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感想
「好き」4 「作品」3 「脚本」3
キャラクターの参考として見た。役所さんの演技の良さは言うまでもないが、ショットでは人間、景色を綺麗に撮るなと感じた。その綺麗さがあざとい美化にも見える。ストーリーはお説教的でお粗末。社会問題をテーマに「ちゃんと調べました」「世の中にこういう人がいるんです」というだけで、ドキュメンタリーなら良いが「視点」が欠けているため描写が薄ら寒い(セリフもシーンも)。カメラは良い演出が巧くないと思う。ラストは自殺だと聞いていたが断定はされていないようだった。血圧が高かったので発作か、薬を飲むことを拒んだ可能性もある。いずれにせよ、脚本上、この主人公を殺すところまで良かったのか?という大きな疑問。感傷的に美化するべきではない。タイトルにも、そのスタンスが出てしまっている。自分が感心を持つ題材だからこそ、向き合い方の浅さに気持ち悪さを感じる。創り手が、三上という人間と真剣に向き合わず、幼少期のトラウマとか前科者に厳しい社会といった一般論だけで理解をしてしまっている。残念。
緋片イルカ 2024.1.23
追記 2024.2.4
原作の『身分帳』を読み終えた。エピソードがわりと原作通りだったことが以外だったが、現代に焼き直している割に、セリフなどを使い回していたりで、そういったところが映画での違和感につながっていた。主人公についても、取材対象本人と直に合っている作者ならでは描写がリアルで、人間としてのどうしようもなさとかが出ていた。映画ではそのあたりが掬いきれておらず薄っぺらくなってしまっている。だが、映画ラストの施設での描写は映画オリジナルであのシーンだけは秀逸だった。好きの評価を1上げた。原作の読みにくさは、映画を見ているおかげで役所さんの声で再生されるので読みやすいのはよかった。