リンダ・シガーの七段階欲求


(日本語版は絶版です)

この書籍の中にある七段階の欲求をリストアップしておきます。マズローの欲求をベースにしているとも書かれています。文章、日本語版からの引用。

これら七つの欲求とそれにまつわる危険は、どんな映画にも適用可能であり、実際にほとんどの成功した映画では1つ以上のものが使われている。

1. サバイバル(Survival)
多くの優れた映画がサバイバルを描いたものである。生き残ろうとする欲求は、人間の基本的な本能であり、すべての生物にもあてはまる。人間はなんとしても生き残ろうとし、実際、かなりの年月にわたって生き残るうだろう。多くのアクション・アドベンチャーが成功をおさめているのは、観客の誰もが主人公の直面する、生死をめぐる極限状態に共感できるからだ。たとえば『脱出』は生死を賭けた危険によって強い吸引力を持っている。ジェームズ・ボンドはいつも生死の狭間にいる。ハイジャックものや危機に面した女性を描いた映画がかなり成功しているのも同じ理由だろう。多くの劇文学もサバイバルを扱っているが、それはサバイバルが万人に理解できる基本的な欲求だからだ。サバイバルはもともと劇的な性質を持つため、映画でもうまく働いてくれる。対立は常に明確で、多くのアクションと勢いがあり、観客を巻き込んでこの上ない共感を生むことになる。

2. 安全・安心(Safety and Security)
一度、サバイバルへの意識が確立されたら、次に人々は安全や安心を求めるようになる。落ち着ける場所や、わが家を求め、安全を実感できるように玄関に施錠し、警備に気を配る。『プレイス・イン・ザ・ハート』、『カントリー』、『さすらいの航海』のような多くの映画が安全や安心といったテーマを扱っている。また、多くの西部劇に、開拓者が身を守る場所を探すといったシーンがあり、『逃亡者』(映画版とロングランのTVシリーズ両方)にも同じようなシーンを見てとれる。

3. 愛・帰属意識(Love and Belonging)
安全を感じられるわが家を持てば、次は当然、家族を持ちたくなる。核家族でも、より大きな家族でもよい。人が人とつながりを求めるという姿は多くの映画で、あらゆる形で描かれてきた。『プレイス・イン・ザ・ハート』で、エドナは家族の存続を望み(エドナの家族とは単に血縁関係にある者たちだけではない。黒人男性のモーゼ、盲目のウィル、そして彼女が長い間住む町をも含む)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、マーティーのサバイバルと共に、家族も危機に直面する。さらに『ポーキーズ』、『ポリスアカデミー』シリーズ、『マイ・フェア・レディ』、『刑事ジョン・ブック/目撃者』でも、グループやコミュニティの中にいかに受け入れられるかというテーマを描く。映画の中には、無二の親友との出会いや、グループやコミュニティに帰属する必要性、家族との関わりや愛情の必要性などを描くものもある。多くの素晴らしいシチュエーション・コメディ『ファミリータイズ』、『大草原の小さな家』の中にも帰属意識といったものを見てとれるだろう。

4. 尊敬・自尊(Esteem and Self-Respect)
尊敬の念や自尊心といったものはグループやコミュニティから手放しで迎え入れられることによってもたらされる。人は誰しも尊敬され、スキルや貢献に対して感謝されることを望んでいる。グループやコミュニティがあなたを受け入れるのは、あなたの行いを評価しているからに他ならない。『スター・ウォーズ』の結末でルーク・スカイウォーカーが受ける敬意、ジェームズ・ボンドが作戦を完遂した後に受けるさまざまな報酬、『カラーパープル』の結末でセリーが勝ちとる自信といったものが、こういった尊敬や自尊だ。『ガンジー』、『マーティン・ルーサー・キング・ジュニア』のような人格者を描いたストーリーもこのテーマを扱っている。

5. 知識欲・理解欲(The Need to Know and Understand)
我々は好奇心を持って生まれてくる。ものの道理を知りたいと思う、きわめて自然な欲求を持っている。ものの道理を理解し、知識を探求することが大好きなのだ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『タイム・アフター・タイム』、『タイムマシン/80万年後の世界へ』のような映画は、どうすればタイム・トラベルが可能なのかを考えている人間がいるということを表している。『フランケンシュタイン』や『キュリー夫人』のような科学者を描いた多くの映画も、この知識欲をテーマとしている。また、探偵映画が観客を引きつけるのは、我々が真相を知りたいという欲求を持つからに他ならない。『チャイナタウン』、『マルタの鷹』、『北北西に進路を取れ』といった映画はすべて、真相を探る旅の中へと我々を誘うのだ。

6. 審美的なものへの欲求(The Aesthetic)
安全で、自信に満ち、愛することを知ったなら、さらに、調和や絶対的な秩序、偉大なるものとの結びつきを求めるようになる。これを精神的欲求、審美的欲求と呼ぶことができるだろう。『聖処女』や『ジャンヌ・ダーク』には、宗教的な体験へと人を駆りたてる欲求が描かれており、『ネバー・クライ・ウルフ』では自然との共生への欲求、アカデミー賞受賞作『アマデウス』では、宗教体験と芸術体験との組合せから生まれる欲求が描かれている。この種の欲求はとても抽象的で、普遍的というものからかけ離れているために伝えることが難しい。しかし、その欲求を伝えようとすることは可能であり、もし観客がはっきりと理解できるように作られたなら、興行的にも成功をおさめることができるだろう。

7. 自己実現欲求(Self-Actualization)
誰もが自分が何者なのか知らしめたいという欲求があり、自分の才能やスキル、能力を開花させることで自身を表現したいと思っている。ライターはこういったことを容易に理解できるだろう。作家や作曲家、スポーツ選手が何かを成し遂げようともがき苦しむ姿を描いた映画は多い。これらの多くが成功をおさめるのは、我々がこういった人々の成功を応援する傾向にあるからだ。しかし、自己実現欲求は単なるこのレベルにはとどまらない。なぜなら、自己実現欲求は自己表現と深い関係にあり、社会に認められたり、報酬を与えられるといったこととはまた別の問題だからだ。有名になりたい、賞を勝ち取りたいと望む姿を描くこともできるが、他人の評価にかかわらず、自分の心が命ずるから行動するのだといった具合に描くこともできるだろう。つまり自己実現欲求は、登場人物の個人的な欲求と結び付けることもできるのだ。コメディアンは観客を笑わそうとするし、医者は患者を治そうと努め、飛行士は空を飛ぶための努力を怠らない。これらの人物は、やるべきことをやるからこそ魅力的なのである。こういった自己実現欲求が描かれた映画なら、誰もが応援したくなることだろう。この欲求を描いた映画がいかに多いか考えてほしい。『愛と喝采の日々』ではダンスへの欲求を描き、『チャイナ・シンドローム』では、キンバリーのレポーターとしての才能を発揮したいという欲求を描き、『炎のランナー』では、走ることへの欲求が描かれている。

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