「三幕構成と恋愛(プロットタイプとストーリータイプの違い)」(三幕構成25)

プロットタイプとストーリータイプ

一般的にはプロットタイプとストーリータイプという言葉が同義に使われていますが、僕は二つを以下のように分けています。

プロットタイプ:物語の展開や変化による分類

ストーリータイプ:テーマや題材などによる分類

多くのストーリーに用いられる「恋愛」について、考えてみると、この違いがよくわかります。

具体的に見ていきましょう。

「ロミオとジュリエット」型のプロット

CAT2ブレイク・スナイダー10のストーリータイプでは「相棒愛Buddy Love」という大きいタイプの中に
叙事詩愛Epic Loveとして『タイタニック
禁断愛Forbidden Love『ブロークバック・マウンテン
という二つの派生があります。

これは僕の分類では「ストーリータイプ」による分類です。何が同じで、何が違うかは実際に分析してみると、よくわかります。

プロットポイントとミッドポイントだけの構造をとらえるなら『タイタニック』と『ブロークバック・マウンテン』は同じです。

PP1:恋が始まり
MP:愛の頂点
PP2:別れ
アクト3:もう一度、会おうとするが……

ビートまで細かくみても同じようなタイミングでそっくりな変化が起きていたりします。
しかし、違うところはたくさんあって、それぞれの作品の魅力につながるわけです。

すると「Epic」と「Forbidden」の違いは何なのでしょう?

この二つの作品でいえば、目に見えてわかる大きな違いは『タイタニック』では豪華客船という障害が二人の愛を妨げるところでしょうか。CAT2では同族として『風と共に去りぬ』や『ドクトル・ジバゴ』などが挙がっています。事故や戦争といった、人間にはどうしようもないものが二人を引き裂くようです。

一方、『ブロークバック・マウンテン』の同族には『ロリータ』(ロリコン=ロリータコンプレックスという言葉の語源です)や『招かれざる客』が挙がっています。同性愛、ロリコン、人種差別といった(当時の)価値観や倫理観といったものが障害となっています。『タイタニック』のローズには婚約者がいますが、その程度では「Forbidden」にはならないようです。

では『ロミオ&ジュリエット』はどっちに入るのでしょう?

キャラクターの設定は明らかに『タイタニック』に近いのですがCAT2の分類では「Forbidden」に入っています。基準がよくわかりません。というのも当たり前の話で、物語はひとつひとつ違うので、どこかで線を引くとしても、線の境界に近い作品があります。結局は主観的にならざるを得ないのです。

けれど、構成(ビート)という観点から見れば、上にあげた作品『タイタニック』『ブロークバック・マウンテン』『ロミオとジュリエット』はすべて同じです。だから、僕はまとめて「プロットタイプ」と呼びます。「ロミジュリ」型のプロットとでも呼んでおきます。

「ラブコメ」型のプロット

CAT2では同じ「相棒愛Buddy Love」という大きいタイプの中に、
ロマ・コメ愛Rom-com Loveとして『恋人たちの予感
というものもあります。

CAT2自体が2007年なので古い本ですが『恋人達の予感』(1989)はさらに古いです。同族に挙げられている映画も、世代によってはまったく見たことない作品が多いでしょうが挙げてみます。

いわゆるラブコメ映画です。映画を見たことなくてもパッケージ画像から雰囲気が伝わってくると思います。「ロミジュリ型」の作品に比べて笑顔が多いです。「ロミジュリ」型はバッドエンドで終わる悲劇が多いのに対して、こちらはハッピーエンドで終わる喜劇ものが多いのです。

この型の古典的名作といえば、これです。

アカデミー賞の主要五部門(作品、監督、主演男優、主演女優、脚本)を同時受賞した作品です。

ラブコメはその時代ごとに量産されて、当時は人気があっても忘れ去れてしまう作品も多く、『或る夜の出来事』型といっても伝わりづらいので「ラブコメ」型と呼んでおきます。

このプロットタイプでは、

PP1:関係が始まる(無関心か嫌悪)
MP:お互いに認め合う
PP2:関係が終わる(寂しい)
アクト3:自分の意思で、再会

となります。
これは、男の友情にも当てはまるので、ロードムービー系の二人旅映画なんかも型としては同じです。ロミジュリ型とを分ける決定的な違いもあるのですがテーマやキャラクター論について触れなくてはいけなくなるので……気が向いたら記事にするかもしれません。まあ、それぞれの映画をビート分析してみたらわかります。読書会などで質問いただければ説明します。

