小説『ルーム2』(709字)

 初めての〝ルーム〟は痛かった。
 ユータくんの言葉が体の奥にガシガシと響いてきて、わたしの存在が消えてしまいそうで、こわかった。
『コーヒー飲む? ココアもあるけど』
 目を開けると、ユータくんはシャツを脱いで上半身が裸だった。
『どうして脱いでるの?』
『シャワー浴びようかと思って。ルームすると汗かかない?』
 体に意識を向けておどろいた。ニットと背の間がびしょびしょになっていて、下着までが濡れている。漏らしてしまったのかと思ったが、
『女の子の体はそうなるんだよ』
 ユータくんは慣れているようだった。
『お風呂、一緒に入る?』
と、ユータくんが言ったけど、どうしてそんな小さな子供みたいなことをするのかわからなくて断った。
『昔の人って、体を使ってセックスしたんだって』
『体を?』
 わたしはベッドに寝転んで天井を見つめた。ユータくんのシャワーの音が聞こえる。
『裸になって抱き合ったんだって』
『なにそれ、キモチわるい』
 国や時代によって価値観がまるきり違うというのは理解しているけれど、他人の体に触れるとか、ましてや抱き合うなんて、人を殴るほど野蛮で暴力的だ。
『今でも、やる人いるんだって?』
『ヘンタイじゃん』
 ユータくんがタオルで髪を拭きながら出てきた。股の間には男性器がぶら下がっていた。子どもの頃、父親のをひっぱって怒られたことを思い出したら笑えた。
『そのヘンタイプレイ、してみる?』
 ユータくんが言った。冗談ではなさそうで、ちょっとこわい。
『ぜったいしない』
 わたしはシャワールームへ逃げ込む。
 汗ばんだ体に触れながら、ユータくんと抱き合う姿を想像してみた。
 背筋がゾクっとした。温度調節のスイッチが切れていて、シャワーからは冷水が噴射されたのだ。

(了)

緋片イルカ2019/04/16

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