書籍『反省させると犯罪者になります』『いい子に育てると犯罪者になります』岡本茂樹(読書メモ)

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『反省させると犯罪者になります』岡本茂樹
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『いい子に育てると犯罪者になります』岡本茂樹
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感想:
出版社による扇情的なタイトルはともかく、刑務所での更生支援をされている方の話。心理学的な観点ではセオリー通りのことで真新しいことを言っているとかではないが、現場感覚でもそれがいかに大事かということがわかる(現場がいかにズレているかも)。作文の読解やロールレタリングなどは物語にも通じるところを少し感じた。キャラクターのバックストーリーを考えるときにも参考になるだろう。

「自分が弱かったから」という言葉は、覚醒剤使用の受刑者からよく聞く言葉です。酒井さんも、覚醒剤に手を染めた理由として、「弱い人間」だったことを強調しています。そして、「弱い人間だった」→「『強さ』が欲しかった」「強さがなかった」と考えています。この考え方は一見「当たり前」のように思われるかもしれませんが、犯罪心理の視点から言うと、非常に危険です。「弱い人間だった」から、「強い人間」になろうと考えるからです。
 では、「強い人間」になろうと考えることがなぜ危険なのかと言うと、「強い人間」になろうとすることは、「しんどいことがあっても、弱音を吐かない」「しっかりしないとダメ」「我慢しないといけない」といった価値観を持つことになるからです。こうした価値観は、もちろん必要ではありますが、見方を変えると、しんどいことがあっても元気に振る舞ったり一人で悩みを抱え込んだりして、ストレスをため込み、自らにプレッシャーをかける生き方になります。
 確かに、覚せい剤を使わないためには、我慢しないといけないのですが、「いい我慢」ができないと続きません。「我慢」している姿と「抑圧」している姿は、表面上は同じに見えます。しかし心のなかはまったく違います。「悪い我慢」は「抑圧」になります。それが爆発()=犯罪)を引き起こすのです。これが再犯に至るパターンです。だから、「いい我慢」をしないといけません。酒井さんは「悪い我慢」をしているのです。
「いい我慢」ができるには条件があります。自分の「しんどさ」を解放することです。具体的には、人に甘えて、人に頼って、弱い自分を人にみせられて、しんどさを吐き出し、自分が弱い人間であることを認めるのです。そして「ありのままの自分」を受け入れるのです。(『いい子に育てると犯罪者になります』p.139-140)

ここで指摘しておきたいことがあります。「わがままを言う人」は、「人との付き合い方がうまい人」という見方ができることです。「わがまま」とは、言い方を変えれば、「自分の素直な気持ちを表現できている」ことです。それは、人とつながるためには良い方法です。「枠」を越えたわがままの出し方は、心に何か問題を抱えている可能性が考えられますが、わがままを全く出せないと他社からは「魅力のない人間」に映ってしまいます。(『いい子に育てると犯罪者になります』p.174-175)

イルカ 2023.4.4

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