映画『シン・ゴジラ』(三幕構成分析#137)

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【ビートシート】

「好き」4 「作品」4 「脚本」3

一個人の感想

MPでのゴジラの描写はものすごく魅力的だと思った。だが肝心のアクト3では物足りない。予算不足か? ビートしてはツイストが足りていない。軍事・政治・科学の専門的な用語を早口でまくし立てて、一般の観客を寄せ付けないながら、起こっていることは理解できる。「よくわからない」という人もいるかもしれない。子供とか。子供はこの作品のターゲットに入っていない。「むかし子供だったオヤジたち」に向けられている。編集のカットが早くテンポはよいが、ストーリーとしては設定や説明セリフをまくし立てているだけで葛藤がない。PP1で「対策本部が設置される」がアークがない。演出的なMPになっているだけ。ゴジラの対策への「バトル」にミステリーなどが働いてるわけでなく段取りくさい。一般的なドラマを徹底的に排しているところは、この手の演出が好きな人には魅力的かもしれないが、度を超している感も否めない。不自然なショットも多く、それが多すぎるがために個性にすら見えなくもないが、わずかにある会話シーンなど、しっとりしたシーンでは途端にチープさが浮き立つ。キャラクター造型もアニメ的で、女性キャラのぎこちなさは監督らしさか。「ゴジラは3.11の風刺」と仰っていた方がいて、なるほどと思った。災害対策に対する政治家達の態度には、そういった側面が見えるが、それ自体がストーリーとして組み込まれてテーマにまで昇華できているかというと怪しい。説明セリフに徹しているので、観客側で受け取ることはできるが、ただ3.11的な描写をたくさん入れているだけで、強いメッセージは伝わってはこない(この点は『君の名は』と似ている)。政治家やアメリカとの関係もクリシェ的。そもそも、ゴジラを使って、この風刺をやることに意味があるのか?という企画意図にも疑問が残る。「市民がいないこと気になる」と仰っていた意見は全く同感。とってつけたようなニュース映像やネットの反応もクリシェ(ニコニコ的な流れる文字)。避難所の様子もチラッと映るが、見せているだけでの説明的なショット。感情移入できるわけでもなく、観客としてはゴジラを見てもヒヤヒヤやドキドキもしない。ゴジラが帰ったり、止まったりのタイミングも段取り的で、緊迫感はなく、恐ろしいものと対峙している緊張感にも欠ける。説明オンパレードにやや疲弊しながらも、テンポだけは早いので何とか耐えられる(それでも2回休憩を入れた)。面白味もあるが「一部の映像すごかった」以上の感情が動かされなかった。用語捲し立てが、個性で演出方針だとしても、脚本として上質に意味を込めた処理ができているとは思えない。エヴァのBGM使っちゃってるところは演出方針として苦笑

イルカ 2023.4.30

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