートの観点から考えてみます。

「ライターズルーム」で用いている基本のビートは「15個」ありますが、30秒のCMにすべてを入れ込めるはずありません。

15個のビートは2時間程度の映画に合わせたものです。

60分ぐらいあれば圧縮して詰めこむことはできますが、シリーズものであれば回をまたがせた方が有効な場合もあります。

15~30分ぐらいになると、いくつかのビートを抜いて変則的にする方がバランスが良くなります。

10分ぐらいでビートを詰めこむと、見応えはよくてもワンパターン化した話になりがちです。つまりビートが弊害になる可能性が出てくるのです。

映画祭による何分までが短編映画かという規定はともかく、ビートの観点からみるとと10分程度が「長編的な構成」と「短編的な構成」の境界になります。

短編向けな「題材」とは?

時間が短いということは、キャラクターに感情移入をさせたり、葛藤させたりする時間が短いということです。

これによって選ばれる「題材」は変わります。

たとえば「電車で偶然出逢った人と恋に落ちる」という話なら10分あれば充分に処理できます。

ですが「電車で偶然出逢った人と恋に落ちて、付き合うが浮気してケンカ別れするが、再会して結婚する」までは10分では処理できないでしょう。

処理できないとは、むりやり入れ込むことはできるけど、共感や感動が薄いということです。

おそらく「付き合って~浮気して~ケンカして」といったあたりは、音楽に合わせたモンタージュシーンになります。

モンタージュが行き着くとと「生まれてから死ぬまでの人生を数分に凝縮したモンタージュ作品」になります。アニメに多い短編です。パラパラ漫画とかでネットで話題になるようなものもあります。

老病死のような、人間であれば誰にでも共通するような「題材」には使えますが、一般論だけで、キャラクターの個性などは描き切れないことが多いでしょう。

ディズニーの短編映画『紙ひこうき』はビートの教科書のような見事な作品で、アカデミー短編賞も受賞していますが、キャラクターの魅力という観点からいえば極めてクリシェです。

作品名こそ覚えていませんが、室内で会話をしているだけの短編映画でもドラマやシャレっ気があって魅力的な映画もたくさんあります(低予算なので受賞には弱い傾向がありますが)。

「構成」ではなく「描写」の魅力が際だっているような作品です。

これは10分ぐらいであれば成立しやすいですが、いくら魅力的な会話シーンでも、20分、30分と続けられると、変化に乏しく観客が苦しくなってきます。

以上、要約すると、

10分程度の短編映画では構成の影響力が少ないため、瞬発的なアイデアで魅力的な作品になることもありえるが、10分以上になってくると構成の影響を受ける。

しかし、長編映画のような深いテーマなどに感情移入させるのは難しく、「題材」は「恋に落ちる」程度の尺に見合ったものになるか、モンタージュシーンをつかって駆け足に描くかになる。

といったところです。

すばらしい短編映画では「ドラマの切り取り方」が上手で、下手な長編映画より大きな感動を生むものがあります。

たくさん見ていると、すばらしい作品に出逢えます。

そもそものご質問「短編の魅せ方」の答えにはなっていないかもしれませんが、短編映画には型(構成)にはまらない新しい魅せ方が無限にあるのではないかと思います。

ぜひ、たくさん見てみてください。(※すばらしい作品はぜひ教えてください!)

短編の構成

僕は「ショートショートフィルムフェスティバル」が好きで毎年通って、かれこれ10年以上。

正確に数えてませんが1000本以上は短編映画を見ていると思います。

たくさん見ていると感じますが、短編映画でもやはりパターンがあって、ある時期に分類していたメモがあったので、以下に共有しておきます。

昔に書いたもので覚えていない部分も多いので、質問されても答えかねるようなものですが、パソコンに眠らせておいてもしょうがないのでアップします。

「 」は作品名です。

●家族ストレートドラマ
普通にドラマに取り組んでいる。良作が多い?
「ママ(たち)」(フランス)父が新しい女を家につれてきて共同生活。
「何も心配ない」(アカデミー)親権を奪われた父が娘を誘拐。