サブプロットとしての恋愛要素

もう一つ、どんなプロットタイプにも入っている「恋愛要素」があります。トムクルーズ映画でも007でもいいのですが、アクション映画には必ずといっていいほど美人ヒロインが登場します。その方が華があって売れるから、というところからきたものです。こういった「恋愛要素」は構成上、サブプロットとして展開されます。

この違いはプロットポイントを見ればわかります。アクト2で起きている「非日常」は恋愛ではなくて、アクションやミステリーといった別のメインプロットです。そこに恋愛要素がサブプロットとして入っているのです。やや専門的な話ではサブプロットは通常、ピンチ1というビートから始まりますが、それだとヒロインの登場が遅くなるので、さまざまな工夫がなされて変則的になっていることが多く、そのせいでメインプロットに見えがちだったりするものもあります。

ちなみにCAT2の分類では「相棒愛Buddy Love」という大きな分類の中に職業愛Professional Love『リーサル・ウェポン』まで入っています。こちらはプロットタイプでいえば、バディ要素のある刑事・探偵ものです。これは「バディ要素」と「バディプロット」の違いをごっちゃにしているので紛らわしいところです。

CAT2の分類は、プロットタイプとストーリータイプが混同した分類なのです。

ではラブストーリーとは何なのか?

ラブストーリーとは?

改めて、二つのプロットタイプを並べてみます。

ロミジュリ型 ラブコメ型 抽象化
PP1 恋が始まり 関係が始まる(無関心か嫌悪) 非日常の始まり
MP 愛の頂点 お互いに認め合う 関係の最高潮
PP2 別れ 関係が終わる(寂しい) 非日常の終わり
アクト3 もう一度、会おうとするが…… 自分の意思で、再会 クライマックス

「ロミジュリ型」も「ラブコメ型」も恋愛を扱っているという意味では同じです。だからストーリータイプでいえば僕は「ラブストーリー」と呼びます。サブプロットとして「恋愛要素」があるだけのものは入れるべきではないと思いますが、メインとサブの比率が5:5に近ければ、もはや「ラブストーリー」と呼んでしまって良いようなものもあります。

「ストーリータイプ」としてラブストーリーと呼ぶときにはテーマや題材が「恋愛」であると感じれば、含めていいのです。そこには主観が入ることも許容します。

一方、「プロットタイプ」と呼ぶときには、客観的に構成上の類似点が認められるものに限ります。その点から見ると「ロミジュリ型」と「ラブコメ型」は別のタイプといえます。恋愛をテーマにしている点は同じですが展開が違います。上にあげたように悲劇・喜劇という分け方もありますが「ロミジュリ型」でハッピーエンドもありますし、「ラブコメ型」で悲劇的に終わるものだってあるので、これは型を分ける要素になりません。

物語の抽象度合を高めていくと、ビートだけが残ります。音楽でいえばメロディがなくて「トン、トン、トン」という一定のリズムしかないようなものです。メロディがつくと「ハ長調」とか「イ短調」とかになって、物語にもプロットタイプができくるのです。このメロディの違いが「プロットタイプ」です。

ちなみに物語の型としてもっとも有名なのがモノミスヒーローズジャーニーで、三幕構成のベースになっているものです。「物語はすべて旅である」というようなときには、あくまでストーリーの本質について説明するための喩えなのですが、そのまま「プロットタイプ」になっているものもなります。「ヒーローズジャーニー作品比較」で紹介したような作品です。

創作に役立てるには?

