2014
●2014:言葉のリズムがとてもよい作品です。ぜひ声に出して読んでみてください。内容は祖父母の家での一コマ。ばぁばのつくった「ふんわり香る」すいーつは何だったんでしょうか。想像が膨らみます。ひらがなが多めの前半から、文語体で全体をびしっと引き締める変化も面白いなと思いました。57文字しかないので、100文字小説という観点からいえば、もう一行つかって、もっと膨らませられたのに、もったいないなとも感じました。同じ作者さんの作品がCブロックの2024にもあって、実はこちらのがとても好きです。Cブロックでは投票してませんが、同じ作者だからといった意識は別にありません。作者名を見てから作品を読むのではなくて、作品を見てから作者名を見ているので、特徴的な作品の人はお名前も印象に残ります。
2019
●2019:「この公園に世話になった」という過去を振り返るような言葉から始まり、大親友の正二が施設に入るほどの長い年月。最後の一行で、俺がブランコだったとわかります。人がいない公園というのは哀愁が漂います。誰もいない公園で、キィキィと寂しそうに揺れているブランコが浮かびました。すこし残念なのは「晴れも日も雨の日も、老若男女いろんな出会いがあった」という一文が、時間の変化を表現するには説明的で、情緒が途切れてしまうところです。もっと気持ちが「揺れる」文章で繋いでいたら「正二」と逢えない寂しさなんかも出せたのではないでしょうか。言葉の選び方にもブレが感じられ「公園に世話になった」「卒業する」といった言葉が、ブランコの気持ちを表すのにベストなのかは、少し疑問でした。とはいえ、雰囲気がとても好きな作品だったので一票入れてしまいました。小手先の巧さよりも、情緒のある作品はそれだけで作品として価値が高いと思います。