イルカ感想・Tブロック

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2201

2201:通学中のバスで見かける「あの子」に一方的な恋をしている「僕」。あの子は「女子高生」ではなく「マスコット」だったというオチに読めます。よくあるギャグオチです。作者さんの書き方からも、そう読めてしまうのですが、あえて深読みしてみたときの面白味があったので、この作品に一票を入れました。一言でいうなら「あの子が好きだから、マスコットまで好きになった」という解釈です。この作品の「僕」は「通学途中」とあるので学生です。この年齢特有の気恥ずかしさからか、自分に自信がないのか、気になる「あの子」を一方的に「眺める事しか」できません。そんな中で目に入った「マスコットキャラクター」。「欲しい」という気持ちも素直です。そして人形に「恋をした」。こういう風に解釈すると、ギャグオチのためにミスリードしている前半部分が、「女子高生」への気持ちとも読め、それがマスコットへと変化していったとも読めます。オタク文化うんぬんについて触れるつもりはありませんが、この感情は、恋愛に不自由にしていない人からすると嘲笑の対象にすらなるかもしれませんが、「僕」にとっては切実にも思えます。もったいないなと感じてしまうのは、作者がとても興味を惹くキャラクター像を「題材」として掬い上げていながら、オチを優先させているため(あるいはキャラクターに目を向けていないため)、ギャグオチに読めてしまうところです。

2206

2206:詩のような文章です。シンプルな言葉づかいで、作者らしい個性的なことばも使われていないため、とても地味な作品に読めてしまいます。けれど「私」(あるいは作者)の気持ちに重ねて、読み直してみると、ふしぎな感覚を追体験できます。朝、目を覚ましたときの天井、家を出たときのアスファルト。下を向いて歩いて
のでしょうか。毎朝の通学に陰鬱な気持ちなのかもしれません。「電車の色」というのは、もちろん電車の車体の色(山手線なら銀色ボディにの黄緑のライン)といったことを言っているわけではないでしょう。車内の人々も同じように通勤、通学していく。スマホを見たり、イヤホンで音楽を聴いたり、十人十色な時間を過ごしているでしょう。僕は東京の人間なので、どうしても満員電車を想像してしまいましたが、別の地域の朝の電車には、また違った「色」があることでしょう。だんだんと「色」はカラーの意味だけでなくなってきます。「教室の色」は友達や、それほど親しくないクラスメイト、気になる異性もいるかもしれません。安心したり、楽しい気持ちになったのか。「色に溢れている」「色に囲まれている」と感じた「私」は、朝、起きて天井を見たときとは、まるで別の気持ちになっているように感じられます。「通学」「教室」といった言葉からも、タイトルは「未成年」にして「主張」ではなくて、より感覚的な言葉にした方がしっくり来るかもしれません。10代の頃ならではの感性という意味合いも込められてきます。100文字小説はタイトルはあっても、なくても良いのですが、この作品では、本文が抽象的なのでタイトルがあることで安定するように思います。あくまで僕の解釈に過ぎませんが「読み」の楽しみは自由だと思います。色々な楽しみ方ができる作品は、いい作品だと思います。シンプルな言葉づかいだからこそ想像できる幅があります。他の作品の感想で、何度も言っていることですが、説明しすぎると意味を限定しすぎて、読者の想像力を削いでしまいます。逆に、説明が少なすぎると伝わりません(実際、この2206の作品は、やや言葉足らずだとは感じます)。多くの人は(とくに現代人は忙しいので)、初見の印象だけで「読み」を確定してしまい、わかりやすいものに流れがちだと思いますが、100文字という短さだからこそ、何度も読み返して楽しみ方、「100文字小説の色」を、みなさんにも発見していただけたらと思ったりします。もちろん、よく読むことは、いい作品を「書く」ことにもつながります。

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