毎年、注目している「ショートショートフィルムフェスティバル」。
今年は「クリエイターセミナー」の他はオンラインのみで視聴。
なかなか観に行っている時間がとれなかったのもあるが、会場のプログラムが有料になったのもブレーキにはなった。映画祭の運営上は妥当だと思いつつも、無料から有料への変更というのは値上げ以上の障壁になりそうで今後の映画祭の運営を心配したり、毎年行っていた会場に行かなかったことへの寂しさのようなものも感じたりもした。やはり会場に行かないと「お祭り感」は薄れるし、配信メインになったときに他の配信との比較になってしまって、ただ家で見るだけなら「ショート」という感じでいえば、正直youtubeとかアニメとか比べてしまう。そのせいもあってか、隙間時間でちょっとという感じで、例年は後回しにしてたらブランデッドとか短いものを多めに見て、ついつい20分ぐらいあるドラマは後回しになってしまったかもしれない。
トータルで「78本/818分」見たが、その中で高点数をつけたものだけ今年の記録のため、以下に残しておく。
採点平均
「好き」3.5 「作品」3.3 「脚本」2.8
※CMや実験的なものなど短編作品として評価するに値しない作品は除外している。
Clodagh クローダ
https://www.shortshorts.org/2024/program/int/int-4/clodagh/
「好き」5 「作品」4 「脚本」3
雰囲気とドラマが好みだった。ダンスシーンは演出としては弱いが、そもそも効果的なシーンではあるので魅力になる。脚本はまだまだ直せる。
Yaya ヤヤ
https://www.shortshorts.org/2024/program/int/int-3/yaya/
「好き」4 「作品」4 「脚本」4
脚本に作為的なところがあるがヤヤのキャラクターがいい。今回の映画祭で障害者が出演しているものが多くあったが、正直、ただ出演させているだけになって脚本がクリシェになってしまっているものも多かったが、これはしっかりとキャラクターのドラマとして描こうとしている姿勢が見られてよかった。
Sweatshop girl スウェットショップ・ガール
https://www.shortshorts.org/2024/program/int/int-3/sweatshop-girl/
「好き」4 「作品」5 「脚本」4
テーマ性をきちんとアークに落としこんでいて見応えのある短編というかんじ。作品としての価値は高いと思う。もう一歩、主人公の感情に踏み込めていた脚本も5をつけたと思う。
Queen Size クイーンサイズ
https://www.shortshorts.org/2024/program/int/int-6/queen-size/
「好き」5 「作品」4 「脚本」4
深みには欠けるがが、空気感がとても良い。80年代の映画の良い意味での明るさを感じさせるが、古くさいとも言える。セリフもうまい。ショートを見慣れていない人はストーリーだけ追ってしまってサブテキストを見落としてしまうかもしれない。ラストはもう一歩、人生に踏み込むような何かが欲しかった。
Digital Diary デジタルダイアリー
https://www.shortshorts.org/2024/program/int/int-7/digital-diary/
「好き」5 「作品」4 「脚本」3
シチュエーションや主人公の心情が良い。セリフが少ないシーンでも心理をとらえるようなショットもうまかった。反面、スマホの中の女性との関係性や魅力が致命的に欠けている。恋愛なら恋愛にフればいいし、現代的な心の空白をテーマにするには定まっていない。好きだがつまらない作品。
The Steak ステーキ
https://www.shortshorts.org/2024/program/aj/aj-11/the-steak-2/
「好き」4 「作品」5 「脚本」4
この手の「固定カメラのワンショットもの」は、一時期のSSFFでかなり多くあった。今回は他に一作品「スマホだけが知っている」というのと、これしか見なかった。ワンショットものはアイデア勝負というか、大抵はラストのオチで驚かすパターンになりがち(固定なので動きをつけづらいのでオチがラストになりがちなので)。「短編映画」としての価値としては、短い中でしっかりしたドラマを見たいと個人的には思う。ワンアイデアだけの「固定カメラのワンショットもの」は低予算で制作しやすいし、学生映画がなどでもできるので、このパターンが減ってきたこと自体は良いと思うが、この「ステーキ」は回転カメラの中で描く面白み。テーマ性、平和的な食事準備の風景が、ひっくり返る(ショットもひっくり返る)という良くできていたと思う。
The Mascot マスコット
https://www.shortshorts.org/2024/program/int/int-6/the-mascot/
「好き」4 「作品」4 「脚本」4
エイドリアン・ブロディ主演の特別上映作品。サイトの仕様が特別上映やコンペティションが無造作に混じっていて、見づらいし全体像がつかみづらいが、逆にそんな風に一緒くたにされていても、上質なものは目立つ。良く出来てはいるが、逆に言えば「上質」止まり。もっと主人公の内面を掘り下げたら深みが出せたろうに、安全なところで、エイドリアン・ブロディにマスコットをかぶせるという企画で満足していまっていてもったいない。
Death to the Bikini! ビキニをやっつけろ!
https://www.shortshorts.org/2024/program/int/int-5/death-to-the-bikini/
「好き」4 「作品」4 「脚本」4
コメディとして小気味いい良作。男のたちがビキニを着てきたシーンも名シーン。キャラクターはいいが、構成は散らばっていて、名シーンを盛り上げ切れていない印象も。主人公の少女のアークをしっかり立てずブレてしまっているのがマイナス。
KEEP 灯台守と青年
https://www.shortshorts.org/2024/program/int/int-5/keep/
「好き」4 「作品」4 「脚本」4
全体のバランスがいいしテーマもある。これも良作というかんじ。良いところは良いが、あと一歩足りないかんじ。「違法を承知で、使われていない灯台を点ける」というシーンは良い。動機もよいが、そこへのもっていき方が緩いため、やや乗り切れず冗漫な印象を受けてしまう。
A Crab In The Pool プールのカニ
https://www.shortshorts.org/2024/program/anime/anime-1/a-crab-in-the-pool/
「好き」4 「作品」5 「脚本」4
アニメとしての演出、ドラマ性も良い。短編アニメとして良く出来ていると思う。日本人好みのアニメではないけれど。
SEN せん
https://www.shortshorts.org/2024/program/aj/aj-9/sen/
「好き」4 「作品」3 「脚本」3
グランプリにあたる「ジョージ・ルーカスアワード」受賞作品なのでチェック。描こうとしているテーマはとても好きだが総じて技術不足。ショットはきれいに撮れているだけ、ミュージカルとも言えないリズムに合わせて説明セリフを言わせている演出も邪魔しかしていないし、セリフ全般、変なところでサスペンスエンジンをかけているところなどもテーマからブレている。
イルカ 2024.7.2