構成を考えるときには「プロットタイプ」がとても役に立ちます。
たとえば「ラブコメ型」は友情にも当てはまると言いましたが、それは「男×女」を「男×男」に変えただけです。それなら「人×ペット」でもいいし「人×ロボット」「人×宇宙人」でも使えるのです。

一例を示すなら、

PP1:機械なんか大嫌いな老人と最新型アンドロイドが暮らすようになり
MP:老人は、機械のいいところを認める
PP2:アンドロイドが故障する
アクト3:再起動して記憶がリセットされるが、取り戻す。

いま、僕が適当に考えたストーリーですが、どこかで聞いたことあるなと思ったなら、それこそが「プロットタイプ」が使い回されているという事実の裏返しです。型を使えば、いくらでも量産できるし、実際、このように物語はくり返されてきたのです。

小説やマンガ連載では長さゆえに、型に当てはまらないものや、複数の型がくっついたようなものが、たくさんあります。初めは学園ラブコメのような物語で始まったのが、いつのまにかバトル漫画になっているなんていうのはよく聞く話です。それでも切りわけて「プロットタイプ」に分けることはできます。

「ストーリータイプ」の方はテーマや題材としての発想のヒントになります。
「恋愛」は人気があるから「ラブコメ」は量産され、アクション映画には「要素」となってまで付いてくるのです。「ラブストーリー」は人気なのです。

テーマや題材は、歴史や文化の変化に伴い、変化していきます。

たとえばSFというジャンルは科学が発達する以前にはなかったものです。
グローバル化で未開の地への冒険物も少なくなりました(『80日間世界一周』なんて映画は、世界旅行をする人が少なかった時代だから通用した映画です。いまではレトロ趣味としての味わいがありますが)。

恋愛で言えば価値観が広がって「ロリータ」や「性的マイノリティ」が作品として受け入れられるようになってきました。SFと組み合わせて機械との恋愛も作られるようになりました。『her/世界でひとつの彼女』はアカデミー脚本賞作品です。

黒人のゲイという題材でアカデミー賞をとった『ムーンライト』もあります。

この「黒人のゲイ」というテーマを、古代ギリシアで描いたらどうなるでしょう? 男臭いスポーツチームの中なら? 戦場の軍隊の中で描いたらそれは「戦争もの」でしょうか?

テーマが前面に出ていれば同じ「ストーリータイプ」に分類できるでしょうが、物語の展開(「プロットポイント」)はどれも別物になるでしょう。
「戦争もの」という大きいストーリーから考えれば、その中にトロイア戦争から、第二次世界大戦があり、イラク戦争や9.11以降が入ってきました。これからはSFとは違う宇宙戦争が入ってくるかもしれません。けれど、その戦況下での、メネラーオスとヘレネーの恋愛や、名もない兵士の恋愛を描こうとしたら、構成上は「ロミジュリ」型という「プロットタイプ」の応用になるのです。

このように「ストーリータイプ」と「プロットタイプ」の違いを明確にわけることで「構成」と「テーマ」のそれぞれにヒントとなるものがあるのです。

緋片イルカ 2020/03/14
2020/03/25追記

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『「三幕構成と恋愛(プロットタイプとストーリータイプの違い)」(三幕構成25)』へのコメント

  1. 名前:うお 投稿日:2021/08/24(火) 10:59:25 ID:a23c4424e 返信

    はじめまして、うおと申します。

    最近このサイトを知り、目から鱗な体験をしております。
    これからも熟読し、理解を深めていこうと思います。

    今日は「ラブコメ」型の第二幕に関して質問があります。
    ご教示頂けますと幸いです。

    例えば『或る夜の出来事』だと、PP1における主人公・ピーターの目的は何になると分析していますか?
    このサイトを知る前は、単純に「相手役・エレンをNYまで連れていくこと」としていましたが、「ラブコメ」型という人間関係の変化を各ポイントと捉える型を知り、この目的は違うのではないか?と思いだしました。

    悩んだ末に、「エレンをただの取材相手として接すること」が目的で、その目的を阻む敵が「魅力あるエレン」?と考えたりしましたが、解釈が間違っているような気がしてなりません。

    メインプロットがラブストーリーの話がうまく掴めません…
    (『或る夜の出来事』だとメインプロットは「ラブストーリー」で、サブプロットは「NYに行くまでの出来事」?それとも2つのラインで捉えるのが間違い?など)

    長々と疑問をぶつけてしまってすみません。
    よろしくお願い致します。

  2. 名前:緋片 イルカ 投稿日:2021/08/25(水) 02:42:24 ID:8caf82a84 返信

    うおさん。サイトをご覧いただき、コメントをお寄せいただいたこと、嬉しく思います。

    『或る夜の出来事』に関する具体的なご質問でしたが、僕がこの映画を見たのが、もう何年も前のことで的確な返答を、即答することができないと感じました。申し訳ありません。

