最高の映画を書くためにあなたが解決しなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術3
【20年前の内容だけど古びていない】
著者のシド・フィールドはこちらでも紹介した三幕構成の祖のような人。
「脚本術3」と翻訳のタイトルがついていますが、原題はThe Screenwriter’s Problem Solver: How to Recognize, Identify, and Define Screenwriting Problems (English Edition)。けしてシリーズものではありません。この本がアメリカで出版されたのは1998年。20年前だけど、内容はまったく古びていません。例として使われている映画作品は古いものが多いけど、今でも名作といわれるものばかりで、それらの作品が古びない理由も、脚本がよく出来ているからと言えるかもしれません。(※とりあげられてる作品は記事の最後にご紹介します↓作品リストへ移動)
【「3」から読むのはオススメしない】
今回の「シド・フィールドの脚本術3」はProblem Solverの原題通り、脚本上の問題点を見つけて、解決をすることに着眼した内容です。
”皆さんは書くことは書き直すことだ”という古いことわざを覚えているか。私がそれを伝えると、世界中の作家はパニックに陥る。「書き直さなくてはいけないのか?」答えはイエス、イエス、イエスだ。申し訳ないが。
この言葉通り、物語をブラッシュアップしていくための本です。
三幕構成の基本的な部分は前提となっているので、基礎知識なくこの本を読むのは少々きびしいかと思います。第二章では三幕構成の説明もされていますが、
例えば……
プロットポイントとは、アクションによって”フック”となって、それを別の方向へと転じさせる事件、エピソード、または出来事で、この場合は第一幕から第二幕へ、そして第二幕から第三幕へと転じさせるポイントのことだ。
予備知識なく、これだけの文章でプロットポイントの意義を理解はできないと思います。「プロットポイントってなんだ??」というレベルの方は、どうぞ当サイトの初心者Q&Aシリーズか、こちらにあるような入門書を読んでから、この本に進まれると良いと思います。
【中級者には示唆に富んだ内容】
「三幕構成やビートについてはわかっている」「三幕に基づいて作品を作っているけど、いまいち面白くならない」といった方には、この本がたくさんのヒントをくれると思います。
問題点があるのはプロット(筋立て)、キャラクター(登場人物)、構成の三つだけだ。これら三つの中にだけ、問題は存在する。(中略)問題が何であれ、すべてがプロット、キャラクター、あるいは構成に起因する。
この考えに基づき本書は大きく4つのパートにわかれます。
「共通の問題点」では3つのパートにまたがる問題点が提示されます。たとえば第5章で語られる「説明台詞」はキャラクター造詣が甘いために説明的になっている場合もあれば、セリフではなく「映像で見せる」という脚本の基本がわかっていないために、説明的になっている場合もあります。
「プロットの問題点」のパートでは盛り込みすぎ、テンポが早すぎる、遅すぎるといったよくある問題から、サブプロットの入れ方やトランジション(シーンのつなぎ)といった高度な部分もに触れられています。
「キャラクターの問題点」で注目したいのは、素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2でも語られていた「Circle of Being」(※「存在の軌跡」と訳されてる)について掘り下げられていることです(僕はキャラクターコアやスキーマと呼んでいますが、一言でいえばキャラクターの本質です)。他にも魅力に欠ける主人公の「見せかけのアクティブ」とか、回想の使い方も興味深いです。
「構成の問題点」では設定やプロップのセットアップとペイオフ(フリとウケ)や、エンディングと物語の結末(解決)の違いなどが書かれています。
その「問題」に出合ったことのない書き手には「?」なこともあるかもしれませんが、何本か作品を書いた経験がある人なら「わかるわかる」となると思います。
そういう意味では、読む人を選ぶ内容ですが、自分の物語に磨きをかけたい人にはオススメできる一冊です。
【良い例として取り上げられてる映画10作】
以下にあげる映画は、この本の中で何度も引用されてる作品です。「このシーンでは……」といったかんじに具体的に引用されているので、未見の人、忘れている人は確認することをオススメいたします(※リンク先のAmazonで200円で即レンタルできます)。これらが「好きな映画」に入ってる人には、脚本上どこが優れているかという新しい魅力を発見できるかもしれません。
●Prime会員だと無料
●おまけ
シド・フィールドいわく
息をのむような、おそらく私が今まで見た中で最高の結末だ。
緋片イルカ 2019/06/26
三幕構成関連書籍→ストーリー機能・分類・関連書籍まとめ
三幕分析に基づく「イルカとウマの読書会」も定期的に開催しています。詳細はこちらから。ご興味ある方のご参加お待ちしております。
「一度でも 我に頭を 下げさせし 人みな死ねと いのりてしこと」(石川啄木)
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記事の話題とはズレますが・・・