Oブロック
2144
●2144:「僕」は小児科医でしょうか。「暖かい血潮をゴクリと飲ませてもらう」という一文がすこし紛らわしくて、そこだけとると、蚊か注射器の擬人化のようにも読めますが、それ以外を読むと、やはり「僕」は医者なのかなと感じます。蚊はともかく、医者だろうと注射器だろうと、辛い病気と闘う子供に対する温かい視線に貫かれていて、その優しい語り口がとても魅力的な作品だと思いました。最後の一文も、ひねりなどしないシンプルゆえの強いメッセージがとても印象に残ります。内容の好みに個人差が出る作品だと思いますが、僕は好きです。
2152
●2152:うつむいて歩く視界に入ってくる、スニーカーの先、アスファルト、影、そして桜の花びら。映像化するならまちがいなPOVでしょう。このままではいけない、「思い出さなきゃいけない」と変わろうとしているが、頭上にある桜を見上げられない気持ちに、生きる苦しさと、生きようとする強さを感じて、とても共感できます。この人(男性か女性かもわかりません)が、見上げたときに、どんな桜の記憶を思い出すのでしょうか。上の2144の作品同様、一つの感情にしっかりと貫かれた作品には、小手先のひねりなどいらないし、描写や言葉づかいのひっっかりなどがあっても、細かい揚げ足をとる必要はないと思います。この作品も、僕はとても好きです。