    その上で、うおさんが感じている疑問点は「ここではないか?」と思うところがありましたので、以下の説明で返答に代えさせていただきます。

    キャラクターには(人間でもそうですが)、表面的な行動と、内面的な感情や動機があります。たとえば「何でも願いが叶う魔法のランプ」があったとします。悪役が「世界を支配するため」にこのランプを求め、主人公がそれを「阻止するため」に手に入れようとするストーリーがあったとします。

    ここでは、主人公も悪役も「魔法のランプを手に入れたい」という表面的な目的は同じです。これをExternal(イクスターナル)な目的といいます。両者は、ランプを手に入れるために具体的な行動をしていきます。

    それに対して「なぜ、ランプが欲しいのか?」にあたるような、感情や動機をInternal(インターナル)な目的といいます。

    主人公がシンプルな性格のヒーローであれば「世界を守りたい」という動機で、イクスターナルとインターナルにあまり差のないキャラクターが成立します。低年齢向けのアニメや、古い時代のキャラクターなれ、これで成立します。アンパンマンが「街を救う」のに動機はいらないのです。

    一方、アメコミのヒーローや近年のジャンプマンガの主人公を見てもわかるとおり、最近は主人公が複雑な悩みやトラウマを抱えています。イクスターナルとして「世界を守る」という行動をしていきながら、インターナルな目的に、魔法のランプの2つ目の願いで「死んでしまった恋人にもう一度会いたい」といった個人的な動機を持っていたりします。

    このように、キャラクターのもっている目的は1つとは限りませんし、ストーリーの途中途中で変化もしていますが、分析やストーリーを進める上ではイクスターナルな目的の方がカギとなります。

    映画ではダイアローグやモノローグ中心でストーリーを展開すると、人物やカメラの動きが少なくなり、紙芝居のようになりがちです。だから、演出家も脚本家も、キャラクターを動かすようにと指導されます。それゆえ、インターナルよりも、映像として映るイクスターナルな目的の方が重要視される傾向があります。

    (※会話中心でも面白い映画はたくさんあり、演出上、変化をつけることも可能です。「会話中止がいけない」ということは決してありませんが、映像的な特質を理解していない人がやると失敗しがちなので、初心者向けの指導としては正しいといえます。)

    また、映像に映っている人物が何を考えているかは、主観的になりがちという意味でも、分析する上では、まずはイクスターナルの目的を押さえることが大切だと言えます。

    『或る夜の~』の内容に関して記憶はありませんが、うおさんが仰られている「エレンを連れていく」というのはイクスターナルな目的だと思われます。ラブストーリーは「恋愛」というインターナルなものをテーマとしていますが、あくまでイクスターナルなプロットポイントやミッドポイントが明確にあると思います。とくにコメディ映画は「心の機微」といった繊細な感情よりも「好きだけど伝えられない様」などを端から見て面白がるようなところがあるので、イクスターナルから押さえた方が掴みやすいと思います。

    イクスターナルの構成を、まず押さえた上で、その過程の中で「感情」がどう変化していっているかを検討していくと、キャラクターの微妙な心の変化が見えてくることがありますし、反対にキャラクターの薄っぺらさが浮き彫りになることもあります、。

    ハリウッドの分析法ではイクスターナルとインターナルを分けてアークを掴むという考え方がありません。Save the Catのビートシートでも、両者を混同していることが多々あります。僕は必ずしも、一本のアークで捉えるべきとは思いません(※一本では群像劇のようなものは捉えきれません)。

    このサイトの中級編と分類している記事では、イクスターナルなものは「プロットアーク」と呼び(造語です)、インターナルなものは「キャラクターアーク」と呼んで、分けて掴んでいくようにしています。ちなみに2本のアークとサブプロットとは違います、念のため。「ストーリー価値とアーク」(プロットアークとキャラクターアーク)(中級編2)

    映画によっては、2本がほぼ一致しているものもありますし、極点にズレていたり、そもそも一本しかないような映画もあったりします。両者のアークを分ける必要がないときもあります。ボヘミアンラプソディの記事は参考になるかもしれません。「クイーンというバンド」としてのアークと「フレディという主人公」としてのアークがあります。

