映画『モンスターズ・インク』(三幕構成分析#70)

分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

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スリーポインツ

PP1:「サリーがブーを元に返そうと言う」(34分40%)

MP:「ブーの部屋のドアに到着」(48分56%)

PP2:「雪山に追放」(57分67%)

感想・構成解説

ビートシートや1:2:1といったセオリーから外れていても素晴らしい名作の一例です。

アクト1:モンスターの世界観をセットアップするために時間を使っているので「カタリスト」「ブーが来る」(23分27%)はかなり遅れています。カタリストとしては遅れていますが、ほぼ1/4の位置にあることで演出的なビートの役割を果たしています。「スシ屋でブーが暴れる」(「ディベート」)を経て、サリーが決断することで、「ブーを返す」というアクト2が始まります。「デス」として、ブーが見つかると処分されてしまうという描写や台詞も入れることはできると思いますが残酷さを避けて入れなかったと思われます。靴下を粉砕するセットアップで充分に伝わっています。

アクト2:面白いキャラクター、ドタバタの「バトル」を経て、「ドアに到着する」というMP。マイクが掴まったところから、ストーリーは「ブーを返すことから」変化していきます。「雪山に追放される」(57分67%)が展開上はPP2といえます。「ブーを返す」という目的で始まった旅(非日常)が、もう望みがないというところに落とされた状態です。PP1が遅れていたのに対してPP2では早くなっています。しかし、ここでも演出的にはいかにもPP2らしい「マイクとの別れ」(62分73%)を入れることで、バランスを保っています。ログライン=メインプロットでいえば、これは「サリーが、ブーを元の世界に返す話」です。マイクはバディで(ロールでいうサイドキック)で、プロットタイプはバディプロットではないのですが、バディプロット的なPP2を入れることで、「サリーとマイクの友情」というサブプロットも成立させているのは、見事な変化球です。

また「ブーがサリーを怖がる」(55分65%)のくだりはイクスターナルな構成を考えるだけであれば、あってもなくてもいいサブ的な展開ですが、これがあるかないかで、キャラクターの魅力が段違いになります。「構成」というより「描写」に関わるシーンで、こういうシーンが入れられるかどうか、丁寧にキャラクターの感情を描けるかどうかに、ライターの腕が出ます。

それから、サブキャラクターが多いので(セリア、ロズ、イエティ、新人モンスター、ジョージなど)、こういう作品では無理に「ピンチ1」「ピンチ2」だけでとろうとせず、それぞれがどのタイミングで登場しているか抑える方が適切です。

アクト3はとくに説明はいらないかと思います。アクションを交えながら、ランドールと社長との対決に勝利して(ブーがランドールへの恐怖を克服するもある)、ブーを無事に元の世界に送り届けます。

緋片イルカ 2022.10.5

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