『ベストセラーコード』の7つのプロット

ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』はテキストマイニングによって、アメリカのベストセラー小説を分析した結果について書かれています。かんたんに言えば「AIにベストセラーの法則は見抜けるか?」です。
どのプロットでも感情曲線のカーブが変化する地点が、全体の30-35%、50%、60-65%にあるというのは「プロットポイント1」「ミッドポイント」「プロットポイント2」に見事に相当します。
詳しくは書籍を読んでいただくとして、AIが導き出したプロットの7つの型を紹介しておきます。説明文章は本文の要約。()内の名称はイルカが見分ける便宜上に勝手に名付けました。

●プロット1(ブッカーの喜劇)
厳しい状況から、徐々に幸せに向かって行くストーリー。クリストファー・ブッカーいわく「混乱から光明へ」。
作品はジョン・グリシャム「依頼人」、キム・エドワーズ「メモリー・キーパーの娘」、ジェイムズ・パタースン「I, Alex Cross」、ノーラ・ロバーツ「魔女と魔術師―光の輪トリロジー」、スー・モンク・キッド「The Invention of Wings」「リリィ、はちみつ色の夏

●プロット2(ブッカーの悲劇)
プロット1の逆アーク。最後は希望。難しい状況に置かれた主人公。誤解によって間違った決断をしてしまうことが多い。主人公の内なる葛藤や欠点がストーリーの中心になる。それが原因で不幸に陥る。主人公に苦難の道を歩ませる悪役が存在感を示したり、人生の厳しさについて語られる。最後の20%部分では、哀しい現実や厳しい状況を受け入れる。主人公は自分の間違いに気づくが時すでに遅し。たいていは哀しいエンディング。
作品はローレン・ワイズバーガー「プラダを着た悪魔」、ジャネット・イヴァノヴィッチ「Notorious Nineteen」、トム・ウルフ「虚栄の篝火」、トム・クランシー「レインボー・シックス」、アンソニー・ドーア「すべての見えない光

●プロット3(シンデレラストーリー)
ブッカーいわく「貧乏から金持ちへ」。苦難と成功のあいだに大きな動きがある。
作品は「シンデレラ」、「ジェーン・エア」、アニータ・シェリーヴ「Testimony」、エィミ・タン「キッチン・ゴッズ・ワイフ」、スティーブン・キング「ミザリー」、ロバート・ラドラム「戻ってきた将軍たち」、リアーン・モリアーティ「ささやかで大きな嘘

●プロット4(再生型・逆シンデレラ)
主人公が変化を経験して、新しく生まれ変わる。多くの場合、闇や堕落に導く強い力に影響されて、価値観を揺さぶらる。アクト1では感情的に下降。自信喪失、自尊心低下。アクト2で新たな学び、経験。変化と格闘を続けながら、区切りがつかないまま、あるいは危機に陥ったまま、終わる。ハッピーエンドにならない。
作品はE・L・ジェイムズ「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ 」、ヒラリー・マルテル「ウルフ・ホール」、ポーラ・マクレイン「ヘミングウェイの妻」、スティーブン・キング「ザ・スタンド」、ジョディ・ピコー「Leaving Time」、ケイト・モートン「忘れられた花園

●プロット5(旅と帰還)
50%付近の前後に谷があるW型。ブッカーいわく「旅と帰還」。主人公はまったく異なる世界に直面、引き込まれ、試練を経験。克服して戻ってくる。心や知性の旅という場合もある。
作品は「不思議な国のアリス」、「ガリヴァー旅行記」、ニコラス・スパークス「きみに読む物語」「ラスト・ソング」、コーマック・マッカーシー「ザ・ロード」、ジェイムズ・パタースン「Hops to Die」、イレーヌ・ネミロフスキー「フランス組曲

●プロット6(探求型)
何かを探し求めて冒険する。未知なる場所でモンスターと戦い、希望は打ち砕かれ、冒険を終える。
作品はジョナサン・フランゼン「コレクションズ」、サルマン・ラシュディ「悪魔の詩」、クリスティン・ハナ「Firefly Lane」、ミッチ・アルボム「天国からの電話」、エミリー・ギフィン「Love the One You’re With」

●プロット7(モンスター退治)
カート・ヴォガネットいわく「穴に落ちた男」。ヒーローと悪役が登場。悪役は人々に危機をもたらす。ドラゴンでも、病気でも。
・主人公が立ち向かい、幸せを取り戻す。
作品はクリス・クリーヴ「Little Bee」、アニータ・ディアマント「The Boston Girl」、ジョン・グリシャム「陪審評決」、マシュー・クイック「世界にひとつのプレイブック」、シャーレイン・ハリス「トゥルーブラッド8 秘密の血統

プロットの型は6つしかないという研究もあるそうです。こちらはビッグデータの元にしている物語自体がやや古典的なようで、1つ少ないのかなと思ったりします。

AIの見つけた型がすべてではないし、テキストマイニングは統計なのでこれに当てはまらずにベストセラーになるものがあるとは思います。そういう作品に似たプロットが流行れば、それが新しい型になっていくのだと思います。ただブレイク・スナイダーやシド・フィールドが説明にもちいるアーク(感情曲線、カーブ)はこのうちの1、2個にしか当てはまらないというのはハリウッドの呪縛だと思います。人間の思い込みを崩すには、ニュートラルなAIの意見を参考にするのはとても価値があると思います。過去にたまたまヒットを出したことがある思い込みの激しいベテラン編集者よりも、テキストマイニングの検証の方が、実際に売れると思います。

ともかく興味のある方は、一読をおすすめいたします。

ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

(緋片イルカ2019/02/12)

参考→プロットを考える補足「キャラクターアークとは?」

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