    分析は正しい答えがあるものではなく、根本は主観的な判断でしかないので「自分が納得いく」掴み方が一番、大切かと思います。創作をされる方であれば、それを「応用できる」のが次の目的でしょうか。このような回答で、うおさんの理解の手助けになれば幸いです。

    なお、隔月で『リモート分析会』という映画を一緒に見て分析する会を開催しております。ここではSave The Catの「10のストーリータイプ」に基づき、作品をとりあげているのですが、「バディプロット」の回で『或る夜~』をとりあげてみるのもいいかもと思いました。とはいえ、次回の候補作は決まっているため、早くとも12月頃になってしまいますが・・・ご興味ありましたら、こちらなどもご検討いただけば、嬉しいです。

    緋片イルカ

  3. 名前:うお 投稿日:2021/08/26(木) 09:46:13 ID:83570731b 返信

    緋片さん、返信ありがとうございます。
    とても詳しく解説して下さり、感謝いたします。

    緋片さんの解説を読んで、私はプロットアーク(メインプロット、サブプロット)、キャラクターアークの区別が出来ていないことがわかりました。
    『或る夜~』でもMPにインターナルな出来事しかポイントとしてとっていなかったので、もう一度鑑賞してイクスターナルなMPを探してみようと思います。

    『ボヘミアン・ラプソディー』はまだ見ることが出来ておらず、記事を読まないようにしておりました…教えてくださりありがとうございます。
    近日中に鑑賞し、参考にさせていただきます。

    『リモート分析会』で『或る夜~』を取り上げて頂ける件、とても嬉しいです。ありがとうございます。
    12月までに『或る夜~』含め他のラブストーリーも見て備えておこうと思います。

    あやふやな疑問に丁寧に答えてくださりありがとうございました。
    今後ともよろしくお願いいたします。

  4. 名前:緋片 イルカ 投稿日:2021/08/27(金) 00:01:11 ID:fff5c15ff 返信

    何らかの参考になれば幸いです。
    よかったら、記事になっていないもので、分析結果など教えてください。
    いろんな人の意見を聞くと見えてくるものがありますので。

    また、いつでも、なんでも、お気軽にお問い合わせください。今後ともよろしくです。

  5. 名前:うお 投稿日:2021/08/30(月) 21:07:40 ID:2a0eeb0bf 返信

    緋片さん、返信が遅くなり申し訳ありません。

    『ラブソングができるまで』(103分)の分析結果をお送りいたします。

    カタリスト:コーラから楽曲提供の依頼(5分) or ソフィーと出会う(7分)?
    PP1:2人(アレックスとソフィー)で楽曲作りスタート(27分)
    ピンチ1:こだわりが強いソフィー(38分)
    MP:コーラに楽曲採用される(45分) or 結ばれた2人(56分)?
    ピンチ2:コーラにアレンジについて物申すソフィー(74分)
    PP2:言い合いになり、ソフィー去る(79分) or ソフィーがフロリダへ行く宣言、離れる2人(83分)?

    ●アレックスのキャラクターアーク●
    「WANT」…”過去に生きる元スター”としてこのまま生きていきたい(現状維持したい)
    「プロット上のゴール」…コーラに楽曲提供すること(そして巡業を復活させたい)
    「嘘」…自分には作曲の才能はないという思い込み
    「ゴースト」…ソロアルバムが酷評された
    「NEED」…自分が作る曲に自信を持つこと

    ●ソフィーのキャラクターアーク●
    「WANT」…文章を書く仕事に就きたい
    「プロット上のゴール」…コーラに楽曲を提供すること
    「嘘」…自分には文章を書く才能はないという思い込み
    「ゴースト」…憧れの作家に小説のモデル(凶悪女)にされ、小説の中で才能を否定された
    「NEED」…書けない理由を人のせいにしないで、最期までやりきること

    以上私の分析結果になります。
    …実は今回コメントするにあたって、映画をもう一度見直したんですが、考えれば考えるほどわからなくなってしまい、何をどう質問すれば良いのかもわからなくなってしまいました。

    私は今までキャラクターアークを、キャラ達の「思い込みの訂正」とか「間違った考え方の変化」みたいなものをとるイメージでいたのですが、これがそもそもの混乱の原因ではないかと思っています…(ラブコメなんだからもっとラブな観点でとるべきなのかな?)

