エリザベス・キューブラー・ロスは癌患者へのインタビューを通して、死に直面した人間に5つの段階があることに気づきました。
第一段階:「否認と孤立」
第二段階:「怒り」
第三段階:「取り引き」
第四段階:「抑うつ」
第五段階:「受容」
この段階はとても有名なのでご存じの方も多いかと思います。これをビートとして利用するという発想をもつことで、キャラクターのリアクションをよりリアルに描く参考にすることができます。
物語では「家族の死を報される」「死を宣告されたり」といったシーンはよくあります。書き慣れていない作者は、家族の死を報された瞬間にショックを受けて泣き出したりするキャラクターを描いてしまいます。とくにそういう体験のない作者が、想像で書いたときにそういうシーンを書いてしまうのだと思います。しかしキューブラー・ロスの第一段階には「否認」とあります。ショックな出来事に直面した瞬間の自然なリアクションは信じないことなのです。事実を受け止めかねたときには「そんなはずない」「ウソだろ?」と認めないのです。涙を流すのは受け入れた後のはずです。
キャラクターの性格や、どこまでショックな出来事を予感していたかによって千差万別です。もちろん「否認」するというのも多くの人がそうするということで絶対の答えではありません。ある程度、死を予感していた状況であれば「ああ、やっぱり……(死んでしまったんだ)」とすぐに泣き出すこともあります。ショックのあまりに、感情や思考が追いつかないまま涙が流れたり、気を失ってしまう人もいるでしょう。どれが自分のキャラクターのリアクションとしてふさわしいのか?
リアクションの引き出しはストックしておいて損はありません。
いずれにせよ、きちんとリアリティをもった人間を描くということは、人間を観察し、勉強し、想像することが大切だと思います。
(緋片イルカ2019/01/19)