●子供の成長
「学校へ」(東南アジア・ミャンマー)学校へ行くためにお金をためる少年。弟を行かせる。
「少年時代」(韓国)金を使い込みバイトして、母の大変さを知る。

●病気・死・孤独
設定に病気か死が絡み、ドラマは少なく感情を淡々と。
「僕はうまく話せない」(アカデミー)吃音の男と難聴の女の出会い。
「春のめざめ」(台湾)母が癌、高校生の姉と弟。
「ニアの扉」(台湾)父が病気で出稼ぎに出される少女。
「ミッドナイトダンス」(台湾)アラサー独身女の冴えない日。
「東京コスモ」(CG1)一人暮らしの女性の妄想、ゴキブリ。
「ネコとオレンジの種」(東南アジア・ベトナム)全身不随の男を世話する女

●戦争が奪う家族や友達(ホロコースト含む)
「ともだち」(アカデミー)コソボ、自転車、振り返ったら撃つ。
「ベアストーリー」(アカデミー)サーカスがホロコーストを暗示

●突然死亡
平凡なシーンが淡々と続いた後に、唐突に殺人や事故が起きる。
「エンパイア」(ベルギー)母が電話、息子がテレビ、父が帰ってきて銃を撃つ
「時間」(東南アジア)男二人の会話、恋人が交通事故
「メソッド」(韓国)映画の自殺シーン。本物の銃弾。

●死後の意識
死んだ後の魂が生きてきた時間を振り返ったり、
「未決事項」(ベルギー)頭に十字架が刺さって死亡。煉獄行きの男が天使に交渉して王子に生まれ変わる

●カメラ固定
「エンパイヤ」(ベルギー)
「フラットライフ」(ベルギー)四分割のマンション。アニメ。

●映像にモノローグ
「人生を駆け抜ける」(地球を救え!)夜にランニングしてる女性に、現代批判

●イジメ(動物)
「エルシティ」(CG1)豚が象に虐められるが、飛行機落下。象の鼻はつけ鼻だった。
「ダムキーパー」ダム掃除の豚が虐められている

●夢・妄想もの
夢オチは少ないが、アクト2自体が妄想で描写が面白くとも変化がないものも。
「東京コスモ」(CG1)一人暮らしの女性の妄想、ゴキブリ
「ホバート」(CG1)ラピュタみたいな空中戦。落下したら生き延びる。
「初心」(CG1)夢破れた少年が、夢で子供の頃を思い出す。
「東京コスモ」(CG1)
「僕の彼女、ロジータ」(東南アジア・マレーシア)彼女を妄想

●輪廻オチ
ラストのオチが冒頭に繋がる。あるいは同じパターンが始まることを予感して終わる。
「スピーディー」(フランス)夫が浮気を隠すために家に走る。妻も浮気してる?
「デスメット」(ベルギー)三兄弟の一人が引っ越してきた女に恋。新しい男が引っ越してきて。
「ナイン」(東南アジア・タイ)アニメ。ネコが力を得て自らも悪魔になる。
「消去」(韓国)人が消えるカメラ。消しても変わらないと悟るが隣の人に自分が消される。

●メタオチ
カメラがフェードアウトするようにひくと、パラダイムがシフトするオチ。
「不気味の谷」第一次大戦の塹壕兵士。博物館の展示になる。
「丘の上のジャック」人魚男の恋愛。水族館の展示。
「エサ」魚が海へ飛び出したと思ったら、料理屋の水槽だった。

●殺人に発展もの(不条理、狂気)
「ユルと蛇(フランス)兄弟と蛇とギャング。殺人に発展。
「アイスコーヒー」(CG1)母を亡くしたサイゴンの少女。暑さとネズミに苛立ち。

●野生性
「シフト」(CG1)森から裸の女。教育するが逃げられて、自分が裸になって森へ。

●未分類
「映画館の女たち」(フランス)ミステリー?映画館の痴漢の男は?
「小さな夢たち」(ベルギー)部屋を踊る人形のような世界。
「痛み止め薬」(韓国)ブレーキングバッドのような話。製薬会社面接。

緋片イルカ 2023.8.8

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