2081
●2081:「新入生」というと、つい学校に目がいきがちですが、用品店に目を向けたところが面白いと思いました。スポーツショップにも読めますが、僕は学校のそばにある用品店として読みました。今でも、学校指定の上履きや体操着を扱ってるような、昔からある用品店を見かけます。みなさんも一度や二度は忘れものや無くしものをして、お世話になった思い出があるのではないでしょうか。子ども達を優しく見守りながらも、春には売上げが伸びることに、ひっそりとほくそ笑んでいる店主のキャラクターも人間味があります。「小説」としては」、ストーリーの説明に陥らず、もっと店主の顔が見えてくると、より人間味を感じられたと思います。
2084
●2084:「へっくしょおぉぉぉい!」という一言だけで投票に決めました。「ハクション」や「へくしょん」ではなく「へっくしょおぉぉぉい!」です。「優しい母」が「真剣に怒」るほどのくしゃみを想像すると笑ってしまいます。擬音語や擬態語は幼稚に見られがちですが、実はとても効果的な技法です。使い古された「ハクション」という言い方では効果が弱いだけで、擬音語自体がいけないわけではないのです(一部のラノベのような多様も禁物ですが)。この作品は、お笑いでいえば「一発芸」のようなものかもしれませんが、それも一つの個性的な文章といえると思います。この調子が全編に渡ってつづけば、文体にもなっていくでしょう。ただし、地の文は説明的なので、描写していただきたかったところです。たとえば、どんな母だったのでしょうか。大阪のおかんのような母か、上品なマダムなのか、怒り方も、意外性も変わります。「優しい母」だけで片づけずに、描写することで伝わるものが変わります。