映画『ひゃくえむ。』(視聴メモ)

感想

「好き」3 「作品」3 「脚本」2

映画館の上映時間がちょうど良かったのと、陸上競技が好きで気になってはいたので鑑賞。寝不足の体調だったがアニメなら眠くならないだろうと思っていたが、きついところが何度もあった。演出がチープ。ドラマもテーマも掘り下げがなく、人物が突っ立った状態での「哲学っぽい」長ゼリフを聞かされる。作り手の代弁セリフのようで、キャラにマッチしているというでもなく、唐突感もある。深くもない、どこかで聞いたことあるような主張の言い換えのよう。おそらく原作由来だと思うが、漫画の文字情報であれば「読める」かもしれないが映像作品の演出としては初心者レベルの演出、脚本処理。走るシーンは、スラムダンクみたいなことをやりたかったのかもしれないが、走るという動作の繰り返しは単調。最初のうちは良いがだんだん飽きてくる。スローモーションも表情の劇画チックな演出も、変化の一緒に過ぎず効果的に働いていない。音楽だけは良いが肝心なクライマックスではリアルを意識してBGMなしにするのはミスディレクション。全体の統一感がとれていない。レース前は煽っておいてレース結果を伏せるところが何度かあったが、これも原作由来だとしても、スマートでもない。キャラに乗れてないので、どっちが勝ってもいいやという気分すらしてしまう。おそらくキャプチャーのような実際の選手などのフォームを取り込んでいるが、技術に溺れてしまっていて、せっかくのリアル感を活かしきれてもいない。いろいろ書いたが、恨みがあるわけではない。競技場など思いだせた感じとか、エンドロールで朝原選手の名前を見つけてテンション上がるぐらいには好意的なのだが、客観的に映像作品としてレベルは低いと感じる。

※物語論的な補足
例えば、ラストの勝負の結果が気にならない、どっちでもいいと感じるということは、その勝負に観客が興味がないということ。キャラクターに共感できていないだけでなく、構成上にも問題があるともいえる。通常、アクト2はテーマを掘り下げるパートにあたり、主人公が勝つことはその作品が伝えようとするテーマを肯定することに繋がる。主人公はテーマを背負っていなければならないとも言えるし、テーマを背負っている人物が主人公になる(たとえ作者が違った意識で書いていても、観客はそう感じてしまう)。キャラクターへの共感という部分は、人間的な魅力だけでも成立することはあり(例えば、俳優の見た目が良いとか、アニメだと声優が好きとか)、構成上の展開が甘くても、ファンには許容されてしまうことは多々あるが、主人公がテーマを背負ったとき、ファンでない人をファンにしてしまう力を持つことがある。とくに今作のようなキャラの魅力よりも、テーマを中心に置いているような作品であれば、構成をしっかりしなくてはいけなかった。仮に「勝負の結果が大事ではない」という結論を提示したいのであれば、そのことがアクト2で問われていなければ、とってつけたような結論で、観客への納得感は生まれない。主人公がそのテーマを作品を通して、背負ってるとは言えない。最後に、まさに「とってつけた」だけとなる。

イルカ 2025.11.19

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