映画『ミニオンズ』(三幕構成分析#160)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。

【ログライン】

ケビンとボブとスチュアートは、仲間のために最凶のボス探しの旅に出て、ついに求めていたボスに巡り合う。

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「ミニオンの誕生」ミニオンが誕生し、仲間を増やしていく。単細胞生物のような姿から分裂していく。彼らの表情ははっきりしていて、感情豊かで可愛いキャラクター性、生殖能力の強さ(分裂)、長く生きていく生物であることを提示。これはミニオンの誕生から目的を達成するまでの歴史譚であるともいえる。

CC「主人公のセットアップ」:「ミニオンの目的」ミニオンという生物の詳細を紹介。目的「最凶のボスに仕えること」生きがい「ボスを喜ばせること」大好物「バナナ」彼らの性質であるおっちょこちょいさが、彼らの目的をいかに困難にしているかの説明。

「ジャンルのセットアップ」)仲間の安住の地探し、ボス探し、ミニオンの歴史譚

Catalyst「カタリスト」:「ボス探しは簡単だがすぐいなくなる」彼らの目的は、ボスに仕えることだが、彼らのおっちょこちょいな性格がボスにとっての災いとなってしまうため、ボスがすぐにいなくなってしまう。彼らの目的とその継続の困難を提示。またそれが、彼らのキャラクターによるものであり、困難を克服することの難しさも同時に提示している。
Debate「ディベート」:「歴史を越えるボス探しの旅」エジプト、中世と歴史を超えた彼らのボス探しの旅が描かれる。しかし、どれも彼らの気質で失敗に終わる。ボス探しの失敗続きに絶望するが、安息の地も見つける。目的の困難と努力の報酬。

Death「デス」:「仕えるボスがおらず鬱状態に」彼らは諦めず前進を続けた結果安息の地を見つけるも、ボスに仕えるという「生きる目的」を失い鬱状態になっていく。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「ケビンがボス探しを宣言する」ケビンは一人立ち上がり、安息の地である洞窟を出て帰らないと宣言する。最凶最悪のボスを見つけるまでは。ここで主役が明確に設定される。スチュアート、ボブが仲間になり、3人は旅立つ。仲間に「希望」を灯して。ケビンは誇り高きリーダー、スチュアートはマイペース、ボブは頑張り屋。主役とストーリーの目的の設定と、3人のキャラクター説明がされる7分地点がPP1となる。かなり早いポイントではあるが、子供向けであることを考えるとわかりやすくよい設定点である。

Battle「バトル」:「ビラコン」3人はNYで服を着替え(DRESS)悪党の祭典ビラコンに行くため、銀行強盗一家の車をヒッチハイクしオーランドへ。そこで目玉の悪党「スカーレット・オーバーキル」の手下になるため、スカーレットのルビー争奪戦に挑む。ボブが偶然にもルビーをゲットし、スカーレットの手下になったミニオンズはスカーレットと共にイングランドへ向かう。バトルに勝利した彼らは褒美をもらう。

Pinch1「ピンチ1」:「イギリス女王の王冠を盗みに行く」イギリス女王になりたいスカーレットに脅され、3人はロンドン塔に王冠を盗みに行くことになる。スカーレットの夫ハーブに発明品をもらい、受付や衛兵などの困難を発明品も使いつつ乗り越えてロンドン塔に忍び込む3人。しかし、最後の老人衛兵に阻まれ、ミッションは失敗してしまう。王冠を被り町を馬車で回る女王を追いかけるうちに女王誘拐犯にされてしまう3人。

MP「ミッドポイント」:「ボブがアーサー王の剣を抜き王になる」警察に追われて逃避行を繰り返す中で、ボブは伝説のアーサー王の剣を石から引き抜き、新たなイギリス王になる。ボスを探していたミニオンたち自身が、新たな王(ボス)となる点がMPとなる。

Fall start「フォール」:「怒ったスカーレットが乗り込んでくる」戴冠式を終えたボブ。3人は宮殿で優雅に暮らすが、怒ったスカーレットが乗り込んでくる。ボブは王冠を渡そうとするが法律で渡せないと執事に言われ、法律を変えてしまう。これにより、スカーレットが王座に着くことに。

