キャラクター概論4「キャラクターの言動決定要素」

初回ではキャラクターには大きくわけて外面・内面・環境の3つの要素があり、それらは互いに関連しているので切っても切り離せないということを考えました。
二回目三回目では、やや視点を変えて、キャラクターの設定を作品上で表現するにはセリフや行動といった「シーンで見せる」必要があることを、脚本と小説の違いに留意しながら考えてきました。
これを総合すると、シーンでの言動を決定するための要素こそが、ストーリー上で重要な設定ということになります。
このことを掘り下げていきます。

まずはシチュエーションを想定します。
主人公の目の前で「老人が突然倒れた」という状況が起きたとしましょう。

このとき主人公がどういった言動をとるのか?
それを決定する設定が、以下の「言動決定要素」となります。

1:知能
状況を判断したり、推理したり、対処法を考えたりする力の全般。
こういった能力は、年齢、職業、経験によって変わります。こまかく定義していくとキリがないので知的能力全般と捉えていきます。
このシチュエーションでいえば、主人公が医療関係者であれば、その場で処置にとりかかるかもしれないし、子供であればただ動揺してしまうかもしれません。

2:価値観
思想やポリシー。教育や経験から得た後天的な価値観。
「困っている人を放っておけない」のか「面倒なことには関わりたくない」と思っているかで、行動は大きく変わります。

3:気質
これは主に決断力や行動力に影響します。内向的・外向的。行動が早いか遅いかなど。
このシチュエーションでいえば、知能で判断した後、行動にとりかかるかどうか。
中には価値観では「関わりたくない」と思っていても、反射的に体が動いてしまう人もいれば、助けたいと思ってはいるのにオドオドしてしまう人もいます。

4:脳内辞書
これはセリフの言葉選びに影響します。
「大丈夫ですか?」と声をかけるのか、「おい、しっかりしろ」と言うのかはキャラクターごとの言葉選びのクセがあります。
職業や年齢に合わせた「専門用語」や「幼稚言葉」も関わります。

5:テンション
その時の気分。体調不良で苛々していたら人を助けようとは思えないかもしれませんが、ラッキーが続いてハイテンションであれば普段はしない人助けもしてしまうかもしれません。
アルコールや薬物でのハイ状態でも変わります。物語では前のシーンでのテンションを引き継いでいることになります。

6:目的
言動の結果として求めるものがあるかどうか、メリットがあるかどうかの動機など。
会話であれば、相手に求めるものによって積極的になったり、無言になったりします。

以上の6つが、あるシーンにおけるキャラクターの言動を決定する要素です。(他にも重要なファクターが見つかれば検討します)
くわしくは次回から、個別に解説していきますので、ここでは全体の概略をつかんでください。

キャラクターを掘り下げるという意味では、構成要素である「外面・内面・環境」を細かく考えていくことは効果的です。
しかし、同時に重要なのは、設定は物語のシーンで使わなければ、読者は知るよしもないということです。
主人公が「AEDの講習をうけたことがある」という設定があったとしても、それを活かす機会がなければ観客・読者にはどうでもいいことです。

一方、表面的な設定ばかり考えていても、「価値観」や「気質」といった内面的なことまで考えがいっていないと、結局、作者自身と似たような動きになってしまいます。
そのことは「脳内辞書」ではとても顕著で、作者自信が論理的な性格であると、物語内のキャラクターがみんな論理的なセリフを喋っていたりします。すべてのキャラが似て見えてしまうのです。

上記の6つの要素を一括りにしたその人の「核」になる部分を「キャラクターコア」と呼びます。

例えば、こんなかんじです。

職業は医者で「知能」は高く、病人を救う技術も持っています。もちろん「脳内辞書」には医学用語があります。
小さい頃に貧乏で、妹の病気の治療費が払えず死なせてしまったことで社会を恨んでいる(本当は自分を恨んでいる)。
それで「世の中は金がすべて」という「価値観」を持つようになった。「気質」は善人で目の前の困った人が居ると放っておけなくなる。
「テンション」はリラックスした日常的な状態で、さきの「目の前で老人が倒れる」というシチュエーションに出会ったとします。

このキャラクターが、どういう行動をとるか目に浮かびませんか?

作者の個性が入るので、もちろん答えは一つではありません。
けれど、こんなことは絶対しないだろうという意見はおおよそ一致すると思います。
もし、このキャラクターの行動が浮かばないとしたら「キャラクターコア」がつかめていないことになります。

「キャラクターコア」がつかめれば、そのキャラがどう動くかは自ずと決まります。
いわゆる「キャラが勝手に動き出す」というのはこのことを言います。

キャラクター創作とは表面的な設定から「キャラクターコア」を探っていく作業でもあるし、「コア」が先にある場合は、そこから細部を固めていく作業でもあるのです。

キャラクターコアについては、以前にもすこし解説していますが、キャラクター論の側面から、いずれ改めて解説していきます。キャラクターの本質であり、とても重要なので、ここでも紹介しました。
三幕構成でよく使われる「WANT」と「NEED」という要素とも関わります。主人公であれば「キャラクターアーク」に影響し、コアが決まれば、プロットとキャラクターが噛み合うようになってきます。

緋片イルカ 2019/06/18

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