Nブロック
2131
●2131:40年前は花見は出かけるから楽しいと言っていた妻は、今は寝たきりで、窓からの花見を楽しんでいる。時間によるドラマチックな変化に焦点がおかれた素敵な物語です。すこし残念なのは、不動産屋のセリフや「妻は楽しみにしている」など、説明的で、空気感があまり伝わってこないところです。この物語では、妻の変化こそがドラマなので、冒頭はやはり妻のセリフで入ってほしいし、その妻がいま、どんな表情をしているのか、具体的に描写をしてほしかったと思います。そうすることで40年という時を経て、変わってしまったものと、それでも変わらないものが、より浮かび上がってきたのではないでしょうか。素敵な物語だと思います。
2137
●2137:深夜TVで流れていそうな電車の映像を思わせます。淡々としたナレーションのような文章がつづいているので、ひとつ全体の「ヘソ」となるような独特な表現があると、引き締まったと思います。とはいえ、コートの老婦人から、若いカップルで、季節の巡りを表現する視点は見事だと思いました。「春」などと一言も言わずに留めているところも好感がもてました。