書籍『感情を引き出す小説の技巧 読者と登場人物を結びつける執筆術』(読書メモ)

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感想:
キャラクターの感情や作者の思いより、読者の感情を考えるべきという視点は、物語論で忘れられがちなので重要。示唆的な言葉はたくさんあるが、この本の内容がその答えにはなっていなく、抽象論とチェックリストをいったりきたりで具体的な技術を示し切れていない。

以下の引用箇所は、キャラクターアークがわかっていない人の作品を読むといつも感じるので共感した。

内なる旅が短かったり、単純すぎたり、そもそも描かれていないと感じる原稿が多いのはなぜでしょうか。よく見られるのは、アークが旅というより、ジャンプになっているものです。このような原稿では、最後に起こる出来事によって、ただひとつの変化や救済、理解が成り立っています。これでは、尽きることのない探究心や終わりのない闘いというよりも、付け足しのように感じられてしまいます。(p.115)

第6章「読者の心の旅」はヒッチコックのコードという考えとも繋がるような視点で興味はあるが、挙げられているものが「許し、犠牲、裏切り、道徳上のジレンマ、死」だけでありがちで数も少ない。コードの研究はもっと進めたいと思うが、そこを掘り下げているような書籍にはまだ出逢えていない。

緋片イルカ 2023.2.2

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