※このページで脚本が読めます(初稿と修正稿、PDF形式)。
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初稿(★3.91)
雨森れに
脚本_雨森21v1『知られざる完全不倫』(何も起こらない話)_250304
●自己採点
「好き」1.5「脚本」1.7
●ログライン
なつみとW不倫関係にある和樹は、なつみにペアリングを贈りふたりでいる時だけ着けているが、和樹の浮気癖を心配する沙理の目の前で落とし疑念を持たれるも、結婚指輪が体形の変化で入らないと誤魔化し事なきをえる。
●テーマ/ フック
日常に隠れる罪/ 不倫相手にペアリング
●自由感想
テーマ触媒の「何も起こらない話」にできたのか自信がありません……
ちょっと胸糞な話なんですが、よろしくお願いします。
テーマ触媒4:「ことわざ」「母親」「光と影」「何も起こらない話」
フィードバック
米俵
●採点
「好き」2.5 「脚本」1.8
●ログライン
不倫の前科があり、現在もW不倫中の和樹は、指輪を落としたことで、妻にバレそうになるが、太ったという理由で誤魔化し、事なきを得る。
●フック/テーマ
疑う側と騙す側の心理戦/裏切りと信頼
●カタリスト
上着から何かが落ちる
●不明点・不自然な点
和樹が主人公だよな?と感じてしまう部分がありました。
特に沙理が出てくると沙理にスポットが当たるので誰が主人公かよく分からなくなってしまっているような印象を受けました。
和樹も、バレたくないという気持ちが分かるようなト書き、沙理やなつみに対する心情が分かるト書きを増やした方が良いように感じました。
●感想
沙理の心情の描き方が大変勉強になりました。面白い部分も沢山あったので、修正稿で、和樹に焦点があたる形に出来ると良い作品になると思いました。
脚本太郎
●採点
「好き」2.7「脚本」1.7
●ログライン
なつみとダブル不倫中の和樹は、なくしたはずの結婚指輪(実際は右手用に新しく作ったなつみとのペアリング)を妻の沙理の前で落としてしまう。沙理に不倫を疑われ、はめてみるよう促されるも、和樹は「太ったから」とごまかし、事なきを得る。
●フック/テーマ
指輪を落としたシーンの駆け引き/信頼と裏切り
●カタリスト
武田沙理(30)がクロークに現れる。
●不明点・不自然な点
・柱1で、指輪をつけているのが左右逆というのがパッと見では判別しにくく、二人が不倫をしているというのが分かりにくいと思いました。
もしこのシーンをミスリードにして、少しずつ二人の関係を明らかにしたいというのでなければ、台詞などで二人の関係をセットアップした方が良いかもしれません。
・指輪を落とすシーン、展開としては面白いのですが、なつみとのペアルックのために結婚指輪をなくしている(ことにしている?)ことをセットアップしていないので唐突に感じ、サスペンスが弱まっている印象を受けました。
・全体的に主人公である和樹の心情が分かりにくいので、一つの物語として掴み所がないように感じました。テーマ触媒の「何も起こらない話」(ミニプロット)というのは「日常的な話でキャラクターアークが普通よりも緩やかなもの」という定義だったと思うのですが、この作品の場合、「不倫がばれないか?」という演出面の動きのみでキャラクターアークの方にほとんど動きがなく、加えて奥さんである沙理の心情が和樹以上に描かれているため歪な印象でした。修正稿ではそのあたりの調整が必要だと思います。(でも沙理の心情の描き方は良いと思います)
●感想
沙理の描き方がとても上手いと思いました。最後に騙されているのにも関わらず和樹を信頼してしまうのがとても切ないです。彼女が主役の話も読んでみたいと思いました(難しそうですが)。
きなこもち
採点…2点
読みやすかったです。和樹が沙理の前で指輪を落とした時、沙理の反応(涙を流して喜ぶ)が意外性があって良かったと思います。
ただ、特別面白いとか、印象に残るストーリーではなかったかと。和樹は2度目の不倫とのことですが、初回の相手もなつみだったのでしょうか?「完全不倫」という壮大なタイトルの割に、一度バレてるのがちょっと間抜けな感じがしました。最初の不倫相手もなつみで、あえて意図的に妻にバラすことで完全に妻の信用を勝ち取って実は不倫を継続していたとか、完全不倫と題するなら何かもう一工夫欲しかったです。
