「WANTとNEED」広告と物語の言葉づかい

あるコピーライティングの本を読んでいたら「ニーズをウォントに高めるようにしよう」ということが書いてあった。
物語論の立場から考えるとこれは逆に感じられて違和感があった。

ニーズというのは「必要だと思っている状態」。それを「欲しいと思う」がウォントで、その先にはアクションとして「買う」という行動がある。
たとえば「飲み続けると体脂肪を減らすお茶」を売ろうとするなら「痩せなくては……」「最近、外食で脂っこいものばっかり食べてる」という気にしているような状態がニーズ。
そこに「こんな、いい商品がありますよ?」と宣伝することで「欲しい」と思わせる。

広告やコピーライトは商品を売るための言葉。だから、ニーズをウォントに高めるということになる。

物語では主人公が欲しいと思っているものをWANTという。上の例でいえば「痩せなくては」と思っていることがWANTになる。それに対してその人が本当に必要なことがNEEDである。

『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』に「内面的ゴールとか本当に必要なものというのは、大体どれも次に挙げる10の普遍的教訓のバリエーションだということ」とあり、以下の10つが挙げられている。

1 赦し(自分または他人)
2 愛(自己愛、家族愛、恋愛)
3 受容(自分を受け入れる、状況を受け入れる、現実を受け入れる)
4 信念(自分への、または他人、世界、神に対する)
5 恐れ(乗り越える、克服する、勇気をつかむ)
6 信頼(自分を、他人を、未知の何かを)
7 生き残る(生き残りたいという心も含む)
8 無私(自己犠牲、他愛、英雄的行動)
9 責任(任務遂行、大事なことのために起こす行動、運命の受容)
10 罪滅ぼし(贖罪、罪を受け入れる、罪悪感、魂の救済)

例えば「痩せなくては……」というのが生活習慣病のレベルで命や健康に関わるのであれば「生き残る」とか、幼い子供を残して死ぬわけにはいかないという「責任」となる(現実的すぎて物語としてはあまり面白味がなさそうだが)。
あるいは「痩せること」よりも本当に大切なことは、太っている自分を受け入れる「受容」や、太ったままの自分を認めてくれる「愛」かもしれない。(『愛しのローズマリー (字幕版)』という名作を思い出す)

広告が商品を売るのであれば、物語は教訓や愛や悟りを売るものなのかもしれない。

そう考えると「そのままでいいの?」と不安を煽るネガティブなコピーにしても、「これを買うとこんないいことがあります」というポジティブなコピーにしても、物語論の立場でいうNEEDではなく、その人に必要がないかもしれないWANTを煽っているようにも見える。

もっとも、人間を描いていない薄っぺらい物語は「暇つぶしの商品」でしかなくて、あざといCMとキャストの人気で客を集めようとしているものもいっぱいあるから変わらないかもしれない。(大塚英志さんの物語消費論改 (アスキー新書)を思い出す)

バブルで頭が沸いてた時代の大量消費的価値観は落ち着いたとはいえ、まだまだ現代人は海にプラスチックを捨てつづけている。
こんな時代だからこそ、NEEDを描く物語をきちんと書いていきたいと思うのであります。

緋片イルカ 2019/06/26

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