合評会ですばらしいプロットを書かれていた方がいたので、その方へ、ぜひ執筆に進んでもらえるようにとメールを送りました。
参考になる人がいるかもしれないと思ったので転載しておきます。
プロットができない方はこちらを参考にどうぞ。
●●さん
昨日はおつかれさまでした。
いくつか補足ををお伝えいたします。昨日も申し上げたとおりプロットとしては、かなり完成度が高いので、このまま書き始められるレベルだと思います。どうせ書きながら、問題点が見つかってくることは当たり前なので、今は考えるより一歩踏み出して執筆に入ってほしいところです。パソコンに原稿の「ファイル」をつくって、デスクトップなどアクセスしたいところに置いて、3行でも、10分でもいいので書き始めてみてください。今日にでも!
僕がよく使う手ですが、タイマーを10分かけて、書けなくてもいいから、とにかくパソコンに向かうことにしています。その間は、スマホもネットも禁止で、とにかく原稿に向かう。そうすると、ちょっとだけ書いてるうちに、書けてしまって、10分なんてすぐ過ぎてしまうことが、よくあります。ストーリーの内容うんぬんではなく「原稿に向かうこと」から逃げているだけで、心のハードルの方が邪魔しているだけ、ということが、けっこうあるのです。反対に、やる気もあるのに、うまく進めない日もあります。そんなものだと思って、まずは原稿に向かう習慣を目標にしてみてください。
書くときの姿勢としては、
・脱稿だけを目標にする。
「初稿なんてどれもごみである」というヘミングウェイの言葉があります。なんか「面白くないな」「おかしいな」と思っても、前にもどって直したりせず進んで下さい。山登りのようなもので「この道で合ってるかな~」と思っても、とにかく頂上を進んでください。プロットという地図を信じてください(●●さんのプロットはすばらしいです!)。とはいえ、地図では正しい道でも、実際は倒木で通れない道なんかもあります。そういうときは地図に拘らす避けて進めばかまいません。でもゴールだけは変えないように進むとよいと思います。目的地を変えてしまうと、別作品になってしまうので、新しい地図が必要になります。いいアイデアが浮かんだら、次の作品のネタとしてとっておいて、まずは今のぼっている山の頂上を目指してください。・直しメモをつくる
ある程度、進んでいくと前の方で大きく直してくなってくることがあります。数ページもどって直すぐらいは手間ではないので、かんたんに戻っても構わないと思います。これは倒木を避けて進もうとしたら行き止まりだったので、戻って別の道に行くというようなものです。そういう小戻りではなく、かなり最初の方で大きなミスを犯したと思ったり、そもそもの設定を変えたくなってしまう大戻りをしたくなるがあります。たとえば30ページまで書いて主人公を「右きき」ではなく「左きき」にしようと思ったとします。すでに右ききとして描いてしまったシーンがいくつもあります。こういうときに遡って直すのはやめることをお勧めします。直そうと思ったのなら「直しメモ」をつくっておいて、二稿以降で修正してください。30ページ以降はもう直したことにして「左利き」のキャラとして書き進めてしまうのです。こうしておくと良いのは、ラストまできて「ああ、やっぱり右利きに直そう」と思ったりすることがあるからです(そんな風にブレるときは、実際、どっちでも良いような場合も多いです)。書きかけの原稿は、誰かに見せるわけではありませんので、把握してる矛盾点があっても構いません。キャラクターの名前なんかもそうです。検索・置換すれば簡単に変えられますが、あとでやろうと思ってください。途中で、そんなことをしていると、書いている気になってしまうので、まずは頂上を目指すのです。小戻りの直しなのか、大戻りの直しなのかの判断は難しいところですが、迷ったときはプロットを頼ってください。とくにログラインや自分が書きたいテーマの部分は、方位磁石のように助けになると思います。ちなみに要所要所で原稿ファイルを、別ファイルとして保存しておくと、あとでコピペできたりするので便利だなと思ったりします。けど実際は別の稿の文章をもってきても、ぴったり嵌まらないことが多いので、最初から書き直した方が早かったりもします。・テクニックとしては
いくつか簡単なコツがありますのでお伝えしておきます。①一文を短くする。
「五年ぶりに、わたしは青森の実家に、父の葬式のために帰っている」
「父が死んで青森に向かう電車に乗っている。5年ぶりの景色だ」
国語で重文、複文という文法用語がありますが、一行に情報をつめこみすぎないようにしていくと、読みやすくなります。②なるべく主語を省く
書き慣れていない人は、よく主語が何度もでてきます。ムリに省いてわかりにくくなるのは危険ですが、言わなくてもわかる主語は省くと、すっきりします。③感覚描写をする
「~だから……である」といった説明描写ではなく、五感にもとづく描写が共感を得やすくなります。④漢字をひらく
たとえば「子供」という漢字を「子ども」と書く作家は多いです。わざと漢字をひらがなにすることを「ひらく」といいますが、ページ全体をみて黒いときは、読みづらくて固い印象になるので、ひらくことで読みやすい印象を与えます。改行のタイミングも同様です。⑤迷ったときは声に出して読んでみる
口語体といいますが、声にしやすい=読みやすいというのは基本です。以上は、基本的にはセンスや好みですが、女性作家、女性視点向けの、やわらかい印象にするためのコツです。ゴリゴリの理屈っぽいキャラが主観ではあれば逆になるわけです。
「描写」については、僕のサイトでは「文章テクニック」というシリーズで書いてはいます。
https://irukauma.site/category/iruka/story/rewrite/
けれど、こんなものを読んでいるよりは、書いてみるのが一番なので、今は書き始めてください!(時間がもったいない!)〆切を決める
次回の読書会が3/6なので、この日までに初稿を上げてください。読書会の参加の有無、初稿の提出なんかはとくに入りませんので、●●さんの「初稿を書き上げた」という段階を目指してください。そこから3週間あれば充分に直せるので、3月末の応募ができると思います。途中で進捗伺いのメールもしますね。精神的にでも技術的にでも、迷ったときは、いつでもメールください。書くことは大変なことがいっぱいあって、作者にしか解決できない問題もたくさんあります。ゆえに作家仲間だからこそ共感できる、支え合えるところもあります。また山の頂上から見る景色は、登った者にしか見えない感動があります。作品が評価されるかどうかは関係ありません。登山家が、他人に 評価されるために山に登るわけではないのと一緒です。基本的に、書くことは「楽しい」のです。苦しみながらも、楽しんで書いてみてください。
あ、くれぐれも体調にはお気を付けて。変にムリしては、良くないのも山登りと一緒ですね。
2021/01/31
緋片イルカ