イルカ感想・Cブロック

Cブロック作品

2025

2025::季節の移り変わりを、駅伝になぞらえた面白い作品です。一行目からアナウンサーの実況のような臨場感があって、駅伝の映像が浮かんできます。しかし「吹雪を耐え~懸命の力走」が文語的で、リズムが崩れています。次の「あ、やってきました」で、ランナー(春)の姿が見えたとするなら「懸命の力走」はどこから見ているのでしょうか? こういった視点の統一がないため、冒頭からの実況の勢いが途切れてしまっています。かぎかっこを使って、全編セリフにしてみたら、ちがった言葉選びになったのではないでしょうか。「今から春へと~」からは実況感が戻って、春を迎える悦びのような勢いのままラストにいくのは、とても爽やかな気分になります。

2029

2029:「ん? (理解して)ああ……こわっ」というのが率直な感想でした。冒頭の「一生消せなくなります」という怖い忠告から「なんだろう?」という疑問。その答えを、しっかりオチまで引っ張っています。「もしかして、ギャグオチがくるのかな?」という予想もよぎりますが「網膜タトゥー」。「網膜タトゥー? なんじゃ、そりゃ?」実際に、白眼にタトゥーを入れて色を変えたり、失明してしまう人がいるそうですが、技術が進めば網膜にタトゥーを入れることもできるかもしれません。好きな人の名前を体にタトゥーで入れるように、網膜に入れる人もでてくるでしょう。「でも、よく考えたら狂気的だよな……いや、これが愛なのか?」。「私」がどういう動機でそれを入れたのかは語られていないので想像に委ねられますが、最後の「流行の最先端」という言葉が、その効果を弱めてしまっている点だけが少し気になりました(流行だから入れているという平凡なキャラが連想されてしまう)。短い中にショートショートらしい怖さのある面白い作品だと思いました。

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