キャラクター概論11「主人公のWANTとNEEDについて」

以前に広告での記事を書きましたが、そもそも物語における「WANT」と「NEED」のページがなかったので、言動決定要素についての途中でしたが差しこみます。

「WANT」は主人公が欲しいと思っているもの、「NEED]は主人公が本当に必要なもの。
これが良く言われる三幕構成での解釈です。
たとえば、主人公が「リアルなアンドロイドを完成させたい」と思っている研究者だとします(WANT)。しかし、失敗続き。

「博士はどうして、そこまでアンドロイドに拘るんですか?」
「アンドロイドは人類の役に立つ」
「けれど、人型をしていなくてもロボットは十分に役に立っています。博士はアンドロイドに固執しているようです」
「それは……」

博士は子供の頃のトラウマを語り始める。
空襲でなくした友達。彼と一緒にいつか「鉄腕アトム」を作ろうと約束した。

「……博士はその友達ともう一度会いたくてアンドロイドをつくるんですね」

表面的なWANTに対して、深層心理に根差している願いや欲望がNEED。
この博士は、自ら語り始めているので自覚はしているけど、生き返らせることなどできないことも自覚しています。(※これはキャラクターコアとも呼びます)

自身の「NEED」を自覚しているキャラクターもいれば、無自覚で物語の中盤で気付くキャラクターもいます。
無自覚だったNEEDに気がついて拘りを捨てるといったキャラクターアークもあります。
拘りを捨てるということは「WANTが変化すること」とも言えます。
この博士の流れでいえば、「アンドロイド作りを諦める」ことで別の道を拓くこと。
ハッピーエンドにもっていく映画であれば、WANTもNEEDも叶って大団円となる場合もおおくあります。

【WANTを複数持っているとブレる】
主人公が持っているWANTは一つとは限りません。
「お金持ちになりたい」「自慢できるような恋人がほしい」「ゴルフがうまくなりたい」……人間の欲望は尽きることがありませんが、一人のキャラクターが同時にいくつものWANTを持っている場合、キャラがブレる可能性があります。

たとえば「お金持ちになりたい」と不動産投資を始めた主人公。次のシーンでは恋人を探すためパーティーに参加して目当ての異性をデートに誘います。翌日は趣味のゴルフでスコアを上げる(下げるというのかな?)ためにコーチに特訓をうける。多趣味な人間というかんじで、実際にはこういう方もいるでしょうが、物語の主人公としては何がしたいのか、いまいち見えません。

ジャンルがブレているとも言えます。
・投資で金持ちになっていく成り上がりストーリー(『ウォール・ストリート』のような)
・愛を得るためのラブストーリー
・ゴルフを題材にしたスポーツもの
いったい、どれをテーマにしたいのでしょう?
メインストーリーの軸を一本に決めることで、アークがはっきりしてビートも明確になります。
他のものはサブプロットにして入れ込むことも可能です。

キャラクターアークの原動力は主人公のWANTなのです。

それでも、すべてを目指す主人公を描きたいと思う場合は、それはキャラクターコアを掴み損ねています。
「お金持ちになりたい」「自慢できるような恋人がほしい」「ゴルフがうまくなりたい」といった、それぞれをひっくるめて「勝ち組になりたい」といった言い方が本質的なWANTです。
これであれば『グレートギャッツビー』のような物語になっていくでしょう。

【WANTには階層がある】
WANTを複数持っているキャラクターはブレると言いましたが、それは方向性の違うWANTを複数持つ場合のことです。右へ行きたいのか、左へ行きたいのかわからないような主人公です。
それに対して、同じ方向性でのWANTは複数もっていてかまいません。これを階層的なWANTと呼びます。
はストーリーの進行に合わせて、WANTは変化していくのが普通です。(実はプロットポイントもキャラクターの側面から考えればWANTが大きく変化するところと言い替えられます)

上記の『勝ち組になりたい』という主人公で考えてみます。

貧乏の家に育った彼は、周りから借金して高級スーツを買ってセレブの集まるパーティーに潜り込む。
そこでハッタリをかまして溶け込んでいきますが、主宰者のセレブには見抜かれてしまいます。「あなたみたいになりたいんです」と語り、留守の間、屋敷を守る仕事を頼まれる。きちんと仕事をすればセレブでのマナーを教えると言われる(※プロットポイントです)

ここで主人公には本来の「勝ち組になりたい」というWANTに加えて、「屋敷を守る」というWANTが加わります。
この二つは方向性が同じであるので、WANTを複数もっていてもキャラはブレません。
その後、セレブの仲間入りするために「ゴルフをうまくなりたい」「彼女がほしい」(※セオリーならこれがサブプロットでしょう)といった、別のWANTも持って達成していきます。
すべては「勝ち組になるため」です。

しかし、彼が本当に欲しいNEEDは何なのでしょう?
物理的な欲しいものを手にいれたとき、何かに気付くかもしれません。(もちろん気付かせるべきです)

このようにWANTは階層的にいくつも持っているということがありますし、NEEDはまるきり正反対なベクトルを持っていることもあります。
WANTとNEEDに従って、主人公はキャラクターアークを描き、変化をしていくのです。

次回は→キャラクター概論12「言動決定要素②価値観:WANTと価値観のちがい」

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緋片イルカ 2019/07/18

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