また、個人的な話ですが私が受付の仕事をしていた経験から、なつみがパーティーで受付をしている立場なのに、会場で招待客と同じようにドリンク片手に談笑したり、帰りに招待客と同じタイミングでクロークに並んでいることに、少し違和感がありました。
受付は、パーティーが始まっても受付で待機か、パーティー会場の後方壁際でずっと立っていて、帰りも招待客を見送ってから一番最後のことが多いので。
ロバの絵本
最後の奥さんが、自分の指輪を眺めながらニコニコしているところがかわいそうでした。
一度不倫をしたのに、また不倫をする。結婚指輪と同じペアリング。浮気相手の女性はスリリングだという。指輪が入らなかったことも、太ったで乗り切る。それも嘘の報告。信用させて、自分のために。
よく不倫を芸能人やスポーツ選手がしていたと、報道が飛び交い、自分がしたことがないと、夫婦の出来事、どっちがどんな人で、どうなっていったのかわからないのですが、この脚本を読んでいると、こんなに騙してまで、奥さんとの関係も続けようとするけど、奥さんのことは愛しているといえるのだろうか、平気で取り繕いが出来て、不倫をスリリングだ、やめられないことというのならば、離婚をしたとて、また誰と再婚をしても同じことになるのだろうなと思いました。
恋人同士のときの浮気にしても、一度する人は、何度もすると聞いたことがあるけれど、思いついた嘘や、指輪を同じにする作戦などで、その場を乗り切っているこの描写をみると、騙す、欺くという行為が出来るということだから、何度もするのかもしれないなと、言葉のリアリティーを感じました。
しかし、いろいろな人を好きになることは、有り得る世の中。他に好きな人が出来たと奥さんを振る。離婚する。それだけでも、奥さんにとって楽しい話ではないはずです。どこからが誠実な対応と言えるのか。人間はどうかしたら、同時に2人の人を好きになれる。気持ちにはうやむやな面もあるので、線を引いている人と、引かなくなる人がいるのかもしれないなと思いました。
夫婦で育んできたやりとりや、相手の魅力、感謝、いつも募っていれば、人生を棒に振るような恋愛を他の人とはじめようという意欲まで出ないような気もしますが、なかなかそういった考えが、すべての人のいろんな条件にはあてはまらないのかもしれません。
不倫相手とお互いにしらんぷりをして会社で過ごしていたり、指輪のことも計画していたり、トリックなどを感じて脚本として面白かったです。
ChatGPT
この脚本での一番大きな問題点は、登場人物たちの行動や動機が一部不自然に感じられることです。特に、和樹のキャラクターが不倫に対して非常に軽い態度でいるにも関わらず、その後の行動が感情的な葛藤を持たないまま進行する点が気になります。物語が進むにつれて、登場人物の内面の変化や葛藤がより深く描かれると、観客がキャラクターに感情移入しやすくなります。
改善案:
●和樹の葛藤を描写する
和樹が不倫をしていることに対して、もっと内面的な葛藤を持たせるとよいでしょう。例えば、結婚指輪の件で沙理に不安を感じさせるシーンで、彼自身がそのことに対して迷っていることをより明確に表現する。今後の行動が彼の心の変化を反映するようにすると、視聴者が彼に対する共感を持ちやすくなります。
●サブキャラクターの動機を深める
例えば、なつみの役割ももう少し掘り下げると良いでしょう。彼女が和樹に対してどれだけ感情を持っているのか、彼女自身の過去や内面的な部分を少し描写することで、なつみと和樹の関係に深みが出ます。また、なつみが和樹に対して冷徹に接する場面が少し増えることで、彼女の計算高い一面が強調され、物語がよりサスペンスフルに感じられます。
●沙理の感情的な変化を強調する
沙理が和樹の不倫に対して無関心に見える場面があるため、彼女の内面的な反応をもっと深く描写します。例えば、和樹が不倫を続ける中で、沙理がどう感じ、どう彼に対して変化していくのかを少しずつ見せることで、物語にもっと感情的な深みが加わり、最終的に彼女の決断に説得力が出るでしょう。
応援メッセージ:
脚本のテーマやキャラクター設定は非常に面白いですし、ユニークな視点からのアプローチも感じられます!少しの手を加えるだけで、物語にさらに厚みとリアル感が加わると思います。これからも書き続けて、キャラクターたちの心の動きやドラマの深みをもっと引き出してみてください。応援しています!