    間違いだらけかと思いますが、緋片さんの見解をお聞かせください。
    長文失礼しました。

  6. 名前:緋片 イルカ 投稿日:2021/08/31(火) 00:02:05 ID:bad17b6bf 返信

    コメント&分析ありがとうございます(返信の遅れなど気になさらずに)

    ずいぶん懐かしい映画ですね。すてきな、いい映画ですよね。
    内容の詳細は覚えていませんが、分析の文章を見る限りスッキリしているように見えます。

    PP1:2人(アレックスとソフィー)で楽曲作りスタート(27分)

    MP:コーラに楽曲採用される(45分) or 結ばれた2人(56分)

    PP2:言い合いになり、ソフィー去る(79分)

    細かいビートは置いておいて、という三点はとてもスッキリしています。

    PP1で「アレックスとソフィーの関係」という旅や非日常が始まり、PP2で終わるという、始まりと終わりの構造が見えます。

    もちろん、PP2の終わりは、仮の終わりで、もう一度、旅に出るクライマックス=アクト3に入ります。

    MPは「旅=二人の関係」での頂点にあたるようなシーンで、これも仮の頂点ではあるのですが、「コーラに楽曲採用される(45分)」も「結ばれた2人(56分)」どちらも頂点として違和感はありません。どちらでとるかは、解釈の好みとか、映像的な感触もあると思いますが、どちらでも説得力はあります。

    プロットアーク的には「楽曲」の方で「結ばれた二人」の方がサブプロットかなという感じがしますが、それなら「ピンチ」がソフィとの関係になっているのともぴったりきます。

    以上、構成としてはしっかりと掴まれているような印象を受けます。ここまで掴めていれば、ログラインとして、この映画がどういう映画かということを、まとめられるかとも思います。そんな風に掴めれば、一作品としての分析としては充分ではないかな?とは思います。

    キャラクターアークとして挙げられている「WANT」「プロット上のゴール」「嘘」「ゴースト」「NEED」については、個人的な印象ですが、種類が多すぎて、これが混乱の原因かもと思ったりしました。

    wantは構成上で必要な目的を端的につかめばいいので、MPに向かう動機として「楽曲を作る」とかで充分ではないかなと、僕なら考えます。キャラクターの内面は、潜在意識とか無意識まで考え出すと心理分析のようになってしまい、キリがないので、あくまで表面的な行動原理を押さえるに留め、矛盾するようなシーンがあるときに「別の願望があるのかな?」ぐらいにとらえていく方が、つかみやすいと思います。

    自分の創作であれば、主人公について考えることは損にはならないと思うので、どれだけ細かく考えていってもいいと思います。五種類もの項目の、それぞれの効果や違いを扱いこなせるのであれば、とても深い分析になると思います。

    僕はそこまで扱う自信はないです。手間がかかり過ぎるとも感じます。ハリウッドのアナリストは、ときに何千万ドルもかけた映画の、根幹である脚本を分析するのが仕事なので、ものすごく深いところまで考える意義もあるし、それに見合うだけの時間と報酬も得てやっていますが、僕のような素人が勉強の一環としてやるには、どこかでラインを引かないと、キリがなくなってしまうと思っています。

    あくまで、ご自身の「分析の目的」が何なのか?というところもあるかと思います。
    分析に、一つの答えがあるものではないので「正解」捜しの作業になってしまうと、迷子になってしまう気がします。

    僕の場合は、あくまで「自分の創作への応用」が目的なので、面白味のエッセンスを盗むことや、つまらない作品でも失敗の原因やリライトのポイントを探ることが達成できれば良しとします。分析結果が、他の人と違っていても、自分が納得していればいいし、他人の意見でなるほどと思うことがあれば、それも取り入れればいい、ぐらいに考えています。

    うおさんにおかれましては、同じ作品の分析を、いろんな人と話し合ってみることで見えてくることが、あるかもしれないとは思いました。

  7. 名前:うお 投稿日:2021/09/03(金) 23:33:49 ID:463ef6ef4 返信

    緋片さん、返信ありがとうございます。

    『ラブソングができるまで』、劇中で歌われている曲がパロディっぽくて好きなんですよね。
    典型的なラブコメかなと思い選んでみました。

    ログラインを考えてみました。

    「元ポップスター・アレックスが、ソフィーと楽曲制作をして、恋人になる」
    「元ポップスター・アレックスが、ソフィーと楽曲制作をして、アレンジなしの採用を得る」

    …2つ出来てしまいました…。
    ラブコメなので前者かなと思いますが、どうでしょうか?
    何度も質問返ししてしまってすみません!

