イルカ感想・Kブロック

Kブロック作品

2105

2105:ブロックによって、とても2作品を選ぶのがむずかしいことがあります。このKブロックもそうでした。いろんなジャンルの作品がエントリーしていたからだと思います。ジャンルによって表現や構成の良し悪しがまるで変わってしまううので、基準次第で「いいもの」が変わってしまうのです。そんな中、このブロックでは「始まりの予感」という基準で選んでみました。100文字小説に限らず、物語は、必ずしもオチをつける必要はありません。読者にすべて説明しなくてもよいのです。説明されていないことで、想像力が働いたり、つづきが読みたくなったりします。この2105は構成用語を使うなら「カタリスト」で終わっている作品です(※用語などについてはこちらの記事などをご覧下さい)。「ごった返す飛行場の待合室」で「三歳の息子」にキスをしてきた女の子。待合室の「うんざりぎみ」の空気に、新しい風が吹きこみました。「始まりの予感」を感じますが、この後、何が起こっていくのかはわかりません。それがこの作品の弱点でもあります。もしかしたら作者が、せっかくの「始まりの予感」をオチのように書いてしまっているのかもしれません。このキスの後、どういうことが起きていくのかまでを想像していれば、最後にもう一行、言葉を付け足していたのではないでしょうか(前半には明らかに削れる箇所があるので、文字数が足りないとは言えません)。つまり「始まりの予感」はあるけど、ストーリーの進む方向が示されていないのです。方向が定まっていれば、読者の想像力がそちらに働いて、もっと強く惹きつけられた作品になったと思います。

2106

2106:こちらの作品は、上で述べた「始まりの予感」の基準でいえば「すでに始まっている」状態です。作中にある通り「奴ら」はすでに「彼に関わるものはすべて消滅させ」ている。けれど、私の手には「第二ボタン」がある。私は彼の記憶を蘇らせるため、霊能力者のところへ向かっているのでしょう。ストーリーに動きがあるので、私が歩いているか、電車に乗っているか、移動中なのが伝わってきます。文中にはないけれど、そんな風に感じさせるのです。サスペンス映画でいえば、開始から10分以上過ぎているシーンだと思います。「第二ボタン」だけが残っていたという設定も、とても面白いです。その反面、「霊能力者」といった設定は、やや陳腐で「第二ボタン」をオチにするために安易な設定をしてしまっている印象も受けます。とはいえ、この先、どんな物語になっていくのかは、つづきを読んでみなければわかりません。つづきを読んでみたくなる、100文字に収まりきらない勢いがあることは確かです(ちなみに構成用語でいえば、この作品は「カタリスト」を過ぎたあたりといえます。だから勢いがあるのです)。

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