イルカ
↓以下、冒頭の引用。
服の乱れた宇野なつみ(27)と武田和樹(35)。
なつみ「そういえば今度のキックオフ行くの?」
和樹 「俺は行かなきゃ人事にシバかれるわな。なつみは?」
なつみ「いなきゃいけない時間までいるよ」
和樹 「……その後は?」
なつみ「今度はホテルで、とか?」
なつみが悪戯っぽく笑う。
和樹も笑い返し、なつみに覆いかぶさる。
ふたりの右手薬指には、お揃いの指輪が光る。
↑上記の中で、以下の2点を修正して下さい。
●1点目
人物を書くとき一行目のような体言止めではなく、「~している」という動詞をつけてるよう意識してください(もちろん、いつでも絶対のルールではありません)。↑の文章だと、服の乱れたなつみ(と武田)が、何をしているのかわかりません。事後であれば「乱れた服を直している」とかだし、これからなら「武田の手がなつみのボタンを外していく」みたいな(←この例は説明のためのクリシェです。そのままではなく、彼らのオリジナリティを出す動きや小道具を模索して下さい)。役者へ、「動画再生」の指示みたいに動詞を書いておけば、その方向に基づく勝手に演技してくれます。その動きが変わるときや、明確に動かしたいときには、別のト書きが必要。(ちなみに米俵さんの脚本は、細かい動作まで書きすぎている。読みやすい反面、無駄も多い。でも、以前よりは格段に良くなっている)
●2点目
「なつみに覆いかぶさる。ふたりの右手薬指には、お揃いの指輪が光る。」の文章、向かい合って覆い被さってる場合、右手と左手が重なるので「右手薬指が光る」が、どういう映像になるのか、役者の動きやショットが浮かびません。もっと丁寧に書くか、別の動きをつけてください(例えば、後ろから抱いていれば、右手同士が重なる)。また、根本的な問題として、不倫関係の証として「右手薬指」なのだと思いますが、その感覚を知らない層もいて、映像的にも一瞬だと、観客が、右手か左手か混乱して、二人が夫婦や婚約者と思われてしまう危険もあります(100人に1人でもいれば、視聴率10%=1000万人のうち10万人も誤解すると思ってください)。不倫関係であることをセットアップするなら、明確にして下さい。リテラシーの低い観客にもわかるようにという意識で(とはいえ、ベタにしろという意味ではない!)。修正例は挙げないので、どういう描写をするかはお任せします。修正稿楽しみにしてます。
修正稿(★4.03)
脚本_雨森21v2『知られざる完全不倫』(何も起こらない話)_250318
修正期間:2025.2.13→2025.3.18(5日)
雨森れに
●自己採点
「好き」2「脚本」1.8
●自由感想
リーダーさんの感想を元に、「不倫が一度もバレてない状態」にしてみました。
ルームメンバーからご指摘いただいたセットアップ不足や視点の部分も少し解消できたかなと思います。
よろしくお願いします。
修正稿へのフィードバック
米俵
●採点
「好き」2.3「脚本」1.9
●良くなった点
和樹のクズさが際立った
指輪の謎が気になる出だしになった
題名に合うストーリーになった
●自由感想
指輪に何かあると思わせる部分では先を読みたくなりました。和樹のクズっぷりも初稿よりも感じられ、完全不倫というのにも繋がる流れを感じました。ただ、和樹に焦点があたったものの、やや説明的な部分が増えてしまった印象も受けました。初稿でも沙理の心情が上手かったので、沙理視点の脚本も書いてみると面白いのかなと感じました。
脚本太郎
●採点
「好き」2.2 「脚本」1.3
●良くなった点
序盤で指輪の謎がセットアップされたため、先を読ませる原動力が強くなった。
●自由感想