  8. 名前:緋片 イルカ 投稿日:2021/09/04(土) 13:41:50 ID:28567bf65 返信

    コメントありがとうございます。

    ああ、僕はもの凄い勘違いをしてました!
    『ラブソングができるまで』と『天使にラブソングを』を勘違いして、懐かしいと言ってしまいました(うおさんの分析の文章を見て、そんな映画だったかな? でも、見たの小さい頃だったしな。なんて思ってました)。

    改めて検索してみて『ラブソングができるまで』は見たことがありませんでした。たいへん失礼しました!

    その上でですが、ログラインの文章、2つとも違和感はないと思います。
    ログラインも一つに絞らなくてはいけないというものではないので、ご自身がどちらもしっくりくるのであれば、2つでも構わないと思います。

    あとは、予告編や宣伝方法を見ると見えやすいのですが、映画として何を売りにしようとしているのかというところは押さえておくと良いのかもしれません。作品の立ち位置のようなものとも言えるます。

    他の似たような映画がいっぱいある中で、

    「この映画のオリジナリティはどこなのか?」

    「それが効果的で、伝わっているか?」

    「観客の反応はどうだったか?」

    こういうことと、合わせて構成や作品をみておくと、見えてくるものもあるかと思います。

    見たことない作品が山ほどありますし、掴みきれないものもありますが、僕で答えられることでしたら、お答えできるよう努めますので、何かありましたら遠慮なく、コメントください。

  9. 名前:うお 投稿日:2021/09/07(火) 00:23:19 ID:6a155a5f5 返信

    緋片さん、返信ありがとうございます。

    確かに”ラブソング”と言えば『天使にラブソングを』が思い浮かびますよね!
    謝らないで下さい…!私の方こそ説明不足になってしまいすみませんでした。
    ちなみに『天使にラブソングを』も良い映画ですよね。

    ログラインについて、どっちだろう…と思案していたのですが、一つに絞らなくてもいいのですね。

    今回質問する中で気付いたことは、私は細部を気にしすぎて、作品を大まかに把握する意識が低いということでした。
    予告編を参考にすることや、ログラインを考えることは作品を俯瞰で見るのに役立ちそうです!
    実践していきたいと思います。

    8月のお忙しい中にもかかわらず、何度も丁寧にお答えくださりありがとうございました。
    自分の納得する形を見つけていきたいと思います。
    もしかしたらまた質問してしまうかもしれませんが、その時はよろしくお願いいたします。
    心よりお礼申し上げます。

  10. 名前:緋片 イルカ 投稿日:2021/09/07(火) 02:37:31 ID:c5f051ee5 返信

    何らかのお役に立てましたなら幸いです。

    「大まかに把握する」というのは確かに大切かも知れません。むかしはプロットポイントしか概念がなかったのですが、セーブザキャットが浸透してからは、初心からビートシートで入る方もいて、数が多くて混乱するのかもと思います。

    各ビートの中でも重要度は違うので(たとえばディベートなんかより明らかにカタリストやターニングポイントの方が重要です)、まずは大局から三幕をつかんでから、細かくしていく方が、わかりやすいと思います。

    何かありましたら、いつでもコメントください。
    例に挙げていただいた映画作品も、何らかの形でフィードバックできればと考えております(最近、書く方にを追われていて、このサイトに手が回ってないので、いつ返せるか不明で申し訳ないですが)。

    今後ともよろしくです。

  11. 名前:緋片 イルカ 投稿日:2021/09/20(月) 00:42:52 ID:bcb884085 返信

    『ラブソングができるまで』の分析をしました。
    https://irukauma.site/review/analysis/21221/

  12. 名前:緋片 イルカ 投稿日:2021/10/17(日) 22:16:23 ID:f2e434dec 返信

    『或る夜の出来事』の分析をしました。
    https://irukauma.site/review/analysis/21371/