10分脚本における「狙い」についての補足

ライターズルームで「狙い」に何を書いていいかわからないという質問があったので、これについて補足します。

10分脚本における「ログライン」と「狙い」の記事でも書いているとおり、一言でいうなら「作者が何を書きたいのか?」です。

もう少し言い換えるなら「作者が伝えたい思いやメッセージ」でしょうか。

「あなたは何故、この作品を書いたのですか?」という質問への答えでもよいかもしれません。

ただし「課題で提出しないといけないから」はなしです。

それは外面的な動機だとしても、そのストーリーの「題材」や主人公を選んだ動機はあるはずです。それは作者の意図です。

めちゃくちゃ初心者であれば「読んでいたマンガのキャラクターをモデルにしました」でも構いません。

ちいさな子供が、好きなキャラクターをお絵かきするように、好きなものを真似していくところからオリジナリティが出てきます。

この「狙い」を書いてもらっている意図のひとつに「自分が何を書きたいのかを自覚」できるようになってもらいたいというのがあります。

「読んでいたマンガのキャラクターをモデルにしました」を深掘りしていくなら、作者はそのキャラクターが好き、あるいは嫌いゆえ気になったということもありますが、とにかく「気になった」ということですし、さらに深掘りするなら「そのキャラクターのどの部分に惹かれたのか?」と考えて、自分が書きたいと思うテーマや感情を自覚していってほしいということです。

自分が書きたいものが見えてくると、得意ジャンルが見えてきたり、テーマも見えてきますし、もっと大きなことを言えば「物語を書くことに対する人生の意義」のようなものが見えてきます。

作家になるということは、一生書きつづけることで、意義を感じずに書いていたら労働のように「書かされる」だけで苦しくなります。たぶん、作家を続けられないでしょう。

そこまで言わずとも、自分のテーマや個性のようなものがないと、オリジナリティが出てこないし、結局、仕事としても作品を評価されないとも言えます。

ビートだけでは面白い物語は書けませんが、初心者のうちはビートを理解するのに手一杯かもしれません。

まだ、ビートすら使えていないというのであれば、今回の脚本は「wantがはっきりするように書きました」というような「狙い」でも構いません。

これも「あなたは何故、この作品を書いたのですか?」の答えの一つになっています。「自分が何を書きたいか」を自覚しているともいえます。

まずはビートをしっかり身につけたいと思って、そのために書いたのであれば、それは立派な「狙い」です。

「狙い」を書いてもらう、まったく別の意図は「読者へのヒント」です。

本来、ジャンルとかテーマなどは作品の中から伝わらなければいけないのですが、拙い物語からは「狙い」がわからず、何を書きたいのか読みとれない場合がよくあります。

10分脚本は練習なので「何を狙いとして書いたのか」はっきり書いちゃってくださいということです。

たとえば「ホラーなのに、コメディ満載のストーリー」が提出されたとき、読者は笑えばいいのか、怖がればいいのか、戸惑うことがあります。その戸惑いを狙ったのであれば成功といえるかもしれませんが、初心者の場合、技術不足でブレていることの方が多いと思います。

読者側がフィードバックするとき、作者がどっちを狙ったのか明確にしてくれないと、意見が言いづらく、修正の方向性も示せません。

「狙い」に「ホラーとして、怖がってもらえるように書きました」とあれば、この辺の笑いが怖さを半減させてるよね?と言えます。

「狙い」の発展としては、仲間内の読者の先に、観客というのを想定していけると良いと思います。

「ホラーとしてめちゃくちゃ怖がらせる」という「狙い」で、それに成功しているなら、もはや仕事に繋がる可能性があります。

「こういう題材なら商業的価値があるだろう」といったところまで狙っていけるようになれば、プロに近づいていけます。

「狙い」に何を書いていいかわからないと感じるのは、もしかしたら「こういう狙いなら合格」というような答えのようなものがあると勘違いしているのかもしれません。

「狙い」に答えがあるとしたら、むしろ作者自身の中にしかありません。

それぞれレベルが違うし、それぞれの課題があるので、他人と較べて良い悪いもありません

わからないなりに書きつづけることで、自覚が生まれ、テーマや商業的価値などに発展した狙いが書けるようになると良いと思います。

「わからない」のは考えて答えがでるものではなく、書きつづける経験のなかでわかってくるものとも言えると思います。

(※ちなみに「商業的な価値」という基準での良い悪いは、わりとはっきり言えます。僕が採点で、脚本1点を付けるのは、まだまだ商業価値はないと感じるからです)

緋片イルカ 2023.8.6

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