Pinch2「ピンチ2」:「スカーレットに裏切られ地下牢に」スカーレットが玉座に着くことが決まったものの、3人を許せないスカーレットは地下牢に閉じ込め死ぬまで出さないという。3人はブラーブ(に化けたハーブ)によって拷問にかけられる。しかし、拷問は3人には効かない。ピンチシーンでありつつも、キャラクターの特質と設定、性格によりコメディカルなシーンに仕立て上げられているので子供も安心して見られる演出。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「戴冠式のスカーレットにシャンデリアを落とす」地下牢からの脱出口をケビンが発見。3人は脱出し、戴冠式を行なっているスカーレットの元へ。偽物が王になるのを止めたい3人だが、正攻法では入れないため、壁を登り上から入っていく。しかし、蜂に追われるなどのトラブルが重なり、シャンデリアを戴冠直前のスカーレットの上に落としてしまう。結果としてスカーレットの戴冠を止めることはできたが、新たな危機の始まりとなる。偽物が王となることを阻止するこの点がPP2となる。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「処刑のため追われる」戴冠できなかったスカーレットは、ミニオンたちの処刑タイムを言い渡す。追われるミニオンたち。ケビンはバーに逃げ込み、そこで元女王のエリザベスと出会う。そしてテレビで、ボブとスチュアートが捕まったのを見て、城に戻ろうとする。夜明けまでに戻らないと、二人は処刑されてしまう。タイムリミットの設定。

BBビッグバトル:「ケビンが巨大化し、爆弾を撒かれた二人を救出する」城に到着したケビンは追い詰められて焦り、押してはいけないボタンを押してしまう。その光にあたった、ケビンは巨大化する。そのまま爆弾を撒かれた二人を救出するケビン。しかし、スカーレットに爆撃される。一方で、スカーレットが王だと思ってやってきたミニオンたちはスカーレットの名を叫びながら街を行進する。本作はBBにおける緩急の差の付け方がうまくツイストが多い。緩急の差はキャラクター性によるものであり、ツイストはボスのしつこさからきているのでやはりキャラクター性によるものだろう。

image2「ファイナルイメージ」:「仲間のために犠牲になったケビンは生還し女王に讃えられる」スカーレットの最終兵器から仲間を守ろうと、共に空を飛んだケビンだったが、無事に地上に降りてきて仲間たちの拍手喝采を得る。そして、3人は王家の馬車から降りて、女王に讃えられる。ボスを探していた3人は、王に讃えられ、それぞれギフトをもらい、その中でケビンはナイトの称号をもらう。仲間のために勇気を出した3人が、目的は果たせずとも個を讃えられるという展開。

エピローグ:式典の中でまたしても女王の王冠を盗んだスカーレット。しかし、彼女たちを氷で固めて王冠を奪って去っていく少年が現れる。それこそが、グルーだった。ミニオンたちは旅の果てで、ついに最凶のボスに巡り合ったのだ。

【感想】

「好き」5点「作品」4点「脚本」3点
キャラクタームービーであり、ミニオンの弱点も含めた可愛らしさをとにかく描き切ることに成功していると思う。ストーリーの目的や困難もわかりやすく描かれ、PP1の設定も早い段階であり、視聴者を飽きさせない。

ミニオンは言葉も独特で話している内容は理解できないにも関わらず、豊かな表情とドジな行動、仲間愛に溢れた気質や勇気は非常に魅力的で、まさしく子供向けとも言えるキャラクターである。対する悪役のスカーレットは、自分勝手でわがまま、とにかくしつこく諦めが悪い。2者のキャラクター性の対比が、そのままストーリーに大きく反映され、BBにおけるツイスト部分はスカーレットの諦めの悪さのみで成り立っているともいえる。

深く考察するようなストーリー性はないようにも思えるが、あえていうならばテーマは「諦めなければ夢は叶う」となるのだろうか。ストーリーの本筋から少しだけはみ出るような、小技が可愛いがこれはイルミネーションの得意技とも感じるし、いいと思うか蛇足と感じるかは人にもよるのかもしれない。しかし、本作はキャラクターのみでもマネタイズできるし、エンタメ作品としても大きく成功していると感じる。老若男女にただ楽しいと思わせられる力があるこの作品が、個人的には好きである。

(月三、2023/7/1)

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