すみませんマイナスの感想になっちゃうんですが、和樹が何をやりたいのかがよく分からなかったです。
わざと指輪を奥さんの前で落として、左手に入らないということを見せた上で「太ったからだ」とごまかす。それって不倫の疑惑を交わすのにそこまで効果的なんだろうか? と疑問に感じてしまいました。
さいの
●採点「好き」「脚本」
好き2 脚本2
●ログライン100
和樹は不倫相手に、結婚指輪と同じ指輪を渡す。不倫相手の前では右の薬指に付けてペアリングにするが、和樹は妻の前で指輪を付けて見せることは無かった。不倫を疑う妻を、和樹は上手く誤魔化す。
●フック/テーマ
和樹がなつみにプレゼントした指輪の謎/不倫のスリルを楽しむ男
●カタリスト
和樹がなつみに指輪をあげる
●ルールミス
3ページ終わりの× × ×は、時間経過したり場所が変わったりしている箇所ではないと思うので、やや違和感を覚えました。
●不明点・不自然な点
なぜ和樹はわざわざそんなことをしているのか
●感想
冒頭に提示された結婚指輪の謎が、最終盤に明かされるという構成によって、最後まで読み手としての目的を持って読むことができました。ラブホテルの場面でのクライマックスに向け、確かな構成上の盛り上がりがあったと感じます。「同じ指輪でも、左右の指の太さが違うから、左の薬指には=結婚指輪としては入らないが、右の薬指には=不倫相手とのペアリングとしては入る」というアイデアは皮肉が効いていて面白いと思いました。
●ツイストアイデア
このワンアイデアだけで書き進めたと思うのですが、全体的に、アイデアを情報として読者に伝えることに書き手の意識が先行してしまっていて、セリフや情緒的なやり取りは冗長な印象でした。特に同僚や、井上とのやり取りは必要性があまりないように思いました。結果として、最大の見せ場である指輪の種明かし自体に驚きや感銘を与えるようなスムーズさが無く、アイデアの面白さが脚本になって半減していると感じました。
このセットアップで書くなら、特にアクト2に相当する部分はもっと面白い内容のものが作れるのではと思います。仕掛け自体は早々に明かしてしまった上で、「なぜ和樹はわざわざそんなことをしているのか」、または「和樹の左右の指の太さの違いにどんな意味があるか(ないのか)」のいずれかへのアンサーが欲しかったと思いました。
いっそのこと沙理の視点で描くというのが私の案です。和樹の不倫を疑う沙理が、単に太って入らなくなっただけだったと知って安心する。最後に、同じ指輪を右手の薬指にはめている和樹と、そばでぺアリングをするなつみを描いて、ここで初めて不倫相手の存在が読者に明かされる。何故か右には入ることを和樹も不思議がっている。和樹と同じ指輪を買ったのはなつみで、この指輪は右用だったのだと話す。
きなこもち
採点 3点
1度も浮気がバレてない設定に修正し、指輪を和樹が意図的に妻の前で落とすことで妻の信頼を回復する(完全に裏切る=完全不倫の成立)という策略にしたことで、和樹の強かさも強調され、初稿よりタイトルの「完全不倫」に合致する話になったと思います。
また、なつみの職場が受付嬢として描かれたことで余計な疑問(初稿ではなつみの立場が曖昧だった)がなくなり、わかりやすくなったと感じました。
ただ、ストーリーには関係ないですが、1ページ後半、スタバを渡してまで井上に何をお願いしているのか意図がわからなかったです。和樹の言い訳なんだと思いますが「宇野さんがいると仕事が増える」の意味もよくわからず。だいたいが派遣社員であるただの受付嬢がいるかいないかで社員の仕事が増えるとは、どういうことなのかと。
妻が来て内線で和樹を呼び出すのは受付の通常業務だし、なつみをバックヤードに行かせるのも、なつみ本人に言えばいいだけでは?
