キャラクター概論40「言動決定要素⑥目的:成長のアークとWANTの変化」

これまで言動決定要素について順番に考えてきました。前回はヒーローズジャーニーを通してWANTの変化を見てきました。今回はより心理的に変化する成長のアークを通してWANTの変化をみていきます。

【魔王退治に成長・変化のアークを重ねてみる】
前回同様に、魔王退治のプロットに成長・変化のアークを重ねていきたいと思います。

まずは外面的なプロットアークの確認。

勇者は旅に出て、いくつかの試練を経て、魔王を退治して、世界に平和をもたらす。

この冒険に、今回は勇者の成長・変化を重ねていきます。括弧内はビートシートでどこにあたるかになります。
違いを明確にするため、太字以外は前回のヒーローズジャーニーと同じです。

父親のいない勇者は、辺境の村に住んでいる。いつか冒険に出たいと思っている(主人公のセットアップ)。

魔王が現れ、世界を危機が訪れる(プロットアークのカタリスト
賢者が勇者のいる街を訪れる(キャラクターアークのカタリスト)

賢者についていって冒険に出たいと思うが、育ての親である叔父が反対する(ディベート

魔王の手下がやってきて、村を滅ぼす。叔父が死んでしまう(デス
勇者は叔父の仇を討つために魔王を倒したいと思う。

賢者とともに旅立つ(プロットポイント1

魔王を倒す力を得るため「試練」を乗り越えて力をつけていくバトル)。
賢者は、力をつけた勇者の復讐心を危惧する。

魔王との対決(ミッドポイント
勝利するが、実は魔王は勇者の父親だったことを知る。
勇者は復讐が悲しみしか生まないことを悟る。

前回との根本的な違いにお気づきでしょうか?

叔父が殺されたことによって勇者のWANTは「魔王を倒したい」に変化しています。ヒーローズジャーニーでも同じですが、こちらの方がより個人的な動機です。
キャラクターアークとしての個人的な「倒したい」か、プロットアーク上の展開として「倒したい」かの違いともいえます。
キャラクターに魅力が無い物語は、プロットアークのWANTだけで主人公が動いている場合がよくあるのです。

そして個人的なWANTであるからこそ、父親であることを知ったときに、気付きや学びがあります。それをきっかけとして、むなしさを感じて「復讐は悲しみしか生まない」と悟ります。
ここで物語を終えても構わないのですが、映画的にアクト3をつけるのであれば、たとえば、勇者の元へ、魔王の子供(勇者にとっては兄弟)が復讐にやってきたりします。
ミッドポイントで学びや成長を経た勇者は、魔王の子供に対して、どういう行動にでるのか?
結論は作者が決めるテーマで自由度があるので、ここでは決めませんが、父親を殺したことで、勇者のWANTがどう変化したのかを描く形になります。

【要約】
4回に渡って、WANTの変化とキャラクターアークについて見てきましたが、まとめると以下の2つに要約できます。

・シーンごとの細かいWANTの変化はキャラクターの個性を生む。
・物語全体におけるWANTの変化はミッドポイントで起きる。

以上で、言動決定要素の6つの要素に関する詳説はおわりになります。

次回……キャラクター分析1「アンパンマン」

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緋片イルカ 2019/09/21

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『キャラクター概論40「言動決定要素⑥目的:成長のアークとWANTの変化」』へのコメント

    • 緋片 イルカ 名前:緋片 イルカ 投稿日:2019/09/30(月) 06:03:02 ID:f84040abf 返信

      情報ありがとうございます!

      0
  1. アバター 名前:匿名 投稿日:2019/09/29(日) 13:43:41 ID:562ed456a 返信

    Keynote Address: Empirically Exploring
    Narrative Productions of Meaning in Public Life
    http://www.qualitativesociologyreview.org/ENG/Volume26/QSR_9_3_Loseke.pdf

    物語論 基礎と応用 (講談社選書メチエ)
    橋本 陽介

    ナラトロジー入門―プロップからジュネットまでの物語論 (水声文庫)

    橋本 陽介

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