考えすぎてしまう人へ(文章#46)

ビートに限らず、物語論を学び始めると考え過ぎて思うように書けなくなってしまう人がいるようです。

過去に同様の相談を受けたとき、だいたい以下のような回答をしていました。

●●さんは、これまで、自由に感覚的に書いてきたタイプだったのかなと思いますが、いろいろ言われるようになって「ああしなきゃ、こうしなきゃ」と考えるようになってしまって、以前の書き方ができなくなってきているのではないでしょうか。

スポーツでいうフォームの矯正みたいなところじゃないですかね。何かスポーツされた経験があると想像しやすいかと思いますが。

僕だと陸上競技をやっていたのでランニングフォームが浮かびますが、テニスのラケット打ちとか、剣道の素振りとかなんでも型があるじゃないですか。

物語の型(たとえばビートシート)もいうなれば、ドラマのエネルギー効率をよくするための型で「ホラーだったら、より怖くする」「コメディだったら、より笑えるようにする」といった技術だったりします。

フォームに合わせないといけないと考えてしまうと、ぎこちなさを感じたり、「ほんとに、これで向上するのか?」という疑問や不安もあるかもしれません。

ちなみに、うちのサイトの記事は、僕が個人的に使えると思ったものを提供しているだけなので、絶対に効果的ですなどと保証するつもりもありません。使えると思えば使えばいいし、使えないと思えば使わなければいいだけのことです。

フォームの矯正に苦戦しているとき「もう、型なんか捨てて自由にやる!」or「新しい型を体が覚えるまでは続ける」という選択肢があるかと思います。

一度、考え始めてしまったものを、そう簡単に捨てて元に戻れるのか?という問題もありますが、型を身につけずに自由にやってプロを目指すとしたら、また、どこかで限界がくるのではないかなとは思います。

スポーツでもアマとプロの壁みたいなものがあって、指導を受けずに、楽しいだけで続けてプロになれてしまう人はガチの天才だけだよな~というかんじですかね。

我流を貫いてプロの一線でやられてる方もいますが(日本はそういう方が多い)、分析の視点から見たとき、技術を磨けばもっと面白くなるのにな~と感じることが多々あります。もったいないです。

脚本だろうが小説だろうが、物語でプロを目指すなら、完璧にマスターしなくとも、部分的にでも身につけておいて損はないと思います。

プロといっても、どのレベルまで目指すかという違いもありますね。

オリンピックで金メダルを目指すのと、日本のトップを目指すというのでもレベルが違ったりしますよね。

物語でいえば「満足させるべき読者・観客」の人数に違いがでます。当然、多くの人を満足させたいと思えば、それなりの技術も必要になってきます。

全くプロを目指さないというのであれば、創作を自由に楽しんだ方がいいです。それが一番ですよ。

以下、考えすぎてる人にはヒントになるかもしれないようなことを、箴言風で適当に書いておきます。

・物語に絶対に守らないといけないルールなど絶対ない。誰かがそんなことを言っていたとしたら、ルールを破った面白い作品をあなたが書けばいい。

・最初からすべてをこなそうとしなくて良い。一つずつ身につけていけばいい。ビートもしかり。

・良いと思っていた作品を、ダメだと感じるようになったなら、物語を判断する力がついてきている証拠。周りの人や世間の評価とも一致するなら、おそらくあなたの判断は間違っていない。

・プロットやシノプシスが旅行前の計画のようなものだとしたら、本文を執筆しているときは旅行そのもの。楽しまないと。

・旅先で、事前の計画になかった面白いものに出逢ったなら行くべきでしょう。

・初稿はぜんぶクソ(ヘミングウェイの言葉)。

・初稿はまだ作品じゃない。推敲して、脱稿しているうちは、書いている途中に過ぎない。

・とにかく書いてごらん。書いてダメなら直せばいい。書かないうちは他人からアドバイスをもらうことすらできない。

・書く前のプロットなんて、初稿を書きやすくするためのものでいい。プロット段階で完璧にする必要なんてない。

・とはいえ、面白くないプロットから、面白い物語が生まれる可能性は低い。作者の描写力次第だが。

・プロと同じ量の練習をこなす必要はない。やり方を盗んで、自分に合わせて使うだけ。

・つまらない作品をたくさん書けばいい。必ず肥やしになる。

・悩んでもいいが、手を止めてはいけない。書きつづけるべき。

・たとえ手が止まっていたとしても、物語のことを考え続けているなら、それは執筆の一部。向き合っていれば必ず壁は破れる。考えることすら止めてしまったら、もう投げ出している。

・大丈夫。あなたが、駄作を書いても、誰も死にやしない。

・コンクールなどに全く引っ掛からなかったとしてもマイナスはない。むしろ応募しないよりは、書き上げて応募したのだからプラスしかない。

・他人から讃美されようとも、自分自身が満足していなければ駄作。

・「お前のために書いてない」腹立つ感想を言われたら、そう思えばいい。

・物語を書くって、そりゃ、簡単なことではないですよ。ゼロから生み出すんですから。書いてるときの99%は大変なことばかり。だけど、物語を書くことでしから味わえない感動っていうのがあって、それが1%でも残っているうちはやめられない。自分にしか書けないものを書くということは、自分の人生を生きていること、そのもの。

緋片イルカ 2023.3.10

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