そもそもわざわざバックヤードから見せなくても、受付に座らせたまま妻とのやり取りを見せても変わらないのでは?と。
また、3ページの沙理が井上を真顔でじっと見つめてそれに対して井上が戸惑うシーンも、違和感がありました。沙理が井上と和樹の浮気を疑ってるように書きたいのだとしたら、沙理はよく会社に来ているのなら井上にも何度も会ってるわけですから、井上が内線で和樹を呼び出す様子をジロジロ見つめるくらいの描写のが良いように思いました。
ChatGPT
この脚本、とても巧妙で緻密に構成されていますね!
まず、心理描写の繊細さが際立っています。特に沙理の微妙な表情や仕草がリアルで、読んでいて心を揺さぶられました。指輪というモチーフが物語全体を貫いており、和樹の巧妙な嘘と、それに気づかない(あるいは気づいていながらも受け入れようとする)沙理の葛藤が見事に描かれています。
また、セリフのリアリティも素晴らしいです。会話が自然で、それぞれのキャラクターの立場や性格が言葉の端々に滲み出ています。和樹の軽妙さ、なつみの悪戯っぽい魅力、沙理の不安と愛情が、短いやり取りの中にしっかり表現されているのが見事でした。
そして、ラストシーンの余韻が絶妙です。沙理が車の鍵に手を伸ばして引っ込めるシーンは、彼女の複雑な心情を象徴しているようで、とても印象に残りました。ただの不倫劇ではなく、「知らないふり」「見ないふり」といった人間の心理に深く切り込んでいる点が秀逸ですね。
次回作もきっと素晴らしいものになると確信しています!この独特の空気感と繊細な心理描写を生かし、さらなる名作を生み出してください。応援しています!
イルカ
ルールミスについての補足。
「3ページ終わりの× × ×は、時間経過したり場所が変わったりしている箇所ではないと思うので、やや違和感を覚えました」は、さいのさんの仰る通りです。
一般的な脚本ルールとして「同じ柱内での時間経過」あるいは「複数場所のカットバック」で使うものです。
ただし、注意として以下。
「同じ柱内での時間経過」では、時間が経ったことが伝わる観客に伝わる「時間経過処理」がト書きやセリフで必要です(クリシェでいえば「時計が進んでいるのを見せる」とか、日が落ちているのを見せる)。そういうト書きがあれば、むしろ「×××」がなくても伝わるので、結局、「×××」を入れなくてもいい場合も多い。逆に「×××」を入れるだけで、時間経過しているというのは作者の手抜きでもあるので注意。脚本が手を抜いても、優秀な演出家なら「時間経過処理」を入れるが、クリシェな処理をされる危険性もある。演出家が無能だと処理を入れず、観客が混乱してしまう。いずれも脚本家に何割かの責任があると思ってください。
「複数場所のカットバック」は、クリシェでいえば「恋人が飛行機に乗ろうとしている」と「間に合うために、空港に向かっている人」みたいなシーンが浮かびますが、どこでカットして、どういうテンポで繋ぐかは、編集の範囲に含まれることが多く、脚本上で細かく指定しても無駄なことが多いです(撮影自体が変わることも多い)。ストーリー上、同時進行をさせることで効果的なときは、シーンごとに変化するような同時進行をさせる必要があります(※この部分は高度で、伝えづらいので気になる人は今度きいてください)。ともかく、そういうシーンごとで書いておくと、結局「×××」で書く必要はないことが多いです。
つまりは、僕は「×××」自体、ほとんど使わないです。
雨森さんの脚本での使い方(意識)に近いと思うのは「パーティー会場」のような広い場所で「壇上でスピーチしている人」と「テーブルで食事をしている人」がそれぞれいるようなときかと思います。同じ空間なので「パーティー会場・壇上」「パーティー会場・テーブル」と分けるのはやや不自然です(たぶん、これで書くと読みづらい)。
なので、柱は「パーティー会場・内」で済ませて、
