昼休み。私とカナはいつものように、机を合わせてお弁当を食べていると、隣のクラスのシロサキさんがやってきた。
「みんな、聞いて? これ、クリスマスパーティーの招待状。私の家でやるからよかったら来て?」
シロサキさんは全員に招待カードを配った。
「ホームパーティだから参加費もないし、空いている人はぜひ来て?」
シロサキさんが私とカナのところにやってきた。
「はい、2人も。ぜひ来てね?」
「でも、パーティーなんてどんな格好していけばいいのかな?」
「別にドレスじゃなくても平気だよ。」
「そうなんだ~。」
シロサキさんは上品な笑顔を残して去っていった。私とカナは固い笑顔で見送った。
「どうするカナ?」
「私は彼氏と約束あるから…。」
「そうだよね。私もパス。着てくもんもないし…。」
「シロサキさん、ドレスでなくてもいいって言ってたじゃん?」
「ドレスでなくてもね…。それって普通の格好でいいって意味じゃないよね?」
カナが苦笑いした。
「たしかに…」
翌日の昼休み。カナが彼氏と話していたので、私は先に食べ始めた。
「ごめん、おまたせ。」
「どうかしたの? 彼氏。」
「シロサキさんのパーティーに行くのかって
心配してるのよ。」
「そうなんだ。」
「あんた行ってきなよ? 男子と仲良くなれるかもよ?」
「え~。」
「まんざらではないな、その顔は。」
「いや男子はいいけど、パーティーって行ってみたいかも。」
「しかもシロサキさんの家だもんね。」
私は、カナの前だと見栄を張らずにいられる。
「よし、放課後、服買いに行こうよ?」
「付き合ってくれるの?」
「うん。行こう!」
私は部屋で、カナに付き合ってもらって買ったワンピースを着てみた。
そして、大きなため息をついた。
パーマをかけてもとれないくせ毛。
夏休みの小学生みたいに黒い肌。
ノースリーブなので二の腕のたるみは目立つし、地面から生えた樹木のような太い足。
そのくせ胸は小さくて、お腹の方だけこんなに膨らんで…。
「やっぱり、こんなんじゃパーティーなんていけないな~」
私は思わず、声に出してつぶやいた。
『そんなことありませんよ。』
部屋の中から声がした。
「だれ?」
『ワタシですよ。』
声はテディベアの方から聞こえた。
「あなたなの?」
『いつも大切にして頂いているお礼に、魔法をかけてあげます。』
「魔法?」
テディベアがぴょこんと立ち上がり、両手を上げると、部屋がキラキラと輝いた。私は思わず目を閉じて――目を開けると鏡の中にお姫様がいた。
「うそ? これ、私?」
『そうです。』
「真っ白なドレス…白い肌、長い髪、細い手足、私じゃないみたい…。」
『明日のパーティーの主役はアナタです。』
男子だけじゃない、パーティーに参加しているみんなの視線を感じた。けれど私が誰だかわかっていない。
それは悲しいこと?
でも、鏡を見た時、自分ですらわからなかったんだから当然と言えば当然。
私は王子様を待ってる訳じゃない。
こんな綺麗なドレスで、
こんなステキなパーティに、
参加できただけで幸せなのだ。
魔法の解ける時間が近づいて、私は会場を後にした。追いかける人もなく、私はとぼとぼと歩いて帰った。
「ねえ、もう帰るの?」
「え?」
クラスメイトの男子だった。
「ええ。魔法が解けるから。」
「君、シンデレラ?」
「そんなとこ。」
「同じ学校の人だよね? 何組の人?」
「ふふっ。同じクラスじゃない?」
「え?」
もう12時まで時間がなかった。
私は走り去った。ガラスの靴を残さずに。
童話と現実は違う。
シンデレラが本当はブサイクだったら、王子様はお嫁にもらったかしら?
(「ブサイクシンデレラ」おわり)