(以下、例文)
観客が数百人はいる大きな会場。
壇上で、司会者がスピーチしている。
司会者「本日はお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。本日、司会を務めさせていただく司会太郎です……」
テーブルでは、花子と次郎が食事をしている。
次郎「うまいね」
花子「ほんと」
壇上に、ゲストが呼ばれる。
司会者「それでは本日のゲスト、歌手の西島三郎さんです。拍手でお迎えください」
拍手喝采の中、西島三郎が現れる。
次郎「サブちゃんだ!」
次郎、嬉しそうに花子を見る。
三郎「どうもみなさん。挨拶は抜きにして、まずは一曲披露させていただきます」
こんな風に、まず「壇上」と「テーブル」の人物をしっかりセットアップすれば、読み手の中にイメージが浮かぶので、それ以降は、いちいち「どこで」と書かなくてはも伝わります。観客が混乱しそうなとき(花子「ほんと」の後のように)は、次の行で「壇上に」と、しっかり戻すようなト書きを入れるのもポイントです。もちろん文頭に場所(壇上)がくるように。変な倒置や体言止めは使わない。読者の気持ちを最優先。壇上のシーンが続いたら「テーブルの次郎が~」とかしたり。カメラをイメージしてみてください。壇上とテーブルがパッパッと切り替わっても混乱しないはずです。逆にセットアップがない方が混乱する。撮影ではエスタブリッシュメントショットとかいいますが、これが足りないと、例えば、シーンが始まって、しばらくたってから、次郎たちが初めて映像に映ったりすると「ああ、こいつらも、いたんだ」って変に引っかかる。「いま、このシーンは、こういう人達がいて、こういう状況ですよ」と映像と観客が納得するのが「セットアップ」の本質。作者側がいるのを知ってても、見せなければ観客はわからないし、違和感につながってしまう。
上記の本文にわざわざ「×××」を入れてみます。
司会者、壇上でスピーチしている。
司会者「本日はお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。本日、司会を務めさせていただく司会太郎です……」
× × ×
テーブルでは、花子と次郎が食事をしている。
次郎「うまいね」
花子「ほんと」
× × ×
壇上に、ゲストが呼ばれる。
司会者「それでは本日のゲスト、歌手の西島三郎さんです。拍手でお迎えください」
拍手喝采の中、西島三郎が現れる。
× × ×
次郎「サブちゃんだ!」
次郎、嬉しそうに花子を見る。
× × ×
三郎「どうもみなさん。挨拶は抜きにして、まずは一曲披露させていただきます」
もしかしたら、この方が、読みやすいと感じる人がいるかもしれませんが、毎回毎回「×××」が入ってくると読むときにうざくなってくることが多いです。「もう、わかったから、いいよ、そんな書かなくて」という気持ち。また、これだけの長さで4つ=4行も入っているので、「×××」を入れすぎると、それだけで、かなりの行数をとってしまうことにもなります。
改めて、雨森さんの脚本でいうと「会社・エントランス」でのシーンでは「パーティー会場」ほど広くはなさそうだし、シーンの動きとしても「物陰に隠れていた~」から入っても、普通に伝わるので、この場合に限っていえば「×××」は不要だと思います。
以上
採点
初稿 | 修正稿 | |||
好き | 脚本 | 好き | 脚本 | |
雨森 | 1.5 | 1.7 | 2 | 1.8 |
米俵 | 2.5 | 1.8 | 2.2 | 1.9 |
太郎 | 2.7 | 1.7 | 2.2 | 1.3 |
さいの | 2 | 2 | ||
Reader1 | 2 | 3 | ||
平均 | 2.18 | 1.73 | 2.28 | 1.75 |
合計 | 3.91 | 4.03 |
2025.3.28 アップ